[M&A事例]Vol.142 互いを尊重し合いながら経営ビジョンを作成。社会的使命を追求し、共に全国展開を目指す
リネンサプライ業のエスオーシーは、「民間救急」事業のアンビュランスを譲受けました。異業種2社がM&Aに至った背景、PMIについて話を伺いました。
譲渡企業情報
※M&A実行当時の情報
2016年9月にM&Aを実行されたウェルフェアー株式会社の西村代表に、M&Aによる譲渡を検討された経緯、仲介業者の選び方、譲渡後のご様子などを伺いました。
当初は買い手候補企業としてM&Aを検討
西村様: ウェルフェアーはもともと医療機器の販売会社として創業しました。バブル期を迎えた頃から、他業種への進出にチャレンジしましたが、結局バブル崩壊とともに損失を抱えてしまいます。本業・関連事業以外に手を出すのは良くないと学び、業績回復期を経て、2003年に満を持して介護業界へ進出しました。
お陰様で順調に出店を続けた結果、関西を中心に14カ所の介護施設を運営、従業員も200名を超えるまでに成長させることができました。ただこのころは、自分が引退するまでのイメージとしては70歳で会長となり、75歳まで働くと思っていましたので、会社を譲渡するなどということには全く考えも及んでいませんでした。
西村様: 2年前、私を担当してくれている日本M&Aセンター浅川さんからの電話を受けたことからはじまりました。自社のためになるのなら、と何社か紹介していただき真剣に買収を検討しましたが、実際にM&Aの実行に至る企業との出会いはありませんでした。
少し時間を置いたある日、「逆に会社を譲渡されることは考えられていませんか」と打診を受けました。息子は社内にいたのですが、後継者としては難しいかなと考えていましたので、試しに具体的に譲渡する場合の進め方を聞かせてほしいと依頼しました。
西村様: 浅川さんからの譲渡打診提案を受け、その場では判断をしなかったものの、後で冷静になって考えました。まず、介護業界の環境の変化が私の背中を後押ししました。介護業界はここ5年~10年くらいの間に一定の規模を確保できなければ生き残れないと言われています。そのためには事業を拡大し続ける必要がありますが、そのため借入の返済が進まないことは大きな悩みでした。加えて慢性的な人手不足のジレンマがあります。つまり規模が小さいと人材の採用が難しく、規模を拡大すると人手が足りなくなってしまうのです。
また、金銭面でのメリットを魅力に感じたのも事実です。譲渡を検討することになってまず、私は顧問税理士に相談して、今会社を売却した場合に得られる対価(株価)と自分が想定する引退時期までに得られる報酬の総額(生涯報酬)を比較してもらいました。すると、税率の問題もあり手取り額ではM&Aで譲渡した場合のほうが多く確保できることが判明しました。ただM&Aは相手があってはじめて成立する話ですから、希望通りの値段がつくのであれば譲渡、つかないのなら事業継続をすればよいと考え、浅川さんに譲渡の方向で仲介業務を依頼することに決めました。
そのほかにも、相続税制の問題もあります。子供が事業承継をする際に、高いハードルとなっていることはすべての経営者の方に周知の事実かと思います。
西村様: はい。他の仲介会社からもお話を聞かせて頂きましたが、踏み込めませんでした。M&Aを依頼する仲介会社の条件として、私は2点が非常に重要だと思っています。
1.顧客(譲受け候補企業)の情報をたくさん持っていること 2.具体的な数字(譲渡する場合は株価等)を提示できること
日本M&Aセンターは、何と言ってもこの2点において他社にはない強みを持っています。社員の皆さんも優秀で、任せて安心との印象も受けました。
着手金は仲介会社に責任が生まれるのでむしろ払うべき
西村様: 提携仲介契約を締結する前の面談で、「M&Aを進めるには、着手金を支払って企業評価や詳細な調査に進みます。情報がきちんと整理できていないと買い手への提案・交渉がうまく進まないので、この段階で着手金のお支払いとなります」との説明を受け、それは当然だと思いました。着手金がネックでM&Aを躊躇するオーナーもいらっしゃるそうですが、私はむしろ先に多少の費用が発生したほうが、頼まれた仲介会社にも責任が生まれて真剣に仕事をしてくれ、こちらも安心して任せられると考えます。そのため着手金の支払いには全く抵抗感はありませんでした。
その後調査に必要ということで、膨大な量の資料リストを受け取りました。これはさすがに私だけでは対応できないと感じましたので、信頼できる経理のスタッフには事情を説明し、資料収集に協力してもらうことにしました。
相手選びにはこだわりを
西村様: 買い手となったメディカル一光(東証JQS:3353)さんと出会うまで、すでに2社の候補先とトップ面談をしていました。2社とも規模や経営者の相性としては全く問題なかったのですが、私の希望する条件が出なかったことや、将来に向けての事業シナジー、ワクワクするような楽しみの予感があまり感じられず、M&A後に社員に喜んでもらえる環境を作ってもらえるか確信を持てなかったため、進めませんでした。
