M&Aの成否を左右する書類とは?

企業評価
更新日:

⽬次

[非表示]

買収を検討している会社がありました。

様々な候補の中から、自社の買収目的が叶いそうな企業が浮上したものの 「会社の特徴がいまいちつかめない」「業務フローがわからない」「収益力が見えてこない」という壁に突き当たります。これではM&Aを進めたくても進められません。

中小企業のM&Aでは、M&Aの専門家を介さず、自社単独で進めようとすると、こうしたケースに陥ることは少なくありません。

多くの中小企業では「自社がどのような会社であるか」を客観的に示す十分な資料」が存在しません。

自社のホームページや会社案内がなく、事業内容を対外的に示せないケースが多々あります。

会社案内があったとしても、それだけでは買い手企業が知りたい情報としては不十分な場合が殆どです。

M&Aの提案に向けて、譲渡企業の決算書の数値を分かりやすくまとめ、イレギュラーな内容の補足説明をすることも重要です。 さらに、「商品・サービスの強み・優位性は何か?」「長期に渡って利益を確保できる源泉は何か?」といった情報も、買い手企業としては知っておきたいところでしょう。 しかしこれらの情報は、オーナー経営者の頭の中だけに存在することが多く、買い手企業に適切に示すためには経営者インタビューと関連資料の収集を何度も行いドキュメントとして可視化することが必要になってきます。

数字を並べるだけではわからないのが中小企業の実態

当社では、これらの情報の集大成として完成したものを「企業概要書」と呼び、企業の値段を算定する「企業評価書」の作成等とあわせて「案件化」と定義しています。 もちろん、案件化には多くの時間と手間がかかります。 しかし、ここでしっかりと企業の実態把握と分析を行い、魅力を発見・抽出していなければ、見当違いなマッチングを行うことになり、シナジーのあるベストなお相手に出会うことが難しくなります。 まさに、M&Aを進めていく中で一番重要なステップなのです。

魅力ある企業概要書とは?

企業概要書は、譲渡企業の事業内容・業務フロー・取引先構成・財務内容・組織体制・株主一覧、沿革・業界動向・抱えているリスク等の企業情報が要約された30~50ページの提案書で、買手候補がM&Aの検討を進めるか否かを初期の段階で判断する資料です。 買い手企業候補に譲渡企業の現況を正確に理解してもらうと同時に、魅力を伝えることが目的です。 陥りがちなミスとして、調査レポートのような数字の羅列のみになってしまい、“提案書”の形ではなくなってしまう場合があります。M&Aが一般的になってきた昨今、買い手企業には仲介会社・銀行・証券会社等から数多くのM&A案件が持ち込まれます。各担当者との限られた面談時間の中で譲渡企業の魅力を最大限プレゼンするためには、視覚的にも分かりやすく、必要な情報が漏れなく簡潔にまとめられたものでなくてはなりません。

専門家としての技量が表れる

世の中に一つとして同じ会社がない中で、譲渡企業についてどのような切り口で情報を整理し、買い手企業にどのようにプロデュースするかが専門家の腕の見せどころであり、経験と能力が試されます。 譲渡企業の魅力が凝縮した企業概要書によって、決算書等の数値データには表しきれない譲渡企業のポテンシャル(今後の成長可能性)が買い手企業候補に明確に伝われば、利益の3年程度で通常評価される営業権が4年、5年と評価してもらえることになり、より高い金額での譲渡にも繋がるからです。

経営者人生の最後を飾る最高のマッチングを実現するために

このように、企業概要書はM&Aのマッチングに際して非常に重要なものとして位置づけられており、さらに、譲渡企業の経営者にとっては何十年もの経営者人生全てを投影した写真といっても過言ではありません。 自信をもって買い手企業に提案できるものに仕上げなければなりませんが、譲渡企業から預かったパンフレットや決算書等をそのまま買手候補に横流しするだけの業者もいまだに散見されます。このような方法で譲渡企業・買手候補の双方にとってベストなM&Aを提案できるでしょうか。 日本M&Aセンターでは、多くのM&Aを成約に導いてきたベテランアドバイザーによる譲渡企業の強みと課題の検討を行う「案件診断会」や第三者が記載内容と体裁をチェックする「レビュー会」を行って、より高品質の企業概要書の作成に社内一丸となって努めています。 社員一同、経営者人生の最後を飾る最高のマッチングを実現するべく、日々邁進しております。

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

この記事に関連するタグ

「マッチング・専門家・企業概要書」に関連するコラム

M&Aの「着手金」の役割とは?着手金をいただき続けていることへのこだわり

M&A全般
M&Aの「着手金」の役割とは?着手金をいただき続けていることへのこだわり

M&Aの仲介会社を選ぶシーンで、その仲介会社の料金体系が「着手金あり」か「着手金なし」かというのは、M&Aを検討する企業にとって、とても気になるところだと思います。日本M&Aセンターは「着手金あり」の料金体系です。今回は我々の「着手金の使い道」についてお話しさせていただきます。※本記事は2020年に公開されたものに一部加筆・変更を行っています。日本M&Aセンターの着手金とは日本M&Aセンターの着手

相場を知って、堅実なM&Aをしよう!

企業評価
相場を知って、堅実なM&Aをしよう!

