ZOZOの売却に思うこと ~成長過程の企業のM&A~
⽬次
- 1. 著者
ZOZOが成功の過程で企業を事業承継した。
成長過程の企業の選択肢は
もちろん急成長の最中ではなく、初の減益などを経た上ではある。それでも、2019年3月期で売上高118,405百万円、営業利益25,654百万円をたたき出し、時価総額7,000億円前後の会社を21年で作り上げたことは事実だ。 日本の株式市場の中でも上位数本の指に入る成長を遂げた企業と言える。
なお、2019年9月13日時点での時価総額を見ると、丸紅が約1.3兆、双日が約4,000億、サイバーエージェントが約5,000億、大和証券が約8,000億円である。それと比べればZOZOの企業としての優秀さが分かる。
一方ヤフーは以前、同様に成功過程にあった一休をグループに入れた経験を持つ。競合していくのでなく、ヤフーの力、あるいはソフトバンクグループの力を使って、一気に勝者となっていくのだ。
個人で株を持つことは企業のコントロールには役立つが、やはり法人が株を保有していることの事業上の利点は非常に大きいことを改めて痛感している。
企業の経営者、それも創業者の想いを受け止めることは極めて難しいことだと再認識した。 我々M&Aプレイヤーは、オーナー経営者の想いを正確に理解するところから始まり、企業の価値を最大化できる法人や経営者につないでいく仕事だ。
9月12日に行われたZOZOの前澤氏の会見では、ある記者からこんな質問があった。「退任するのは無責任なのではないか?」
前澤氏は、こう答えた。
「本当の無責任とは、自分の権力や地位に甘んじて、会社の成長機会を逃し、自分の地位に安住することではないかと考えます。ZOZOはいま課題を持っており、その課題を解決するために今回の提携は素晴らしいものになります。これまでの私の、トップダウンのある意味わがままな経営から、社員1人1人権限を持ち、あたかも1人1人が社長のように振る舞える、総合力を持った組織にならなければなりません。
それによって、今以上の総合力を持った企業として、ZOZOはさらなる成長を遂げていく必要がある。そのための苦渋の決断でした。」
また、こんな声もあった。
「結局、嬉しいのか悲しいのかどちらなのか?」
これに対しては、嬉しくもあり、寂しくも悲しくもある。これが偽らざる答えだ。オーナーにとって、子供が結婚するような気持ちだ―――。
前澤氏は最後に、「毎日毎日が新しい始まり。スタートトゥデイは、ZOZOにとっては非常に重要な名前だし、僕にとっても大切。ここにきて、別々の道を歩むことになったが、このシンプルな考え方を基に、これからも互いに一歩一歩、新しい人生を楽しんで生きていけたらいいな」と話した。
大企業や多くのビジネスは今までの延長線上に事業が成り立っている。企業を引き継いだ経営者は、創業者のようにリスクを取る勇気がなく、統治することに苦心し、企業はつまらなくなり、成長を失っていく。
一方で、創業者は、毎日新しいことを考え生み出している。
ヤフーは川邊社長をはじめ、創業経営者の集まりだ。ヤフーのグループに入ったZOZOは、この創業者の考え方を忘れずに更なる飛躍を遂げてほしい。