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9代目社長に聞く。創業106年の伝統企業 大阪・中島大祥堂を「紡ぐヒト」

事業承継
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株式会社中島大祥堂

創業:1912年
所在地:大阪府八尾市
事業内容:和菓子洋菓子製造販売
従業員数:140名(正社員)
代表取締役 中島慎介

中島様

中央:中島大祥堂 代表取締役 中島慎介様
右:向井珍味堂 顧問 中尾敏彦様(事業承継ナビゲーター サポーター)
左:日本M&Aセンター 上席執行役員 雨森良治

絶えず新しいことをやる

「100年同じモノをひたすら売っている老舗企業だったら継いでいなかったかもしれません。」

大正元年京都で創業した中島大祥堂は今年で106周年を迎えるお菓子づくりの伝統企業だが、9代目の中島慎介社長は伝統に胡坐をかくことはない。その眼は常に新たなものを求めているからだ。

戦前、特別なものであった「お菓子」は、戦後欧州からの安価な輸入品が市場を席巻、スーパーマーケットの登場による小売の肥大化の時代を経て、作り手には厳しい業界となりつつあった。一方で、「進物・ギフト」の市場ではいまだ存在感を発揮しており、ニッチな世界ながら着実にその地位を確保している。

30年前に中島大祥堂が売り出した“吉野のくずもち”は、夏のギフトとして定番化し、ギフト市場における同社のロングセラー商品となった。

中島様

吉野のくずもち

中島様

創業当時

中島社長は「絶えず新しいことをやる」ことを大事にしており、「新製品×新販路」両方の開発・開拓が常に必要と説く。また、作り上げたものも定期的に「全部見直す」ことで、結果的に商品寿命を長くすることができると言う。素材はより良いものにこだわり、パッケージも2年に1回はリニューアルし、消費者が魅力的に感じる見せ方をするなど時代に合わせて求められる商品を追求している。

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家でも父を社長と呼ぶ。一社員として受け入れてくれた従業員に感謝

工場でよくある「来客への挨拶」も中島大祥堂の場合、アットホームな雰囲気の中にも背筋の伸びた程よい緊張感とおもてなしの丁寧な心遣いを感じさせる。「OEMを受けている大手企業は工場の監査がつきもの。当社の場合、できるだけ最初に工場はもちろん、工場で働いている従業員の顔を担当者に見てもらうことでオープンな会社であることを印象づけるように気遣っています」。

若いときに一社員として入社した自分を受け入れてくれた従業員に対して、「人には恵まれた」と感謝の念を忘れない。

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自身が会社を引き継ぐときはというと、先代(父)と「大きな方向性や考え方は一緒であったが細かなところでは意見の食い違いも多く、喧嘩もいっぱいした」そうだ。

しかしあるとき、「親子であることを捨て、経営者と部下の関係になるべきだ」と気持ちを切り替えてから衝突はなくなった。「家でも父を社長と呼んでいました」。

この徹底ぶりで、社員も“社長の息子”をスムーズに受け入れた。次期社長となる準備が整った瞬間だった。

ちなみに社長に就任した直後から先代は会社に来なくなり、ずっとしたかった勉強をするために大学に入学したというから、その潔さと探究心たるや恐れ入る。

大阪本社工場

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事業承継は“理念の承継”が重要

先代からの教えは「モノはヨーロッパに学べ、ビジネスはアメリカに学べ」。数度の研修出張だけでなく、とにかく息子を育てるための経験や投資は惜しみなく与えてくれたという。中島社長は4人兄弟の長男だが、先代は当初から「会社には子どもをひとりしか入れない」と決めていた。中島社長も、会社の株式は自分に、それ以外の資産は他の兄弟3人に渡すよう伝え、親の財産はアテにしないことで応えた。

「これからも社会に必要とされる企業であることは守り続けながら、商品やビジネスのシステム、事業領域はどんどん変化させていきたい」。

自身の事業承継を問われると「日本M&Aセンターにお願いするかもしれませんね」と笑う。変化し続けられたことで伝統企業になった経験から、事業承継を成功させるには“理念の承継”がいかに重要か身に沁みている。

一言で事業承継といっても十人十色、千差万別。継ぐ側、継がせる側お互いの潔さが必要だ。永く企業を存続させたい、うまく事業を引き継ぎたいオーナー経営者の参考になれば幸いだ。

人気ブランドHitotoeのはちみつマドレーヌ

中島大祥堂 公式サイト

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著者

M&A マガジン編集部

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