【1万字スペシャル対談】SHIFT×日本M&Aセンターが巻き起こす、SI業界革命
⽬次
- 1. ソフトウェアテスト業界を切り拓く
- 2. IT業界は非効率なやり方をしている
- 2-1. 著者
2019年5月、業務提携を発表したSHIFTと日本M&Aセンター。提携により、2社が共同で運営する新たなコンソーシアムを立ち上げ、SI業界変革を加速していくという。果たして両社は今後、業界の未来をどのように変えていくのか。 SHIFT 代表取締役社長 丹下大氏と、日本M&Aセンター 上席執行役員 渡部恒郎に語ってもらった。
ソフトウェアテスト業界を切り拓く
日本M&Aセンター渡部 SHIFTはソフトウェアテストの業界を切り拓いてきたトップカンパニーですね。 SHIFT丹下 創業は2005年です。もともとコンサルティングファームとしてスタートしましたが、2009年に開始した「ソフトウェアテスト事業」をきっかけに大きく飛躍しました。 それまで業界内では開発者が、開発からテストまでを一貫して実施することが普通でしたが、当社が第三者検証のプロ集団としてオンデマンドでテストを請け負うことで、開発者は開発業務に専念できるようになりますし、テスト業務を担う専門の社員や派遣社員を通年で雇う場合と比べ、コスト削減が可能になります。テストに関する知見・ノウハウを持った我々が検証することで、不具合の検出率も高まりました。 現在では、金融・物流・小売り・WebやERP、ゲームなど非常に幅広い業界のソフトウェアの品質保証を担っています。 2014年には東証マザーズへ上場、2018年度は売上約130億円に達しました。
丹下たんげ 大まさる
株式会社SHIFT 代表取締役社長
京都大学大学院工学研究科機械物理工学修了。26歳で株式会社インクス(現 SOLIZE株式会社)に入社。たった3名のコンサルティング部門を、5年で50億、140名のコンサルティング部隊に成長させ、コンサルティング部門を牽引。31歳で株式会社SHIFTを設立。 40歳で東証マザーズ上場。海外展開も含め、更なる事業拡大を意欲的に進める。直近の売上128億円(昨年80億円から1.6倍)、今期は売上180億円を目指す。
渡部 SHIFTの公募価格は35億円でしたが、いまや時価総額1000億円にまで成長されています。これは非常にすばらしいことですよね。 丹下 大きくなってから上場するのがいいか、早く上場するのがいいか、考え方はいろいろあると思います。資金調達のタイミングですね。僕は早めに上場して、実力を示しながら株主にきちんと評価してもらいたいと思っていました。 実は当初上場するつもりは全くなくて、創業してから5年くらいは社員十数名のコンサルティングファームという感じでした。おかげさまで安定はしていましたが、スケールしない。 果たしてこれでいいのだろうかと感じていたころ、大学の先輩から、「社会性の強い仕事。世の中のためになることだから、仲間を集めて拡げていくべき」と言われ、考え方が変わりました。約4年かけて上場しました。 渡部 創業の理由や事業の背景に社会性があることは、企業価値が高い会社の基本条件ですね。今まで100件以上のM&Aの支援を行ってきて、これは必須だと考えています。社会性の高さは企業としての本質的な価値につながっていきます。
IT業界は非効率なやり方をしている
渡部 急成長するSHIFTですが、創業の経緯やソフトウェアテスト事業を始められたきっかけを教えてください。
渡部わたなべ 恒郎つねお
日本M&Aセンター 上席執行役員 ベンチャー企業サポート室 室長
京都大学経済学部卒業。在学中は、ベンチャー企業を立ち上げ、取締役に就任。卒業後、新卒で日本M&Aセンターに入社。以降、7年間のプレイヤー時代に当社の最優秀社員賞を3度受賞。過去100件を超えるM&Aを成約に導き、中堅・中小企業M&AのNo.1コンサルタントとして業界を牽引している。業界再編M&Aの第一人者。ゼロから業界再編部立ち上げわずか3年で28億円超を売上げる部署に育て上げる。著書の、『業界メガ再編で変わる 10年後の日本 中堅・中小企業M&Aが再編の主役だ』(東洋経済新報社)は2万部発刊しamazon総合で1位のベストセラーとなる。2017年当社最年少で執行役員就任、2018年上席執行役員業種特化事業部部長。
丹下 昔から起業することは考えていました。小学生のころ地元の広島東洋カープに憧れてプロ野球選手になりたいと思っていた時期がありましたが、狭き門であることに気づき、代わりに経営者を目指すことにしました。世の中には会社がたくさんあるので、もしかしたら社長なら僕もなれるかもしれないと思ったんですよ。 ただ、僕が大学を出たころは今ほどスタートアップを支援するような環境もあまり整っていなかった。それですぐには起業せず、京都大学大学院を出た後、ものづくり系の製造業のコンサルティング会社に5年ほど勤めました。 そこで僕は、携帯電話の金型を製作している企業のコンサルティングを行い、それまで2カ月かかっていた工程を2日に短縮できる仕組みを考案しました。評判がよく、その手法を家電や車や飛行機に応用できないかと相談を受けたりして、非常に多くのコンサルティング経験を積ませてもらいました。『職人さんの技術を標準化してITに落とし込んで自動化していく』ことが得意になったのはこの頃です。 たった5年ですが、すごく濃い時間を過ごさせてもらい、今のSHIFTの原点にもなっています。 渡部 起業されたのは30歳のときですね。 丹下 そうです。それから数年経った後、……