「やらない理由がどこにある?」M&A決断のとき

竹内 直樹

日本M&Aセンター 代表取締役社長

M&A全般
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先日、ある社長に3年ぶりにお会いしてきました。 最初の出会いは約10年前、私がM&Aのアドバイザーとしてまだまだひよっ子だった頃です。 「生意気だけど、言ってることは合ってる。信用できる奴だと思ってたよ」 30歳の若僧の言葉でも真摯に聞いてくれる社長のことが、私も大好きでした。 3年前に私がご提案したのは、東海エリアで10店舗展開している会社でした。事業内容や財務情報などをご説明した後、少し間をおいて、社長はこうおっしゃいました。 「細かいことはどうでもいい。早く、この会社の社長に会わせてほしい」

目的のないM&Aには意味がない

「社長、提案している私が言うのも何ですが、もっと時間をかけて考えていただいたほうが・・・」 当社で概要書と呼んでいる譲渡企業の紹介資料をお見せしてから、まだ10分も経っていませんでした。 「私はうちの会社を3年後までに50店舗まで拡大したいんだ。この会社と一緒になれれば、40店舗になる。この会社はきちんと利益も出している。やらない理由がどこにある?」 「いつまでに」「何」をやり遂げるのか― 「売上を伸ばしたい」「エリアを広げたい」という漠然とした目標を持っている経営者の方もたくさんいます。

また、目標がはっきりしていても、「いつまでに」という時間軸を考えられていない方もいらっしゃいます。 しかし、M&Aを成功させる(意味のあるものにする)ためには、「いつまでに」「何」をやる、という明確な目標が必要です。 なぜなら、M&Aが成功だったか、失敗だったかは、その目標を達成することができたかどうかで判断されるからです。 社長が立てられていた目標は、とてもシンプルで明確なものでした。

「いつまでに」「何を」という目標設定がM&A決断の決め手となった

成長戦略としてのM&A

「3年後までに50店舗にしたい。でも、自社のスピードでは35店舗が限界」 「君だったら、どうする?」 目標を達成するための戦略(手段)として、M&Aは必須なのだと社長はおっしゃいました。 「分かりました。すぐに先方にお伝えします」 社長にとって、それが初めてのM&Aでした。 最初の決断は早かった社長でしたが、M&Aのプロセスに入ると、とても慎重だったと記憶しています。

そのなかでも一番大事にされていたのは、お相手となる会社の社長との面談でした。 「一緒のグループとしてやっていくのだから、相手の会社も成長しなければ意味がない」 「一緒に上手く成長していくためには、社長との相性が大事なんだ」 そうおっしゃって、何度も先方の社長とのご面談やご会食を重ねられていました。

M&Aで成長するには

“譲渡企業が成長”していることが、M&A後にグループとして成長を遂げているケースに共通している点です。 譲渡企業の従業員も、自社グループの従業員になるわけです。彼らのモチベーションを上げなければ、グループ全体の成長はありえません。 今回ご紹介した社長は、その後も2件の買収を重ねられ、現在60店舗にまで拡大されました。 今の目標は2年後のIPO(株式上場)とのことです。

「あの時のM&Aがなかったら、いまの会社はなかったよ。IPO後も頼むよ、竹内くん」 2年後に上場を果たした社長にお会いするのが、いまからとても楽しみです。 いま、多くの企業がM&Aを検討されています。 実際、中堅中小企業のM&Aは年々増加しており、2社、3社と買収を重ねられている会社も数多くいらっしゃいます。

それは、買収した結果に満足されていることの裏返しではないでしょうか。 今回の成長戦略セミナーは、買収戦略に特化した内容となっています。体験談では、経済産業省が発行する「中小企業白書」にも取り上げられた株式会社シマキュウの島田社長にご登壇いただき、実体験に基づくM&Aの成功の秘訣をお話いただく予定です。 是非、皆様の買収戦略のご参考にしていただければと思います。 ※今回の成長戦略セミナーは終了致しました。

書籍『どこと組むかを考える成長戦略型M&A』

著者

竹内 直樹

竹内たけうち直樹なおき

日本M&Aセンター 代表取締役社長

1978年生まれ。広島県出身。2007年日本M&Aセンターに入社。主に中堅・中小企業と上場企業に対して買収提案を担う部署の責任者として、上場後のブリッツスケール(爆発的成長)に貢献。譲受企業だけではなく譲渡企業の成長も実現する「成長戦略型M&A」を提唱し、日本経済におけるM&Aの普及・啓発に尽力。2018年から取締役となり、全社の戦略立案と実行を指揮して、連続的な業容拡大を実現。2024年4月より現職。日本M&Aセンターホールディングス取締役も兼務。著書に「どこと組むかを考える成長戦略型M&A」(プレジデント社)がある。

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