女性が家業を継ぐ時代!跡取り娘が経営を学ぶ

事業承継
更新日:
理想の買い手企業が見つかります。会社売却先シミュレーションM-Compass。シミュレーションする

⽬次

[非表示]

「息子がいないから跡継ぎがいない」 何年か前まではこれが当たり前の世の中でした。実際、帝国データバンクの調査によれば、日本の女性社長の比率はたったの7.8%です。 しかし近年、娘が会社を継ぐということが徐々に増えてきています。 そして、そんな“跡取り娘”たちがいま集まってきている場所があります。 昭和女子大学のダイバーシティ推進機構が開く「“跡取り娘”人材育成コース」です。月に一度、女性経営者ら経済界で活躍している人物を講師に招き話を聞くほか、企業訪問等のアクティブラーニングをし、半年後の最終回で受講者全員が研究発表を行うというこのコース。 “跡取り娘”は、後継者不在問題を解決するための手段として、主流になっていくのでしょうか。

家業を継ぐ跡取り娘たちが集い、共感しあえる場所に

跡取り娘人材育成コース1

昭和女子大学“跡取り娘”人材育成コース 幅広い年代の十数名の女性が集う

「実家の運輸業を継ぐ予定で、経営について勉強するために来ました」と話すAさん。 もともとは美容業界で働いていたそうで、運輸業というと男社会で大変そうな印象を受けますが、 「妹が一緒に継いでくれるということが決め手になった。ひとりだったら正直継がなかったと思う」と笑って話します。5年かけて事業承継の準備をしている最中だそうで、「会社での男性社員とのコミュニケーションの仕方を学びたいと思っています」と参加のきっかけを語ってくれました。 実家がネジ屋さんを営むBさんは、なんと小さな娘さん2人の子育て中。 いずれ3代目として会社を継ぐ予定だそうです。「最初は継ぐつもりはありませんでした。しかし、父から『どうする?』と聞かれた時、気づいたら『継ぎます』と答えていました」。 このプログラムの参加者は、業種も年齢もバラバラで、しかも全国から集まってきています。だからこそBさんは、「女性経営者はまだまだ少ないので、こういう横のネットワークができるのはありがたい」と話します。
本プログラムの全体監修を務める昭和女子大学キャリアカレッジ学院長の熊平美香氏は、「家業を継ぐ娘さんたちが増えています。しかし、さまざまなバックグラウンドを持った彼女たちが悩みを共有し、解決できるきっかけになるような場所はほとんどない。もっと気軽に女性経営者が集い、共感し学べるコミュニティーが必要だと考えました」と開講のきっかけを話します。

昭和女子大学熊平美香氏

昭和女子大学 キャリアカレッジ学院長 熊平美香氏

経営者として「決断力」「リスクテイク能力」「統率力」を学び、家業を継いでいくための素養を身につけられる“跡取り娘”人材育成コースは、実際に受講生たちにとって、貴重な場になっています。

各界の第一人者を招いた講義

中小企業で使えるAIとは?プログラムの目玉ともいえる講義は、毎回、様々な分野の一線で活躍する講師を招き、経営者が心得ておくべきテーマについて学びます。 12月に開かれた第3回の第一部では、ソニー株式会社 R&Dセンター 要素技術開発部門 AIコア技術開発部の小林由幸氏が、Deep Learningのもたらす産業の変革や、AIを応用することで実現できる中小企業経営の効率化と発展の可能性について講義。 「職人がいなくなってしまう前に、これまで属人的だったノウハウや技術をAIに学習させることで、跡継ぎ問題の解決にもつながる。今後は、データとして技術を継承できない会社は淘汰されていく」と話す小林氏に対して、 受講生からは「この業界だったらどうAIを活用できるか」「自分たちのような中小企業でも、ディープラーニングのためのデータを蓄積することはできるのか」「年配の社員にAIについて理解してもらうには」といった質問が、次々に飛び出します。

ソニー小林由幸氏

ソニー株式会社 R&Dセンター 要素技術開発部門 AIコア技術開発部 小林由幸氏

そして第二部は、メディア出演や著書のドラマ化で一躍有名になったダイヤ精機株式会社の代表取締役社長、諏訪貴子氏によるロールモデルセッション。

ダイヤ精機諏訪貴子氏

ダイヤ精機株式会社 代表取締役社長 諏訪貴子氏

諏訪社長は創業者である父親が亡くなったことを機に、2004年にダイヤ精機を引き継ぎました。 予期せぬタイミングでの社長交代を受けて、当時は会社が危機的状況になったそうです。当初は職人気質の社員に自身の話を聞いてもらうだけでも苦労したそうですが、会社組織を強固なものにすべく、社員のマインドチェンジを図る3年の改革を断行。 その改革とその後の会社の成長について語り、同じ女性経営者の立場からアドバイスを送りました。 講義後の質疑応答では、「経営の相談は社員にするのか」「どうしたら中小でも人材採用ができるか」など、積極的に質問が飛び出していました。

