【物流業界向け】創業30年超の老舗企業の新規上場

業界別M&A
更新日:

⽬次

[表示]

創業から上場までの事業展開

会社を創業なされてから30年余りで上場を果たされましたが、創業当時のお話お伺いできますでしょうか?

本当に軽トラック一台で創業しました。なので、もともとはよくある運送業として1人でやっていました。 人を増やして会社はちょっとずつ大きくなっていたけど、当時は荷主であるお客様との上下関係が明確で、正直しんどかったです。

集金に行くけど満額払ってもらえないとかそんなことばっかりでしたね。なにくそ、と歯を食いしばりながら従業員もおりましたから、がむしゃらにやっていました。

トラックの台数・人の数が売上の根幹を占めるビジネスモデルから、現在のようにトラックを持たない、EC・物流支援サービスに転換したきっかけはなにかあったのでしょうか?

ちょうど1996年から1999年くらいだったと思いますが、楽天のEC事業が広がりましたよね。それが転機でした。
当時、ECや通販事業会社は自社で商品の入出庫管理などの配送センター業務をやっていました。月の売上が1百万円とか2百万円なら個人のマンパワーでなんとかなりますが、月の売上が5百万円を超えてくるとミスも出てくるし、専門性が必要でした。

そんな時代に、楽天アワードに出席する機会がありました。楽天アワードは楽天市場に出店している店舗を表彰するイベントです。そこで、いろいろな出店している会社の社長さんに挨拶をしていると「あ、物流会社さんですか!ぜひうちの物流をやってくださいよ!」という声がたくさんかけられたんです。
そこからが今やっている事業のスタートでしたね。10年でトラックはなくなりました。

当時でいえば本当に新しい事業だったと思いますが、ここまで成功した要因はなんでしょうか?

逃げなかったことが一番ですね。新しいことをやるわけだから当然ミスもあります。でも、ごまかしたりすることはせず、誠心誠意、どうしたらこのミスがなくなるのか?どうしたら効率よくやれるのか?をお客様と徹底的に議論しました。その時の経験が今の当社のシステムの礎を築きました。

従業員の働き甲斐とITシステム

“逃げない”ということ以外に大事にしていることはありましたか?

従業員の働き甲斐だけは絶対に最高の会社にしようと思っていましたね。
厳しいかもしれないけれど、正当な評価っていうのは差をつけることです。「チャンスは均等に与え、成果に差をつける」これをしないと従業員はついてきてくれません。

たしかに御社は部長はじめ、若い管理職の方が多くいらっしゃいますね。御社のサービスの根幹を担うのは先ほどお伺いさせて頂いた“働き甲斐をもって働く従業員の方々”と同時にITシステムだと思いますが、概要についてお伺いできますか?

在庫管理システムであるトーマスとチェックリストシステムのアニーですね。
詳細についてはぜひホームページをご覧頂ければと思いますが、簡単にいうと「従来型の高価なハンディターミナルではなくスマホを活用し、だれが・どこで・いつ・何をやっているのかがわかるシステム」です。

圧倒的にコストが安いことと、当社実績で40PPM~50PPMの物流クオリティを達成できている質の高さで、日本での導入数No1になる日も近いと思っています。

今後の展望とM&A戦略

今後の展開はどういったことをお考えですか?

自社でうまくいったことをお客様に提供し、マネタイズしていくことを考えています。今後は、先ほどお話したトーマスとアニーのように当社でうまくいったシステムを外販していくことで拡大を考えています。
また、実は当社は3年前からミャンマーからの外国人実習性の受け入れ事業をやっています。これが本当にうまくいっています。

業界は人手不足が問題となっていますが、当社は人手不足とは無縁ですよ。
ミャンマーで教育して、日本に来て当社の仕事をさせたら即戦力。そんな教育ノウハウもしっかり蓄積されてきています。こういったこともビジネスにして広めていきたいです。

自社でうまくいったことをお客様に広めることで事業を大きくしていくっていうのは成功の確率も高そうですね。話は少し変わりますが、貴社はM&A戦略に関してはどういった方針なのでしょうか?

M&Aに関しては親和性と相乗効果を大事にしています。儲かる事業だから買いたい、といったことは全くないですね。
ただ、一緒になりたいという話は頂きますので、そういったことに関して、検討はさせて頂いています。

業績不振や人手不足をM&Aで解決しようという動きが増えてますが、貴社はそういった問題を解決するコンサルティングを行ってますよね。業績があまりうまくいっていない会社の特徴は何かありますか?

結局は社長なんですよね。穴熊の社長はダメですよ。うまくいかないことがあって嘆くだけで行動を変えられないと、今のように全てが高速で動く時代で成長できません。

そういう社長についていく従業員はいませんよね。あと、社長が営業をしないとダメですね。当社でも、実際にお客様のところに行くことはほとんどないですが、営業戦略なんかは私が役員と話をして決めています。そこまでしないと、推進力はつきません。

ありがとうございます。最後になりますが、今後の物流業界はどうなっていくと思いますか?

