PMIの現場から ~「日本型PMI」とは?~
⽬次
- 1. PMIの概念を変える~PMIを正しく定義する~
- 2. 日本型PMI~実践的な方法と事例~
- 2-1. 著者
「PMIで実施すべきことは何ですか?」と聞かれて、どんなことを想像しますか? 「DAY1(統合初日)までに100日プランを考えて、システム統合や拠点の統廃合、組織再編も準備して、テーマごとに分科会を立ち上げて、統合推進委員会で全体スケジュールの管理をしなくては・・・あと制度の統合も忘れないように・・・」 ―このように、実施事項を並べて考える方が多いのでないでしょうか。 世に出ているPMI本にも、概ねこのようなことが書いてあります。 しかし、実際に当社のPMI支援室がお手伝いしている中小企業同士のM&A後の現場には、上述のような場面はほとんどありません。 中小企業のPMIでは分科会もつくりませんし、統合委員会も設置しません。 「PMIとは何か?」と聞かれて頭で思い描くイメージと、中小企業のPMIで実際に取り組む実態には、少しギャップがあります。なぜこのようなギャップが生まれるのでしょうか。
PMIの概念を変える~PMIを正しく定義する~
PMIとは「Post Merger Integration」の略語で、直訳すると「合併後の統合」という意味です。当然外来語です。 PMIという単語が日本に入ってきた2007年頃は、M&Aのことを「企業の吸収合併」という言い方をしたり、「シナジー効果」という単語がにわかに脚光を浴びたりした時期でした。 「M&Aは大企業がするもので、未知の世界のもの」というのが、当時、日本社会のM&Aに対する認識だったと思います。 その文脈の中で「M&Aが終わった後は何かやらないといけないらしいぞ」と理解されたのが「PMI」という単語です。「買い手が進める統合作業」という意味合いやニュアンスで使われ始め、「M&A後にシナジーを創出するための取り組み」を総称するようになって、現在に至っています。
両社が力を合わせるためには第三者のサポートがポイント
しかし、日本のM&A、特に中小企業の場合は合併も統合もしないケースがほとんどです。そこに合併とか統合といった概念が入ってくると、具体的な取り組みイメージが湧かないばかりか、混乱を招くこともあります。 そこで私たちは、「海外ではスタンダードとされているPMIのやり方(買い手が進める合併後の統合作業)ではなく、従来とは異なった概念でPMIを定義して実施する方が、日本の中小企業にフィットするのではないか」という考えに至りました。 当社のPMI支援室は、PMIを「合併後の統合」ではなく、「資本提携後に売り手企業と買い手企業がともに成長する過程」と定義し、売り手企業、買い手企業の双方をサポートしています。
日本型PMI~実践的な方法と事例~
現在、日本のM&Aの件数は増加しています。事業承継型から業界再編型、成長戦略型へと類型を多様化させながら、中小企業のM&Aは今後さらに増加していくものの思われます。 M&Aが企業成長のための選択肢として身近な時代になり、また、M&Aのゴールに対する認識も「成約から成功へ」と変わってきました。