“留職”って何? 未来を切り拓く、次世代リーダーを育成する方法。後継者を決める手段としても【後編】
⽬次
- 1. 企業の人材への投資スタンスが全く変わった
- 2. 中小企業の候補者候補育成にも
- 2-1. 著者
企業の人材への投資スタンスが全く変わった
―もともと小沼様は青年海外協力隊として中東シリアで活動後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤めていらっしゃったそうですね。 私がクロスフィールズを仲間とともに立ち上げたのは2011年のことです。話すと長くなってしまうのですが(笑)、シリアでNPOとビジネスの接点が持つ可能性を感じ、「ビジネスを通して社会課題を解決する」という同じ想いを持つ仲間と出会い、起業しました。
NPO法人クロスフィールズ 代表理事 小沼大地氏
ビジョンに共感した多くの人たちが助けられ、順調に拡大してきていますが、7年前と今では、企業の人材への投資スタンスが全く変わってきていることを実感しています。以前は、“グローバル人材を育成する”という目的でこの研修を利用される企業が多かったのですが、最近では、イノベーションを起こさなければならないという企業の切迫した状況があり、特に大企業においては、“イノベーションを加速させるための投資は惜しまない”という企業の思いが伝わってきます。 日系企業は今、変わらなければならない状況にあります。 デジタル化、国際化など、変化のスピードが目まぐるしく、従来の雇用の制度では立ち行かかなくなり、人も組織も革新が必要とされています。M&Aによる成長も同じだと思いますが、変化への対応という意味で、人材育成への投資も急速に拡大しているのです。また大企業に関して言えば、投資家から「SDGs」への対応が注目されるようになり、社会課題に目を向ける企業が増えてきたことも背景にあると思います。
中小企業の候補者候補育成にも
―今後の展開についてどのようにお考えですか。 今あるこのサービスをスケールさせていきたいというのはもちろん考えていますが、何といっても一番の願いは、クロスフィールズの留職プログラムに参加した人が今後の企業を担う重要な人材となり、リーダーシップを発揮して活躍してほしいですね。このプログラムは、そのための一助になると思いますし、社会の何かが変わるきっかけとなれば、それほど嬉しいことはありません。経営層・管理職向けの「フィールドスタディ」の事業に関して言えば、参加者同士の横のつながりも深まり、コミュニティができていたりします。同じ体験をした人同士帰国後も交流が続いていたりするので、そこから新たなビジネスが生まれる可能性もあり、楽しみです。 留職プログラムの導入企業の多くは次世代リーダーの育成を考える大企業なのですが、実はある中小企業のオーナー様から「自分の後継者を選ぶために、候補者候補を派遣し、成長させたい。そして後継者としての適性を見極めたい」とご相談いただいたことがあります。
例えば中小企業の跡継ぎの息子さんを社外で修行させるため、取引先で働かせてもらうとしても、どうしても周囲の人は気を遣いますから、本当の意味での「修行」にはなりにくいですよね。修行の場も、現在の仕事の延長になりがちです。その点では、「留職」のような手段を使えば、頼れる知り合いがいない異国の全く想定できないことが起こるような環境下で、どのように考えどう行動するのか、見極めることができます。
ちなみにその中小企業のオーナー様は、この留職で顕著な成果を出した幹部社員を後継者に決められました。経営者になるために、予測できないことが起きた時にも柔軟に対応する力を身につけるという意味では、中小企業の後継者育成に関するニーズも今後増えていくかもしれません。 優れた人材の採用は容易ではありませんが、採用した社員それぞれが過去に培ってきたものを、いかにイノベーション創発につなげるか、というのはさらに難しいテーマではないでしょうか。この7年間で、プログラム参加者と派遣先の企業、現地のパートナー団体の変化に着実に貢献しているという実感があります。これからも変わろうとする組織の変化をお手伝いし、良い化学反応を引き起こしていきたいと思います。
―ありがとうございました。 日本M&Aセンターでは、今後も「経営人材教育」についての情報発信をしていきます!お楽しみに。 “留職”って何? 未来を切り拓く、次世代リーダーを育成する方法。後継者を決める手段としても【前編】 クロスフィールズについてもっと知りたい方はこちらから クロスフィールズ公式サイト ムービーで体感してみよう 社会課題体感フィールドスタディ 留職プログラム紹介ムービー