株価の算定手法の一つに、評価対象会社の利益に類似会社の倍率を乗じるEV/EBITDA倍率法という手法があります。事業価値(EV)とEBITDAとの比率をもとに企業価値、理論的な時価総額を計算する方法で、M&Aの取引価格に大きく関わります。下のグラフは、とあるX業界のEV/EBITDA倍率を・業種細分類・年度別・地域別にグラフ化したものです。X業界業種細目別EBITDA倍率X業界年度別EBITDA倍

ノンネームシートとは?企業概要書との違い、取扱いにあたっての注意点を詳しく解説

M&A実務
ノンネームシートとは?企業概要書との違い、取扱いにあたっての注意点を詳しく解説

ノンネームシートは、M&A交渉の際に用いられる資料です。M&A仲介会社が、譲受企業(買い手)に譲渡企業(売り手)を紹介するために作成します。本記事では、ノンネームシートの概要、記載される主な項目、ノンネームシートを取り扱う際の注意点などについて解説します。ノンネームシートとは?ノンネームシートとは、譲受企業(買い手)が候補企業を選定する際に活用する、譲渡企業(売り手)に関する概要資料です。秘密保持

中小企業M&Aの肝はマッチングにあり 運命の1社との出会いを促す

M&Aを支える匠
中小企業M&Aの肝はマッチングにあり 運命の1社との出会いを促す

M&Aにおいて最大の肝といわれる企業同士の「マッチング」。中堅・中小企業のM&Aにおいては、条件だけでなく、企業文化やトップ同士の相性など、目に見えない要素が2社の”相性”を大きく左右します。日本M&Aセンターでは、610名のM&Aコンサルタントが、経験をもとに月約17,000件の企業をマッチングし中堅・中小企業に提案しています。その裏には、マッチング促進を担う専門部署であるマッチング戦略部が存在

M&Aのソーシングとは?手順や方法をわかりやすく解説

M&A実務
M&Aのソーシングとは?手順や方法をわかりやすく解説

M&Aにおける「ソーシング」とはM&Aにおけるソーシングとは、企業がM&Aの機会を見つけるために、情報を収集し、候補となる企業を特定するプロセスを指します。M&Aのプロセスは、一つ一つがかなり細分化されており、非常に細かいパートが積み重なって全体を構成しています。このプロセスは時系列に沿って大きく3つの段階に分けられます。ソーシング(Sourcing)オリジネーション(Origination)エグ

理想の買い手候補を即時提案 会社売却先シミュレーション「M-Compass」に込めた想い

広報室だより
理想の買い手候補を即時提案 会社売却先シミュレーション「M-Compass」に込めた想い

日本M&Aセンターは、M&Aを検討する経営者が自社の買い手候補企業をその場で簡単に調べられる新サービス、会社売却先シミュレーション「M-Compass(エムコンパス)」を2021年9月にリリースしました。開発責任者である、日本M&Aセンター上席執行役員(CDO)九鬼隆剛に新サービス開発の背景と狙いを聞きました。他社に真似できない高精度のマッチングーサービス開発の背景について教えてください九鬼:今回

「マッチング・専門家・企業概要書」に関連する学ぶコンテンツ

買収先の探し方

買収先の探し方

買い手の相談先でご紹介したように、M&A仲介会社などパートナーを選定したら、いよいよ買収先の候補企業を探すステップに移ります。本記事ではM&A仲介会社を通じてお相手探しを行う主な方法について、日本M&Aセンターの例をもとにご紹介します。買収先の探し方①譲渡案件型お相手探しは大きく「譲渡案件型」と「仕掛け型」の2つにわかれます。譲渡案件型は、M&A仲介会社が保有する売り手企業(譲渡を希望する企業)の

売り手が自社の情報を開示する流れ

売り手が自社の情報を開示する流れ

譲渡・売却先の探し方、選び方のポイントでご紹介した通り、譲渡・売却したい相手の条件を明確化した後、具体的な相手探しを進めます。M&Aを検討している、という事実は売り手企業にとって機密情報です。どのように情報管理を行いながら、相手企業に情報を共有し、M&Aの検討を進めていくのでしょうか。本記事では、売り手が情報を開示していくプロセスを中心にご紹介します。日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多

M&Aの事前準備。売り手が押さえておくべきポイント

M&Aの事前準備。売り手が押さえておくべきポイント

自社の売却を考える譲渡オーナーの多くにとってM&Aは未知の体験であり、不安はつきません。本記事では、相手探しを始める前に何を準備しておけばいいのか?どのような状態にしておけばいいのか?売り手が押さえておきたいM&Aの事前準備として資料収集・株式の集約についてご紹介します。日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。詳しくはコンサルタントまでお問合せください

企業概要書(IM)の準備

企業概要書(IM)の準備

企業概要書(IM)は譲受け企業が譲渡企業を評価し、M&Aの検討を進めるか判断する重要な書類の1つです。本記事では、IM(企業概要書)の概要、記載する内容や作成時の注意点などについて解説します。企業概要書(IM)とは企業概要書(IM:InformationMemorundom)は譲渡企業の詳細情報が記載された資料を指します。企業概要書(IM)の作成は譲渡企業を支援するM&A仲介会社やFAなど専門会社

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース