異業種M&A、その実態とは?
⽬次
- 1. 景気が良いと異業種M&Aが増える?!
- 2. 異業種M&AにもIT化の波
- 3. 成功する異業種M&Aとは?
- 4. 最後に
- 4-1. 著者
“M&A”と聞いてみなさんが想像するのは、同業種間でのM&Aではないでしょうか。 ラーメン屋さんがエリア拡大のために別の駅のラーメン屋さんを買って出店する、 高齢の店長が切り盛りしていた調剤薬局が、大手調剤薬局チェーンの傘下に入る、 など同業種間M&Aは想像しやすいと思います。 では実際、異業種M&Aはどれくらい起こっているのでしょうか?
景気が良いと異業種M&Aが増える?!
日本国内においては、景気が良いと異業種M&Aが多くなり、不景気になると異業種子会社を切り離す、という歴史があります。 2018年度のM&A件数[In-In]を見てみましょう。
異業種M&A件数の割合
異業種は全体の38.2%となっています。 “異業種”に分類されるなかでも、垂直統合や水平統合を除いたものを“完全な異業種”とした場合、それは僅か9.7%です。 本業に関係のない飛び地の買収をしている会社は10%に満たないのです。
異業種M&AにもIT化の波
異業種M&Aの事例を分析すると、近年では大手企業によるITベンチャーの買収が相次いでいます。 大手企業は自社ソフトウェアの開発部門を切り離してきた歴史がありますが、主にBtoC向けの事業を取り込むことで本業のサービスをIT化させていくことに挑戦しています。 ここで、ひとつの事例を紹介しましょう。 市場の拡大とIT導入によるサービスの質向上【住宅メーカー×IT決済サービス】
- 譲渡側 : 株式会社ロイヤルゲート
- 譲受け側 : 大和ハウス株式会社
2018年4月に、総合不動産ディベロッパーの大和ハウス工業が、決済サービスを提供するベンチャーのロイヤルゲートを譲り受けました。 ロイヤルゲートは、商業店舗で用いられる決済端末「PAYGATE」でキャッシュレス化をリードするベンチャー企業です。同年11月1日には、新型モバイル決済端末「PAYGATE STATION」の発売を発表し、磁気やIC・QRなどの様々な決済方式が1台で対応可能になり、新規サービスに対しての拡張性能が高いことが特徴です。
キャッシュレス決済端末市場への参入をした大和ハウス
シナジーとして、大和ハウスグループが開発する商業施設に入居するテナントへのキャッシュレス決済端末導入が挙げられます。キャッシュレス決済端末は、消費者のキャッシュレス決済比率が約20%と低く事業者への導入が進んでいないのが現状です。一方で政府方針としては2020年3月までにクレジットカード決済の加盟店においては決済端末の100%IC化対応が義務付けられるなど、安全・安心なキャッシュレス社会の構築に向けた対策が進められています。このM&Aにより、同グループはキャッシュレス決済端末市場に参入、拡大を目指すことができます。 また、店舗向け決済サービスにとどまらず、AI搭載ロボットを用いた高機能物流施設の開発など、高付加価値な施設開発も可能となって、事業領域の拡大が見込めます。
成功する異業種M&Aとは?
上記は一例ですが、ではどのような会社が異業種M&Aで成功しているのでしょうか? 異業種のM&Aの事例を分析すると、2つの成功事例に分類されます。 1.本業において強力な資産をもつ企業がM&Aによって横展開をする事例 伝統あるLPガス会社などの多くは、地元の名士としての知名度(ブランド力)や数多くの顧客口座を持っています。こういった“資産”を利用して、水の宅配事業会社や不動産事業会社などを買収しています。本業の強い資産を活かし、次の事業展開にM&Aを活用してるのです。 先の大和ハウスの事例もこのパターンと言えるでしょう。 2.一時的に収益の上がった企業がM&Aによる展開を行う事例 ゲーム会社などのインターネット系企業では、成長に比例して高い技術力や多くの人員を必要としています。しかしこれらはサービスのヒットが終わると余剰人員になる可能性があります。そこでM&Aによって、新しいサービスを展開しようとしている企業を譲り受け、必要な技術力や資金力を投入するのです。
最後に
こういった成功事例だけでなく失敗事例も含めた様々な事例を、『M&Aカンファレンス2019-WiNNOVATION-』でお話しする予定です。私も登壇する『業界別M&Aセッション』では、IT業界/食品業界/建設・設備業界/調剤薬局業界/製造業/物流業の専門のプロフェッショナルが登壇し、業界別の最新トレンドを解説いたします。ぜひ足をお運びください!