M&Aのトップ面談は準備が8割。買い手が押さえておきたいポイント
⽬次
- 1. トップ面談は準備が8割 !
- 2. トップ面談で何を質問する?
- 3. トップ面談に参加するのはトップだけじゃない!?
- 4. 買い手企業が無意識にやってしまいがちなこと
- 5. トップ面談の冒頭に相手の心を掴む
- 6. 売り手と情報量のギャップがあることを認識しておく
- 7. トップ面談は「お見合い」だと思って臨む
- 8. トップ面談に関する動画
- 8-1. プロフィール
本記事では、日本M&Aセンターの経験豊富なコンサルタントが語るトップ面談のポイントを、動画から抜粋してご紹介します。※動画本編は記事の文末からご覧いただけます。
トップ面談は準備が8割 !
壷井: トップ面談というのはM&Aのプロセスの中では、売り手企業さんの企業概要書を見て、 売り手・買い手の経営者同士が初めて顔を合わせる重要な場面 です。
小森さんが考える「トップ面談で重要なポイント」はズバリ何でしょうか。
小森: 結局「 第一印象をどれだけよくできるか 」という話に尽きるかなと思っています。
壷井: 第一印象というと「お見合い」みたいなものですよね。
小森: はい。
壷井: 自分からいろいろ情報を探りにいくというよりも、いかにお相手(売り手オーナー)に好印象を与えられるかが重要ですよね。
小森: 買い手企業さんは不安が先行して、どうしても質問が多くなりがちになるんですけど、 お相手の売り手企業さんからも様子を見られている、という意識 が必要です。
いかにお互い聞きつつ、聞いてもらいつつ、アピールしつつと、バランスをとったやりとりが求められますね。
壷井: トップ面談に入る前は、相当準備が必要だと思うのですが?
小森: そうですね、 準備で8割決まる と思っています。
トップ面談で何を質問する?
買い手企業さんの中には、質問を十分に用意しないで「とりあえず、まず会おうか」と臨もうとする方もいらっしゃるので、我々仲介会社としては、きちんとそのあたりを準備・調整して進める必要があると考えています。
壷井: 何を質問するかって重要じゃないですか。事業の細かい話を聞くのはもちろん重要なんですけど、会社の成り立ちだとか、なぜこの場に来てくれたのか、という話を丁寧に聞いてあげると、お相手からは良い印象に映りますよね。
小森: それは間違いないですね。売り手オーナーの思いとか、なぜ譲渡の決断に至ったのかというのは重要で、単純に「後継者不在」って一言でいっても、会社ごとにいろいろな理由があると思います。
会社を譲渡する決断ってすごく重いので、買い手企業さんに対しては「自分が譲渡する方だったらどう思いますか、どうしますか」という話は、常にしていますね。
壷井: 売り手オーナーさんは不安を持ってトップ面談に来られる方がほとんどです。
なのでトップ面談でのやりとりを通じて「この会社だったら譲りたい、お渡ししたい」と安心して思っていただけたら、そのあとの条件交渉もしやすくないですか?
小森: 第一印象が好感触であれば、その後のプロセスもスムーズに進む 場合が多いですよね。
壷井: 最終的な価格交渉の場面でも、そうした相手への印象、安心感、信頼感は少なからず影響すると個人的には思っています。繰り返しになりますが、最初のトップ面談では「いかに売り手オーナーさんによい印象を与えられるか」が重要ですね。
トップ面談に参加するのはトップだけじゃない!?
壷井: 買い手企業さん側は社長以外にもトップ面談に参加するケースがあるじゃないですか。トップ面談は、どういう顔ぶれで行けばいいですか?
小森: 3人以内 が良いですね。興味ない人は連れて行かない方がいい(笑)。
壷井: よくある「とりあえず連れて行こうか」というのは止めておいた方がいいですよね。
小森: たくさんの人と会わせたいなら、2回、3回にわけて会うことを勧めます。
壷井: 初回面談で買い手企業さんの関係者が4~5人出席すると、圧迫感がすごいですよね。
小森: 買い手側6名:売り手オーナー1名というトップ面談を経験したことありますけど、なかなかインパクトがありました(笑)。ひたすら売り手オーナーが質問をされて答え続けるという・・
壷井: そういうところも、売り手さん側からすると「この会社に譲渡したら、このメンバーに囲まれるのか」という印象につながってしまいますよね。第一印象で「なんかちょっと不安だな、大変そうだな」という印象が残ってしまうと、ディールの最後までそれが引っ張られてしまうので、トップ面談のメンバーの揃え方は重要ですよね。
小森: 結構そこは大事ですね。社長さん同士であれば心配はいらないことが多いんですけど、 周囲の方も参加する場合は、その方々にも面談の重要性をきちんとお話した上で臨みましょう ね、と伝えています。
買い手企業が無意識にやってしまいがちなこと
壷井: トップ面談で買い手企業さんの事務所に見学に行く事もあるじゃないですか。その時、事務所に入ったときにあまり整理整頓されてないとか、従業員さんが挨拶してくれないとか、そういう印象で決まっちゃうこともありますよね。
小森: それはありますね。挨拶は本当に大事だと思います。 会社の印象を決めるのって「挨拶と整理整頓」 といっても過言ではない(笑)。
壷井: 買い手側の社長さんがネクタイをしてこなかったとか、話し方が丁寧ではなかったとか、上から目線で話しているように感じたとか。
買い手側にはそんなつもりは無くても、そういう風に見られてしまうことがあると認識しておくことが重要です。トップ面談は「 お互い信頼関係を構築する、最初の一歩 」ともいえますね。
小森: 特に意図なく買い手企業さんがやってしまうのが「ついで感」を出してしまうこと。
例えば東京の買い手企業さんが福岡の会社さんとトップ面談します、という時に「どうせ福岡行くんだったら他に予定をいれよう」と面談後に予定を入れるんですよね。そうすると、終わりの時間が決まっていて・・
壷井: あぁ、トップ面談あるあるですね・・
小森: 他の予定を入れていただくのはもちろん悪いことではないんですけどね。それを事前にちゃんと相手に伝えておかないと、盛り上がっているところで「そろそろ帰りの時間が、、」と終わってしまうので注意した方がいいですよね。
そういう 細部にわたる確認を含めて事前準備はものすごく大事 なんです。
トップ面談の冒頭に相手の心を掴む
壷井: 小森さん、ちなみにトップ面談の時は手土産とか持参するように買い手の方にお伝えしますか?