跡取り娘人材育成コース

「今まで自由に生活できたのも父の会社のおかげ。自分の代で潰したくなかった」

今回の講義の参加者の1人である30代のCさんは、おせんべい屋さんの3代目として最近家業を継ぎました。実家の父親からは「継いでも継がなくてもいい」と言われていた中で、なぜ継ぐことにしたのでしょうか。 「今まで自由に好きなことをして生活できたのも父の会社のおかげだと気づきました。自分を育ててくれたこの会社を潰したくなくて、跡継ぎになることを決めました」 「父の会社を残したい」と思ったとしても、実際に行動に移すのは容易ではありません。まして20代の若さで、周囲に同じような境遇の人はほとんどいなかったはず。Cさんは悩みに悩み抜いて決断を下したのではないでしょうか。

“跡取り”という枕詞には、”息子”をついついイメージしてしまいますが、全国の“跡取り娘”たちは確実に増えています。結婚・出産・子育てと、第一線でバリバリ働く年齢の間にいくつものライフイベントをこなす女性たち。 「経営者」を選ぶのも、働き方に自由を求める時代の流れなのかもしれません。 昭和女子大学の熊平学院長によれば、好評につき今後もこの講義を開催していく予定とのことです。 気になる方は、昭和女子大学のWebサイトをチェックしてみてください!

昭和女子大学 キャリアカレッジ https://career-college.swu.ac.jp/

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

この記事に関連するタグ

「事業承継・人材育成・家族・後継者・親族内承継」に関連するコラム

大学で家業の事業承継を学ぶ学生たち。”ベンチャー型事業承継”で、家業にイノベーションを

事業承継
大学で家業の事業承継を学ぶ学生たち。”ベンチャー型事業承継”で、家業にイノベーションを

実家が家業を営んでいるという若い世代は、自身の将来についてどんな考えを巡らせているのでしょうか。自分の進みたい道がある、漠然と家業は継ぎたくないと思っている、親である社長の考えがわからず不安に感じている等々、さまざまな方がいるでしょう。もちろん家業を継ぐことを真剣に考えていて、若いうちは実家から離れて就職し、将来戻ってきて家業を継ごうとしていたり、最初から家業に入って後継者として経営のノウハウを学

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第3回「後継者について知ってほしいこと」~

事業承継
【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第3回「後継者について知ってほしいこと」~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。中小企業・小規模事業の経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思います

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第2回「最適な後継者選びに必要なこと」~

事業承継
【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第2回「最適な後継者選びに必要なこと」~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。中小企業・小規模事業の経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思います

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第1回 いい事業承継とは?~

事業承継
【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第1回 いい事業承継とは?~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思いますが、その参考にしていた

事業承継を考えるとき、何から準備すればいい?

事業承継
事業承継を考えるとき、何から準備すればいい?

事業承継の準備は、まず家族と話し合うことから始める会社の将来を真剣に考える中で、事業承継について経営者の方がまず行うべきは「将来についてできるだけ早く家族と話し合う」ことです。これは顧問税理士や公認会計士、取引のある金融機関など第三者への相談よりも、優先した方が良いでしょう。驚くべきことに「子どもが事業を継ぎたいのか、継ぎたくないのか」という基本的な意識確認、「親として継がせたいのか、継がせたくな

事業承継は会社にとって第二の創業

事業承継
事業承継は会社にとって第二の創業

中小企業の経営者の多くは、自身が引退した後の会社をどうするか答えがないまま、経営を続けてこられたのではないでしょうか。特に、自身も健康で経営も順調であればなおさら、会社の後継者問題に向き合う機会は少ないといえるでしょう。真剣に考えるタイミングを逃しがちになります。事業承継は後継者の人生にかかわる重要な事ですが、だからこそ後継者をはじめとしたご家族と十分なコミュニケーションがとれていない場合がほとん

「事業承継・人材育成・家族・後継者・親族内承継」に関連するM&Aニュース

ウィルグループ、CEspaceから自治体及び企業へのDX支援事業を承継

株式会社ウィルグループ(6089)は、完全子会社である株式会社CEspace(東京都中野区)の地方自治体及び企業へのDX支援事業に関して有する権利義務を、吸収分割により承継すること(以下:本会社分割)を決定した。ウィルグループを承継会社、CEspaceを分割会社とする吸収分割方式。ウィルグループは、人材派遣、業務請負、人材紹介を主とする人材サービス事業を行うグループ会社の経営計画・管理並びにそれに

トーカイ、佐藤から福祉用具貸与・販売事業等を承継

株式会社トーカイ(9729)は、佐藤株式会社(福岡県福岡市)の福祉用具貸与事業、福祉用具販売事業及び住宅改修事業(以下:福祉用具貸与・販売事業等)を会社分割により、承継することを決定した。佐藤を分割会社とし、トーカイを承継会社とする吸収分割方式。トーカイは、病院リネンサプライなど病院運営の周辺業務受託、宿泊施設などへの寝具類の貸与福祉用具の貸与及び販売等を行っている。佐藤は、壁装材・襖材など内装材

東京ガス、GHPを主とした各種サービス事業を熱供給事業子会社へ承継

東京瓦斯株式会社(9531、以下:東京ガス)は、GHP※を主とした各種サービス事業を会社分割によって、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社(東京都港区)に承継させることを決定した。東京ガスを分割会社とし、東京ガスエンジニアリングソリューションズを承継会社とする吸収分割方式。東京ガスは、ガス事業等を行っている。東京ガスエンジニアリングソリューションズは、熱供給事業等を行っている。※GHP

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース