事業承継問題の本質

鈴木 安夫

株式会社バトンズ取締役

事業承継
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社長が高齢となっても後継者が見つからない事業承継問題。 現在、日本の社長の平均年齢は59.9歳と過去最高を更新(全国社長年齢分析(2020年)/帝国データバンク)、企業における社長の平均年齢は高齢化の一途を辿っています。 社長の高齢化は事業承継が進んでいないことを示しており、定年のない社長業ならではの傾向ともいえます。 中小企業庁「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会(第1回)」の資料(「事業承継に関する現状と課題(2016年)」)によると、40年前は8割以上が「社長の子供」が継いでいました。しかしここ10年での親族内承継の割合は急減、直近では親族以外の役員・従業員、そして社外の第三者への承継をあわせて65.7%となっており、事業承継の形態の多様化が進んでいます。

40年前と比べて、近年は事業承継の形態の多様化が進んでいる

昔からよく言われてきた「親の会社は子供が継ぐ」、このセオリーについて考えてみましょう。

事業承継、第一の候補はやっぱり“子供”?

中小企業の場合は親の会社は“家業”です。子供は親が会社を経営している姿を見て育ちます。社長の子供は、会社経営について具体的なイメージを持っています。 一方で、社長である親から見ても、会社経営についてイメージのない社員に比べて自分の子供の方が、経営の現実をよく分かっている後継者ということになります。 株の引継ぎもあります。 これまで勤め人だった社員が、自分の人生をかけて高額な株を買い取って経営するという覚悟を持つことは、急にできるものではありません。 よって、「親の会社は子供が継ぐ」というセオリーが浸透しているんですね。

昨今の揺れる親心

とはいいつつ、会社経営は、経済状況・景気に左右されます。企業努力をしてもその波にうまく乗れないときもあります。最悪の場合、倒産ということもありえます。 会社経営の難しさ・厳しさを、社長は誰よりも分かっています。そんな難しい“社長業”を自分の子供に継がせることは、子供にとって幸せなことなのか―子供の幸せを願う親だからこそ、立ち止まって考えてしまいますよね。

人生の選択肢は様々

「親の会社は子供が継ぐもの―そう思っていても、やりたい仕事が別にある」そんな社長の子供もいると思います。 社長の子供ですから、しっかりとした教育を受けて育ち、いろいろな知識を吸収するなかで、自分の好きな仕事を選びたいと思うのは自然な流れです。そしてそれは必ずしも、親の会社の事業とは限りません。

親子で話し合う時間を

「親の会社は子供が継ぐ」というセオリーがあることで、親も、子供も、縛られているのかもしれません。その“無意識の縛り”が、事業承継の判断を遅らせてしまっていたら…それは由々しき事態です。 悩んでいる時間にも、社長は歳をとります。会社の経営は悪化するかもしれません。経営状況が悪くなってからでは自分の子供はおろか事業承継自体が難しくなります。では清算しよう、と思っても、借金がある場合は清算すらできないこともあります。 このように、事業承継の検討は早ければ早いほど良い結果に繋がります。 事業承継の方法は、親族内承継・親族外承継・第三者への承継(M&Aなど)の3つです。 自分の会社にとってベストな方法を選べるよう、事業承継について家族とともに検討を始めましょう。

事業承継について詳しくはこちら

著者

鈴木 安夫

鈴木すずき 安夫やすお

株式会社バトンズ取締役

地方銀行を経て、日本M&Aセンター入社。現在は金融機関からの紹介案件を中心に活動。また、事業承継型M&Aだけでなく、企業再生型M&Aも得意としており実績多数。主な著作として「地域金融機関のための中小企業M&A入門」(金融財政事情研究会)などがある。

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