企業概要書(IM)の準備
⽬次
- 1. 企業概要書(IM)とは
- 2. 企業概要書(IM)が使用されるタイミング
- 3. 企業概要書(IM)の記載事項
- 3-1. 企業概要(エグゼクティブサマリー)
- 3-2. 事業内容
- 3-3. 組織
- 3-4. 財務状況
- 3-5. 譲渡理由
- 3-6. 許認可・法規制
- 3-7. 資産・設備の状況
- 3-8. 事業計画
- 4. IM(企業概要書)を作成・管理する際のポイント
- 4-1. 読み手がわかりやすい内容になっているか
- 4-2. 正しい内容を掲載しているか
- 4-3. 専門家の協力を得て質を向上させる
- 4-4. 譲受け側には厳格な管理体制が求められる
- 5. 終わりに
- 5-1. 著者
企業概要書(IM)は譲受け企業が譲渡企業を評価し、M&Aの検討を進めるか判断する重要な書類の1つです。本記事では、IM(企業概要書)の概要、記載する内容や作成時の注意点などについて解説します。
企業概要書(IM)とは
企業概要書(IM:Information Memorundom)は譲渡企業の詳細情報が記載された資料を指します。
企業概要書(IM)の作成は譲渡企業を支援するM&A仲介会社やFAなど専門会社が作成し、譲受け企業がその会社とのM&Aの検討を本格的に進めるかどうか意思決定を行います。
譲渡企業側は、自社の魅力を正しく開示、評価してもらうために、間接的に伝達するツールとしてIM(企業概要書)を活用します。
譲受け企業側は、前述の通りIM(企業概要書)の情報をもとに、M&Aを行う相手としてふさわしいか、M&Aを進める判断を行います。
そのため企業概要書は、M&Aにおける初期の検討段階で両社にとって、重要な役割を担います。
企業概要書(IM)が使用されるタイミング
企業概要書は機密情報を多く含むため、通常はNDA(Non-Disclosure Agreement、秘密保持契約)の締結後に提供されます。
譲受けを検討している企業は、対象企業が特定されない範囲で情報がまとめられた「ノンネームシート」を確認します。
このノンネームシートの内容で、対象企業に関心を持った場合、より詳細情報を把握するために秘密保持契約を締結した上で、IM企業概要書を確認します。
企業概要書(IM)による詳細情報を確認した上で、具体的にM&Aの検討をスタートします。
企業概要書(IM)の記載事項
一般的に、企業概要書には数十ページにわたり詳細情報がまとめられています。IM(企業概要書)に記載される項目は以下の通りです。
企業概要(エグゼクティブサマリー)
企業概要は、譲渡企業の魅力をアピールするために最も大切なパートです。
社名や所在地、資本金、株主構成など基本情報のほか、業務フロー、業界を取り巻く環境、M&Aにおける希望条件など、グラフや写真などビジュアルを工夫して記載します。
事業内容
譲渡企業のビジネスモデルについて、主要取引先、仕入れ先などの情報を含め記載します。
例えば、取引をフローチャートで図式化する、あるいは自社製品やサービスを写真付きで説明するなどの工夫が求められます。
また、このパートでは市場シェアや優位性などについても記載する場合があります。
組織
「代表者のプロフィール」「株主・役員一覧」「組織図」や「従業員概要」などを記載します。
ここで定量的な数字だkでなく、創業時の想い、営業力などの情報が買い手に伝わるように工夫します。また業種によっては有資格者や許認可の取得についても記載します。従業員の情報では平均給与や平均年齢についても、譲受け企業が関心を示すポイントになります。
中小企業のM&Aの多くは株式譲渡によって行われるため、株式構成、比率など株式に関する事項は、譲受け企業側の関心が非常に高く、質問が出やすいパートになるため、しっかり記載する必要があります。
財務状況
財務状況はM&Aの判断を下す上で大切なパートです。過去からの財務状況の推移と、現在の状況がわかるよう、3期分の貸借対照表と損益計算書を掲載します。
製造業の場合は、製造原価報告書なども追加する必要があります。また、資産や負債、収益などに急激な変動があった場合は、その理由などを注記しておきます。借入金や社債についても同様です。
譲渡理由
「なぜ、今このタイミングで譲渡を検討したのか」「譲渡後どのようなビジョンを持っているのか」譲受け企業が最も関心を示すパートであるため、詳細な記載が必要です。譲受け企業は、譲渡理由に応じてM&Aの検討を進める判断やスキームを検討するため、詳細な記載が求められます。
許認可・法規制
建設業など、対象事業に特別な許認可や法規制などが存在する場合は、詳細情報を記載します。
譲渡企業が保有する許認可が、譲受けにない場合、新たに取得するなど準備が必要になるため、IM(企業概要書)に記載する要素としては必須になります。
資産・設備の状況
譲渡企業の地理的特徴を把握してもらうために、事業拠点や不動産の地図を用いながら掲載します。
本社に関しては、所在地や面積、所有形態(自己所有か賃貸)などの記載は必須です。また、工場などの製造設備は、内部のレイアウト図なども挿入しておくと会社の魅力が伝わりやすくなります。
土地や工場などの固定資産や機械などの設備がある場合は、所在地、面積、取得価格などの詳細についても記載します。その他、車両やリース資産、非事業用資産などがある場合は、それぞれに分けて記載しましょう。
事業計画
将来に向けた事業計画や現在実行中の計画がある場合も記載します。
特に現在実行中の計画がある場合、譲受け企業が引き継ぐ可能性になるため、計画達成までの進捗率や実現可能性、計画が達成した場合に得られるものなどをできるだけ細かく書いておきましょう。
IM(企業概要書)を作成・管理する際のポイント
最後に企業概要書を作成、確認するにあたってのポイントをご紹介します。
冒頭でご紹介した通り、IM(企業概要書)は、譲渡企業を支援するM&A仲介会社はFAなど専門会社が作成するケースが一般的ですが、当事者である譲渡企業も内容を精査して完成させる必要があります。
読み手がわかりやすい内容になっているか
IM(企業概要書)を読む側の視点で、自社の強みや市場での優位性、将来性をできるだけわかりやすい形で訴求する必要があります。
譲受け企業は必ずしも同業の会社とは限りません。「業界内の専門用語の羅列になっていないか。」「業務フローを第三者が見てもわかりやすい形で記載されているか。」「競合との差別化ポイントや強みが定量的な数字で、具体的に整理されているか。」「シナジー効果を想起しやすい内容になっているか。」など、読み手視点でIM(企業概要書)の内容をチェック、精査する必要があります。
正しい内容を掲載しているか
基本的なことですが、虚偽の情報の掲載はルール違反です。
企業概要書は自社の魅力をアピールする資料ですが、誇張表現や虚偽の情報が入っていないか、細心の注意を払う必要があります。
譲受け企業は企業概要書の情報をもとにM&Aの検討を進めるため、後日事実が判明した場合、破談になる可能性が高まります。
参照した資料自体が事実と異なっていた、など意図せず虚偽の情報が掲載される場合もあるため、特に中小企業の場合は、財務諸表などの数字を公認会計士や税理士など専門家のチェックを受けることをお勧めします。
専門家の協力を得て質を向上させる
当事者の視点のみで作られた資料では、どうしても内容に偏りが生じます。そのため外部の専門家の意見を取り入れ、第三者の視点を通じて、自社の強みや魅力を記載することが大切です。
多くのM&A仲介会社では、IM(企業概要書)を作成するにあたり、譲渡オーナーにインタビューを行います。このインタビューを通じて明らかになった企業の強み、特徴がIM(企業概要書)の質を向上させる可能性もあります。
譲受け側には厳格な管理体制が求められる
企業概要書は譲渡企業の機密情報が集積されたものです。万が一、外部へ情報が流出すれば、譲渡企業の経営の根幹を揺るがしかねません。
そのため、譲受け企業はIM(企業概要書)を閲覧、管理できる人を極力限定し、慎重に管理しなくてはいけません。また、もしM&Aに至らなかった場合は秘密保持契約に従い、適切な形でIMを処分する必要があります。
終わりに
以上企業概要書についてご紹介しました。
質の高いIMを作ることは、M&Aを成功に導くための最重要課題の一つといっても過言ではありません。
譲渡企業の魅力を最大限に引き出し、譲受け企業に正しく伝えられるかどうかは制作するM&A仲介会社など専門会社の腕の見せどころであり、制作担当者の経験値、ノウハウにも大きく左右されます。
そのため経験や実績、ノウハウが豊富な専門会社の協力を得ることがM&A成功実現への一歩となります。
日本M&AセンターではM&Aに関する疑問や不明点など、専任のコンサルタントが承っております。ご相談は無料、秘密厳守で対応します。