メディカル一光の南野社長からは事業シナジーはもとより「引き続き社長として残ってほしい」「従来どおりの経営方針を引き継がせていただく」と直々におっしゃって頂きましたので、交渉で難航した時期もその言葉を信じて商談を進めました。自分は運よく良い会社に出会えましたが、候補が複数出てきたことで相手を比較できたこと、選択肢をもらえたという事実は、自分が最終決断するうえで随分助けになりました。
結局3年間は社長として残ることになりましたし、メディカル一光さんは従来どおりを重視されましたから、現在も変わらず経営に関しては一任されています。逆に、社会的公器となったウェルフェアーの経営をお預かりする立場になったので、任せてもらっているからには今まで以上にきっちりしないといけない、という気持ちで取り組んでいます。
満を持してのディスクロージャー(M&Aの開示)しかし・・・
西村様: 最初に、社内で働いている息子に話をしました。真面目で、経営者向きとは言えないタイプと感じています。詳しく説明したのですが、まだ社会人4年目ということもあってM&Aのこと、会社を譲渡することについて実感がわかない様子でした。
次にキーマンである部長に話をしました。私の会社への思いも込めて伝えましたので抵抗感なく受け入れてくれました。また、メディカル一光さんという立派なグループに入れたことを前向きに捉えてくれ、今最もやる気を持って取り組んでくれています。
3番目に、関連会社の役員に話をしました。彼は仕事ができ、よく相談にも乗って、期待をかけている人材でした。ですが予想に反し、余程ショックだったのでしょう。彼からの反応は部長とは真逆のものでした。ただ、頭の良い人なので、いつかはわかってくれるものと信じていますし、時期が来たら改めて話をしようと思っています。
今後益々厳しくなる介護業界 M&Aのタイミングはまさに「今が旬」
西村様: 7割は譲渡して満足、という気持ち、3割はもう少し自分がオーナーを続けてもよかったかな、もったいなかったかな、という気持ちがあります。しかし、選択肢がある中で決断できたので、良い時期での判断だったと思っています。日本M&Aセンターの浅川さんは実に誠実に対応してくれました。彼でなければ、もしかすると途中でM&Aそのものが頓挫していたかもしれませんし、彼が声をかけてくれなければこの絶好の譲渡タイミングを逃していたかもしれませんので、大変感謝しています。
今の自分があるのは従業員のみんなが頑張ってついてきてくれたおかげです。今回のM&Aによって、彼らが長く安定して仕事に取り組める環境、基盤を作ることができて本当に良かったと感じています。上場会社の中核事業として迎え入れてもらえたのはウェルフェアーの社員にとって励みになったと思いますし、私にとっても彼らの活躍の場が拡がったことは何よりうれしいことです。私の様々な要求を全て受け入れてくれたメディカル一光さんに感謝しています。メディカル一光南野社長の経営者としての懐の深さは安心感に繋がりましたし、特にM&Aを成功させようと思った場合、譲受け手との相性は重要な要素なのだと感じます。
西村様: 人材不足はこれからも続くでしょうし、介護業界においてM&Aを検討するなら「今が旬」だと思います。今後も介護への需要の高まりは予想される一方、今後の介護保険制度の改正によっては事業環境が益々厳しくなり、ある程度の規模で運営しないと事業継続するのが困難な業界だと感じます。他社を譲り受けて自前で規模を拡大させるのか、大手に譲渡して安定した経営基盤を確保するのか。会社の売却と買収、どちらも検討した経験がある私からは、どちらの方法で成長するにしても、M&Aを検討するには「今が決断のタイミング」だということを伝えたいです。
M&A成功インタビューは、 日本M&Aセンター広報誌「NEXT vol.6」にも掲載されています。
リネンサプライ業のエスオーシーは、「民間救急」事業のアンビュランスを譲受けました。異業種2社がM&Aに至った背景、PMIについて話を伺いました。
予期せぬトラブルが重なり「5年後に引退、3億の自己資金を残す」と目標を定めたオーナー。業界再編を暗示する診療報酬改訂もM&A検討のきっかけになりました。
資本力や海外ビジネス展開のノウハウ不足に不安を感じていた譲渡オーナーは、大手企業との提携を模索し、M&Aによる譲渡を決断したと語ります。
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ウェルフェアー様には、当初は他社の買収による企業規模の拡大を提案させて頂きましたが、真に会社を発展させるためには、他社の譲受けや、自前での新規出店による拡大だけではないと考え、大手企業との提携をご提案致しました。西村様のご決断理由としては、自身のご年齢や後継者の問題など様々な要因があったかと思いますが、今回のインタビューで伺った通り、西村様個人としても会社の状況としても、ご決断頂いたタイミングは非常に良かったと感じております。提携相手となったメディカル一光様は西村様に大きな信頼と期待をされており、西村様には引き続き代表取締役としてご活躍頂いている今、本件のご提案およびお手伝いが出来た事を大変光栄に思っております。