大学で家業の事業承継を学ぶ学生たち。”ベンチャー型事業承継”で、家業にイノベーションを
⽬次
- 1. 日本の会社はなぜ長く続くのか
- 2. ゼミを通して家業の魅力を再発見し、 イノベーションの起こし方を学ぶ
- 3. 親と家業について話し合う機会を
- 4. 継ぐ側目線の事業承継
- 4-1. 著者
実家が家業を営んでいるという若い世代は、自身の将来についてどんな考えを巡らせているのでしょうか。 自分の進みたい道がある、漠然と家業は継ぎたくないと思っている、親である社長の考えがわからず不安に感じている等々、さまざまな方がいるでしょう。 もちろん家業を継ぐことを真剣に考えていて、若いうちは実家から離れて就職し、将来戻ってきて家業を継ごうとしていたり、最初から家業に入って後継者として経営のノウハウを学ぼうとしていたりする方もいます。 そんなモヤモヤしている学生を対象に、家業の可能性や家業を継ぐ人生に向き合ってもらおうと、同年代の後継者たちと共に学ぶ機会を提供しているのが関西大学(提供学部は商学部.全学の学生が受講可能)と、若手後継者を対象に新規事業開発の支援等を行っている一般社団法人ベンチャー型事業承継が共同で開く「ガチンコ後継者ゼミ」です。開講して8年目を迎えるこのゼミを6月下旬に取材しました。
「ガチンコ後継者ゼミ」の様子
日本の会社はなぜ長く続くのか
「若い世代が、社会に出る前に、家業の強みや特徴を学ぶ機会が必要だと考えて、ガチンコ後継者ゼミを開講しました」と、一般社団法人 ベンチャー型事業承継 代表理事の山野千枝氏は語ります。 「陸上競技のリレーで、日本はなぜメダルを獲れると思います?私は、日本人が“繋ぐ”という能力がとても高いからだと思うんです。また、日本の会社の創業年数を世界と比較すると、2位に大きな差をつけてトップです。日本の会社は生き残る力を持っています」。
ゼミで講義する山野千枝氏
「会社を存続させたいと誰よりも強く思っているか?」 「今ある経営資源を価値に変えたいと思っているか?」 山野氏は、経営者の中でもこのふたつの思いを誰よりも強く持てる“アトツギ”こそが、会社を存続させ、家業のイノベーションを起こすことにつながる、といいます。 しかし、大学生の時点でそこまでの覚悟ができている後継者ばかりではありません。だからこそこのゼミを通じて学ぶことがあるのです。
ゼミを通して家業の魅力を再発見し、 イノベーションの起こし方を学ぶ
まずゼミ生はここで“自分が家業についてよく知らない”ことを知る、ということが重要であり、授業はアンテナを張る作業なのだそう。 とはいえ、事業承継は会社にとって重大な転換期です。既存事業をそのまま継続していくだけでは生き残れない昨今、事業承継のタイミングで新規事業に取り組み事業拡大を目指すことは後継者にとって非常に重要なミッションと言えるでしょう。 参加する学生の家業は、農業、漁業、小売業と様々です。多様な業種を家業にもつ学生が一つの教室に集まって、“未来をどうしたいか?”について考えます。将来理想とするビジネスから逆算して、現在どうあるべきかを考えるという作業をワークショップとともに繰り返していくのです。 この日は、学生が3チームに分かれて、ランダムなキーワードの組み合わせから新規事業を発想し、誰に対してどんなサービスを提供するのかをプレゼンするというもの。キーワードの組み合わせは例えば、「お葬式」×「食堂」、「排泄物」×「タイル」など。
ワークショップで付箋にアイデアを書き起こしていく学生たち
学生たちは、一見なんの関連性もない2つのワードをどうやって関連付けることができるのかをお互いに意見交換し、そこからどんなニーズが想定されるのか仮説をたて、新サービスについて議論し合いました。最後は各チームが、自由な発想で組み立てた仮説から想定される新規事業の全貌を発表。和気あいあいと未来の跡継ぎ達が議論しあいました。
ワークショップを見守る山野氏
親と家業について話し合う機会を
「ガチンコ後継者ゼミ」では、親と家業について話し合う機会をもってもらうことも大きな目的の一つ。子どもが家業に興味を持って親に話を切り出すことで、現経営者である親の自社に対する意識が変わり、良い効果が生まれるのだそうです。 「親も子供もお互いに忖度しながら話し合いができずに、何となく廃業してしまう会社が多いと思うんです。子どもは親と家業について話をしていく中で、家業が持つ可能性を知ること、そして、自分がやりたいことに家業の資源を寄せていくという発想になることが大切です」。 山野氏が代表を務める、一般社団法人ベンチャー型事業承継では、家業の経営資源で新規事業を起こすといいう目的に特化した、34歳未満のアトツギだけが入会できるオンラインサロン「アトツギU34」を運営しています。 「一定の年齢に達したり、代表になって既存事業に追われていると。業界の中の常識を超えられなくなってしまいます。先代が元気なうちに、20年後のメシの種をまくというのが事業承継の最大の醍醐味。アトツギは、若いうちに異業種を経験し人脈を増やすことはとても大切。自分自身で得た経験や人脈と、家業の経営資源を掛け算して、化学反応を起こすことで、新しい価値を生み出す。それこそがベンチャー型事業承継です。 若い世代の挑戦は、周囲を巻き込む力があります。我々は“アトツギベンチャー”というシンボリックなジャンルを確立し、そこをめざす若い世代を増やしていこうとしています」。 自身の仕事について「アトツギが新しいことに挑戦するためのグラウンド整備をしているような感じ。彼らが家業を継いでどんな未来を作っていくのか、とても楽しみ」と話す山野氏。 ゼミは「単位互換制度」を利用して大学コンソーシアム大阪に加盟している協定校の学生も受講可能です。ゼミやオンラインサロンに参加できない方も、まずは親子で話合いをし、事業承継後にどんなイノベーションを起こせるか検討してみてはいかがでしょうか。
34歳未満 野心系アトツギのための新規事業開発オンラインサロン 「アトツギU 34」 運営)一般社団法人 ベンチャー型事業承継
継ぐ側目線の事業承継
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