継がせる子供に説明責任を果たそう!

森山 隆一

日本M&Aセンター営業企画部部長

事業承継
更新日:

⽬次

[非表示]

当社は1991年の創業以来、「後継者不在問題は、友好的なM&Aで解決できる」、ということを提案し続けておりますが、後継者不在といってもいくつかのパターンがあります。 そもそも子供がいない場合。 そして子供はいるものの、それぞれやりたい仕事があって、実家の事業を継ぐ気がない場合などです。 ここで、経営者の皆様に質問です。「事業を継ぐ気がない」ということをどう判断していますか?本当に継いでほしいと思ったとき、子供に具体的な事業承継の説明を的確にできていますか? ここでは、そのことについて考えてみたいと思います。

事業承継プランはコミュニケーションから

後継者候補への説明責任を果たせていますか?

たとえば創業30年の企業と言えば、それだけ歴史があるということですが、創業社長はカリスマですから、社長が自然体でできることも、子供が継いですぐにできるわけではありません。経理や財務・取引先のことなど、社外にいたら知らなくてもあたりまえです。ましてや、役員やキーマンの性格・能力を把握して経営の采配を振るうという話になれば、どのように実現できるかイメージできないでしょう。 継ぐことを検討する子供からすれば、ずっと父親と一緒にいるからといって、父親が経営している会社の事が良く分かっている訳ではないのです。そうすると、父親の会社の実態を詳しく聞いたり調べたり、そのような会話を父親とするのもどちらかと言えば億劫な話ですし、差し出がましいと思ってしまうかもしれません。したがってそういった話を避けがちになるのは当然のことでしょう。 しかし、残念ながら社長も一人の人間であり永遠に社長業ができるわけではありませんので、子供にせよ、第三者の会社にせよ、バトンを渡していかなければなりません。子供だから会社を継ぐ、長男だから会社を継ぐ、という時代ではないことは、皆さんご存知の通りです。しかし、子供に継がせるために、自社のあらゆる事を把握し、実態を文章や形で示し、SWOT分析をして子供が未来を感じてくれるように説明責任をしっかりと果たして事業承継をしている経営者がどのくらいいるでしょうか?

子供でも第三者でも、正直に話す姿勢は同じ

数ヶ月前テレビで、下町の老舗飲食店の経営者がこんな主旨のコメントをしていました。 「自分が会社を継いだとき、借入金が70億円を超えていた。それを知らずに自分は継ぎ、自分の代で8億円分減らした。子供はこのまま継ぐが、借入金の存在はまだ知らない(笑)」。 この後この会社がどうなるかはもちろんわかりません。ただ人口が減り、国内市場が縮小していくこれからの時代、飲食店で60億円を超える借入金があることはとても重要な事実です。M&Aであれば借入金の存在を知らせずに売却することは許されません。肉親である子供に対しても同様の説明責任を果たさなくてよいのでしょうか? 継いだ子供はそれから30年は経営をしていくわけですから、直近3年位の中期事業計画は必須です。子供に継がせる時も、第三者と継がせるのと同様の準備と努力をしなければ、子供が子供だからという責任感だけで継いでしまう「継がせる不幸」になりかねません。そのためにも、まずは会社の実態把握から始めることをお勧めしたいと思います。

著者

森山 隆一

森山もりやま 隆一りゅういち

日本M&Aセンター営業企画部部長

1978年兵庫県生まれ。関西学院大学総合政策学部卒業後、2001年に東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。 2007年日本M&Aセンターに入社。2016年ダイレクト・マーケティング部を立ち上げ部長に就任。2017年執行役員に就任し、2021年からは金融法人部長として、大手証券会社との提携を牽引。ホテルインターコンチネンタル東京ベイ等成約実績多数。 2023年4月より現職。

この記事に関連するタグ

「親族内承継・事業承継」に関連するコラム

家族に株式を譲渡する方法とは?相続、贈与、売買それぞれの特徴を解説

事業承継
家族に株式を譲渡する方法とは?相続、贈与、売買それぞれの特徴を解説

株式会社を家族に継がせるためには、オーナー経営者が持つ株式を、家族内の後継者に譲渡しなければなりません。その譲渡方法は3種類存在しますが、それぞれにメリット・デメリットがあり、また手続きの方法や税金などに違いがあります。本記事では、家族間で株式を譲渡する3つの方法についてご紹介します。事業承継は、今回ご紹介する親族承継のほか、従業員承継、外部への承継があります。それぞれの事業承継のポイントについて

日本M&Aセンター初の"売らなかった経営者”が語るオンラインセミナー

広報室だより
日本M&Aセンター初の"売らなかった経営者”が語るオンラインセミナー

創業以来、セミナーを企業文化としてきた日本М&Aセンターで史上初めてとなる、M&Aを検討しながら譲渡しなかった経営者が体験談を語るウェビナー「成長戦略セミナー私が会社を売らなかった理由」が2021年8月25日に開催されました。逆説的でありますが、М&A仲介のリーディングカンパニーだからこそできる話題のセミナーとなりました。結果的に当社をM&A仲介ではなく“経営コンサル”としてご活用した経験談となり

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第3回「後継者について知ってほしいこと」~

事業承継
【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第3回「後継者について知ってほしいこと」~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。中小企業・小規模事業の経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思います

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第2回「最適な後継者選びに必要なこと」~

事業承継
【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第2回「最適な後継者選びに必要なこと」~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。中小企業・小規模事業の経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思います

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第1回 いい事業承継とは?~

事業承継
【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第1回 いい事業承継とは?~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思いますが、その参考にしていた

事業承継を考えるとき、何から準備すればいい?

事業承継
事業承継を考えるとき、何から準備すればいい?

事業承継の準備は、まず家族と話し合うことから始める会社の将来を真剣に考える中で、事業承継について経営者の方がまず行うべきは「将来についてできるだけ早く家族と話し合う」ことです。これは顧問税理士や公認会計士、取引のある金融機関など第三者への相談よりも、優先した方が良いでしょう。驚くべきことに「子どもが事業を継ぎたいのか、継ぎたくないのか」という基本的な意識確認、「親として継がせたいのか、継がせたくな

「親族内承継・事業承継」に関連するM&Aニュース

ウィルグループ、CEspaceから自治体及び企業へのDX支援事業を承継

株式会社ウィルグループ(6089)は、完全子会社である株式会社CEspace(東京都中野区)の地方自治体及び企業へのDX支援事業に関して有する権利義務を、吸収分割により承継すること(以下:本会社分割)を決定した。ウィルグループを承継会社、CEspaceを分割会社とする吸収分割方式。ウィルグループは、人材派遣、業務請負、人材紹介を主とする人材サービス事業を行うグループ会社の経営計画・管理並びにそれに

トーカイ、佐藤から福祉用具貸与・販売事業等を承継

株式会社トーカイ(9729)は、佐藤株式会社(福岡県福岡市)の福祉用具貸与事業、福祉用具販売事業及び住宅改修事業(以下:福祉用具貸与・販売事業等)を会社分割により、承継することを決定した。佐藤を分割会社とし、トーカイを承継会社とする吸収分割方式。トーカイは、病院リネンサプライなど病院運営の周辺業務受託、宿泊施設などへの寝具類の貸与福祉用具の貸与及び販売等を行っている。佐藤は、壁装材・襖材など内装材

東京ガス、GHPを主とした各種サービス事業を熱供給事業子会社へ承継

東京瓦斯株式会社(9531、以下:東京ガス)は、GHP※を主とした各種サービス事業を会社分割によって、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社(東京都港区)に承継させることを決定した。東京ガスを分割会社とし、東京ガスエンジニアリングソリューションズを承継会社とする吸収分割方式。東京ガスは、ガス事業等を行っている。東京ガスエンジニアリングソリューションズは、熱供給事業等を行っている。※GHP

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース