贈与の有効活用!最高税率55%?でも意外と使える暦年贈与
⽬次
- 1. 贈与税(暦年贈与)の税率
- 2. 暦年贈与の留意点
- 2-1. 1)連年贈与
- 2-2. 2)3年内贈与加算
- 3. 特例の活用(住宅資金の贈与)
- 4. 最後に
- 4-1. 著者
「贈与」と聞いてどのようなことをイメージしますか? 当社は、後継者不在の解決/事業承継の手段としてM&A仲介をしています。 オーナーやご家族の今後の人生を考える上で、事業承継と並行して検討をする必要があるのが「財産承継」です。こればかりは事業承継と違って、承継する相手は「親族」であり、第三者に譲ることはあまりありません。 親族への財産承継の一大イベントは相続ですが、相続のタイミングで全ての財産を引き継ぐと多額の相続税が生じる可能性があります。大切なご家族に少しでも良い形で財産を残すため、財産の承継についても早い段階でさまざまなプランを検討しておく必要があります。 ご家族に財産を移転する手法として「贈与」は使い勝手がよい手法です。 「えっ?贈与?たしか最高税率55%だったよね?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。今回はいつもと少し趣を変えて、贈与の初歩的なポイントについてお話をしたいと思います。
贈与税(暦年贈与)の税率
国は相続税を補完する税として、生前の財産移転=贈与に税金を課しています。一方で国は急速に進む高齢化社会の中で世代間の財産早期移転を促すため、平成27年税制改正により税率軽減や特例措置など贈与をより使いやすくする施策を導入しています。 贈与には「暦年贈与」と「相続時精算課税贈与」の二つがあります。 ここでは暦年贈与について解説していきます。 贈与税は、一年間(1/1~12/31)に贈与を受けた財産の額から110万円(基礎控除額)を引いた残りの額に対してかけられます。 暦年贈与は、累進税率で、最高税率は55%となっています。これだけを見ると税率が高く割に合わないと感じるかもしれません。 ポイントは累進税率(贈与額が上がるにつれて階段状に税率が上昇)と特例税率(祖父母・父母などから、その年1月1日において20歳以上の子・孫などへの贈与に適用される有利な税率)の二つです。 たとえば、父親が20歳以上の子に年510万円を贈与したケースを考えてみます。
- 贈与額 : 510万円
- 税額 : 50万円
- 手取額 : 460万円
- 実効税率: 9.8%
結果は上記のとおり、10%を切る実効税率になっています。 このように、タイミングと一年あたりの贈与額を考慮することにより比較的低い税率で財産を移転することが可能となります。このような形でコツコツと贈与を積み上げていくことは、効果的な財産移転の観点から検討の余地がありますね。
暦年贈与の留意点
1)連年贈与
数年にわたって贈与を行うときには、税務署に「連年贈与」と認定されないように気を付ける必要があります。これは「年1,000万円を10年間にわたり贈与する」という契約をした場合には最初の年にその全額の贈与を受けることが確定したとして贈与税が課されてしまいます。 連年贈与に該当しないように、毎年ごとに贈与額を確定し契約書等のエビデンスを残しておくことが重要です。
2)3年内贈与加算
相続により資産を取得した人が被相続人から受けた相続前3年以内の贈与は、贈与として認められず相続財産として課税を受けることがあります。これも早いタイミングで贈与の実行を検討すべきとされる理由のひとつです。
特例の活用(住宅資金の贈与)
贈与にはその他に政策的な時限立法による特例があります。その代表例のひとつが「住宅取得等資金の贈与」です。 祖父母・父母等から20歳以上の子・孫に対し住宅用家屋取得のための資金を贈与した場合、一定の要件を満たすことで贈与税に非課税枠が設定されます。当該特例は消費税増税が景気に与える影響を考慮して、消費税10%になるタイミングから一定期間にわたり、より有利な非課税枠が設定されることになっています。 例でみてみましょう。 父から20歳以上の子に対し、 (1)一年で5,000万円を贈与したケース と (2)3年間にわたって暦年贈与と住宅取得等資金の贈与(現時点での消費税率引き上げ時期は平成31年10月とされています。消費税10%に引き上げられたタイミングで贈与を受けて省エネ住宅を取得する場合を想定)を実行したケースでは、下記のような結果となります。
※税率は特例税率
結果として、一年で贈与したケースでは実効税率が41%であるのに対し、3年間にわたって住宅取得の特例と組み合わせた場合の実行税率は最終的に4.9%となっています。 贈与関連の特例にはその他、配偶者控除や教育資金の贈与などがあります。今後税制改正により制度の改廃が生じる可能性がありますので、定期的に顧問税理士の先生等に相談するのがおすすめです。
最後に
今回は贈与の基礎に触れましたが、大きな視点で棚卸しをするだけでも「先に取り組んで解決しておくべき重要な課題」がクリアになります。取り組むタイミングが早いほど多くの選択肢があることにも気付けるでしょう。 財産承継も事業承継も、現状および目指すべき方向性の把握が重要です。来るべき相続に向けた対策は何を目的に行うのか(争続を未然に防ぐ?納税資金を確保する?納税負担の減少??)のイメージを持つとともに、M&Aも含めた事業承継の最適な形も検討していきましょう。
日本M&Aセンターは、事業承継・財産承継を専門分野とする青山財産ネットワークと協業して「株式会社ネクストナビ」も設立しております。 事業承継のみならず財産承継のお悩みも、お気軽にお問い合わせください。