小森: 各地の名物を皆さん持って来られるから、個性が出て面白いですよね。メジャーどころから「〇〇県〇〇市の銘菓の〇〇です」というニッチなものが出てきて、傍らで我々は楽しんで見てますけど効果は意外と侮れません。
壷井: 手土産があると、一気に相手からの心証が良くなりますよね。
小森: 「気を配っていただいてるな」というのが売り手オーナーにダイレクトに伝わるので、良いツールだ思います。もちろん初めて会う相手に対しては、ビジネスマナーとして持参するべきかなとは思いますね。
壷井: トップ面談が始まって、自己紹介した時に互いの共通点を見つけるのもポイントですよね。「同郷ですね」「共通の取引企業とお付き合いがありますね」などがあると、「この相手とは一緒になっても上手くやっていけそうだな」っていう感覚が生まれるので、共通点を探すことも大事ですね。
小森: 特に同郷効果は心理的に少しホッとするというか、安心につながります。また、「取引先の〇〇さん」という共通点があると、「あの〇〇さんに信頼されてる人なんだな」とイメージできるので、ググっと距離は近くなりますね。友達の友達効果ではないですけども。
売り手と情報量のギャップがあることを認識しておく
壷井: 前回準備が8割という話をしましたが、買い手側は会社のプレゼン資料を準備すべきなんでしょうか。
小森: プレゼン資料の準備は結構しますね。わざわざ買い手の方に用意してもらうというより、客観的な意見を踏まえた資料として我々仲介会社の方で用意することも多いですね。
結局トップ面談の時って、買い手は企業概要書から売り手企業の細かい企業情報を見た上で面談に臨みますが、売り手側は相手企業について詳しく知らない前提で面談に臨むので情報量のギャップはあります。
ですので、会社案内でも問題はないんですけど、買い手企業をちゃんと紹介する資料で、プラスαの情報が売り手側に伝えられると良いなとは常に思っています。相手に質問を重ねるのではなく、まず自分たちをよく知ってもらう姿勢が大切です。
壷井: トップ面談は、価格交渉の場ではありませんが「M&A後に売り手オーナーがどうしたいのか」という条件面の話はできるんでしょうか。
小森: 基本的に交渉に含まれるような具体的な話は避けた方がいいのですが、「M&Aしたらどうしたいですか?」という売り手の思いは聞いておいた方がいいと思います。
例えば売り手オーナーがM&Aを機に退任したいという場合、「退任までの引継ぎ期間をどれくらい考えているか」など、そういう話は聞いておいたほうがいいです。
壷井: 逆にそこを最初に直接聞いておかないと、後で「仲介会社を通して聞いてるけど本当?」というような話になって、お互いかけ違いが出てくる可能性もありますよね。なので、なるべく本音を初期の段階で聞いてもらって、後から意見の相違が生まれないようにすることが大切です。
小森: 退職金など具体的なお金の話には触れずに、売り手オーナーがどうしたいのかを、会話の中で自然に聞き出せると一番スマートですね。
壷井: そうですね。
トップ面談は「お見合い」だと思って臨む
小森: 企業概要書を読み込んで「M&Aしたい」と言っている会社(買い手)と、譲渡したいという会社(売り手)同士の面談なので、(トップ面談が)上手くいかないことの方が少ないと個人的には思っています。
つまり、上手くいって当たり前。その中で印象をどれだけ高められるかだと思っています。
多くの面談に立ち会ってきた経験上、やっぱり第一印象の影響は、最終的に判断する上でも大きいです。
実際に「相手の社長は信頼できる、間違いない人」だ、と確認できれば交渉が進むことが多いです。
なので今日話しながら感じましたが、印象を高めながら、うっかり不用意な言動をしないように気を付ける、というのが意外とポイントかなとも思いました(笑)。
壷井: そうですね、ディフェンスを徹底するという(笑)。あとは 1回のトップ面談ですべて済ませようとしない 、というのもポイントかなとですよね。
盛りだくさんになって消化不良になるので、面談が2回くらいある前提で、1回目は柔らかい話で、2回目に具体的な話をするというようなストーリーを持っておくのがいいと思います。
壷井: それでは、最後のまとめに入りたいと思います。
小森: やっぱり「お見合いだと思って臨むこと」が一番大事かなと思っています。お見合いだと思えば、相手の方を配慮できます。
準備も怠らないし、手土産は・・あると尚良いですからね(笑)。そして発言に気を付けるということにもつながるかと思います。
壷井: すべては準備によって決まる、ということもよくわかりました。今回はトップ面談についてお届けしました。次回も引き続き楽しみにしてください!
小森: どうもありがとうございました。
トップ面談に関する動画
動画本編はこちらからご覧いただけます。