さっきも申した通り、人手不足は将来的に解消していく可能性が高いと思います。外国人ドライバーも出てくるでしょう。EC事業はこれからもどんどん拡大していきますから、人の問題さえ解決できれば伸びていく業界だと思います。

ただ、システム化・ロボット化なんかはすごいスピードで発展しています。どんどん物流クオリティは上がっていくでしょう。ついていけない会社が増えていくでしょうね。

コロナで暗いニュースばかりですが、こういった将来が楽しみな会社も出てきています。
急激に変わる環境だからこそ、常に新しい情報にアンテナを立てておく必要があるよう感じます。

ー今後も日本M&AセンターではM&Aに限らず、皆様に有益な情報をどんどん発信していければと考えております、楽しみにして頂ければと思いますー

著者

日本M&Aセンター 業種特化事業部コラム制作担当

日本M&Aセンター  業種特化事業部コラム制作担当 

業種特化事業部はIT、建設・設備工事、住宅・不動産、食品、調剤薬局、物流、製造、医療・介護といった各業界に特化し、日々新たな案件に取り組んでいます。各コンサルタントのノウハウや知見を集め、有益な情報発信に努めてまいります。

この記事に関連するタグ

「物流業界」に関連するコラム

2024年8月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

業界別M&A
2024年8月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

物流業界の2024年8月の公表M&A件数は8件8月における公表ベースでのM&A(合併・買収)は8件でした。前年同月の7件と比較して1件の増加となります。@cv_button中堅・中小へ広がる物流業界再編の波大手企業をメインプレーヤーとした物流業界における業界再編の波は、中堅中小企業に着実に広がりを見せている。「創業100年・年商100億円」を掲げる八潮運輸は神奈川県に本社を構え自動車部品輸送に強み

2024年7月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

業界別M&A
2024年7月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

物流業界の2024年7月の公表M&A件数は17件7月における公表ベースでのM&A(合併・買収)は17件でした。前年同月の8件から9件の増加となります。@cv_button2023年1~7月のM&A件数は48件であったのに対し、24年の1月~7月のM&A件数は74件と急激に増加しており、先月に続き大手、中小を問わず運送事業を対象としたM&Aがハイペースで進んでいます。まさに「2024年問題」を背景に

2024年6月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

業界別M&A
2024年6月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

物流業界の2024年6月の公表M&A件数は11件6月における公表ベースでのM&A(合併・買収)は11件であった。前年同月の5件から6件の増加となった。@cv_button2024年に入り、物流業界の再編が大きく進行している。ロジスティード(旧日立物流)やSGホールディングス、セイノーホールディングスなどの大手物流企業が相次いで大型買収を発表し、それに呼応するようにマイナスイメージの強かった「M&A

2024年5月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

業界別M&A
2024年5月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

物流業界の2024年5月の公表M&A件数は10件2024年5月において公表ベースでのM&A(合併・買収・資本参加)は10件であった。2023年5月(8件)と2件の増加になった。@cv_button戦略の中心が「企業買収」へ先月に続きセンコーホールディングスが単月で2件の買収を実施。(2024年1月~5月で5件目)独特の戦略で同業の買収に限らず異業種の譲り受けを加速させている印象だ。今後も既存事業の

2024年4月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

業界別M&A
2024年4月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

物流業界の2024年4月の公表M&A件数は11件2024年4月において公表ベースでのM&A(合併・買収・資本参加)は11件であった。2023年4月(10件)と昨年比では1件の増加になった。2024年問題からみる物流・運送業界M&A4月からトラックドライバーの時間外労働時間上限規制が開始となり、2019年の法改正以降、数年かけて取り組んできた荷主企業との運賃交渉やドライバーの確保、中継拠点の新設など

2024年3月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

業界別M&A
2024年3月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く

物流業界の2024年3月の公表M&A件数は10件2024年3月において公表ベースでのM&A(合併・買収・資本参加)は10件であった。2023年3月(7件)と昨年比では3件の増加になった。物流M&Aトピックを考察3月で大きく印象に残っているのはAZ-COM丸和ホールディングスが、C&FホールディングスにTOB(株式公開買い付け)を実施し子会社化を目指すと発表した事例ではないだろうか。アマゾンジャパン

「物流業界」に関連するM&Aニュース

福岡キャピタルパートナーズ運営ファンド出資のNSトランスポート、九州安芸重機運輸を譲受け

株式会社福岡キャピタルパートナーズ(福岡県福岡市)が運営・管理するナイン・ステーツ・5投資事業有限責任組合が出資する株式会社NSトランスポートは、九州安芸重機運輸株式会社(福岡県福岡市)との間で、九州安芸重機運輸の全株式の譲受に関する株式譲渡契約を締結した。福岡キャピタルパートナーズは、各種ファンドの組成・運営、不動産開発のアレンジ、コンサルティングを行っている。九州安芸重機運輸は、建設機械、建設

NIPPON EXPRESS ホールディングス、ドイツのヘルスケア産業向け物流 Simon Hegele社を買収

NIPPONEXPRESSホールディングス株式会社(9147)は、SHHoldCoGmbH(ドイツ、以下:SimonHegele)の全ての株式を取得することについてSimonHegeleの全株主と合意し、株式譲渡契約を締結することを決定した。NIPPONEXPRESSホールディングスは、NXグループの持株会社。国内外で物流サービスや不動産業を営む同グループ各社の経営管理、およびそれに付帯する業務を

セイノーHD傘下のセイノースーパーエクスプレス、関東エアーカーゴから航空部門事業を承継

セイノーホールディングス株式会社(9076)傘下のセイノースーパーエクスプレス株式会社(東京都江東区)は、東海運株式会社(9380)の連結子会社である関東エアーカーゴ株式会社(埼玉県さいたま市)の航空部門事業を吸収分割により承継する。セイノースーパーエクスプレスは、貨物自動車運送事業、貨物運送取扱事業、港湾運送事業等を行っている。関東エアーカーゴは、一般貨物運送事業を行っている。目的下記①~③を目

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース