【IT業界M&A事例】M&Aだからこそ、懸命な努力をもってしても得られない成果を得られた
⽬次
- 1. 譲渡企業様の概要とM&Aの検討理由
- 1-1. 譲渡企業概要 ジェイ・エス・シー
- 1-2. M&Aの背景(譲渡企業)
- 1-3. 相手企業に求めるもの
- 2. 譲受企業様の概要とM&Aの検討理由
- 2-1. 譲受企業概要 三栄ハイテックス
- 2-2. M&Aの背景(譲受企業)
- 2-3. 相手企業に求めるもの
- 3. M&Aで実現したもの
- 3-1. M&A後に実現したもの
- 4. 譲渡企業オーナー青木様から、M&Aを経ての感想
- 4-1. 青木様からM&Aを検討している経営者に3つのアドバイス
- 4-2. 「M&Aは健全な事業拡大の手段である」
- 4-3. 「自分の経験値に専門家の知識を入れる」
- 4-4. 「すべては覚悟から」
- 4-5. 著者
【譲渡企業様】
・企業名⇒ジェイ・エス・シー株式会社
・事業内容⇒組込系受託開発と技術者派遣
・売上(M&A当時)⇒約3億円
・オーナー様のご年齢⇒58歳
・社員数⇒約40名
【譲受企業様】
・企業名⇒三栄ハイテックス
・事業内容⇒LSI設計、ソフトウェア開発
・売上(M&A当時)⇒約30億円
・社員数⇒約350名
譲渡企業様の概要とM&Aの検討理由
譲渡企業概要 ジェイ・エス・シー
譲渡企業はジェイ・エス・シー株式会社(以下、JSC)。所在地は愛知県で、設立は1993年。
組込系受託開発と技術者派遣を行っており、車載や半導体、産業機械関連の組み込み系の開発を強みにしていました。名古屋と滋賀の2拠点で事業運営しており、売上の約半数は大手との直接請負取引の形を取っていました。
M&Aの背景(譲渡企業)
創業から23年、リーマンショックの厳しい時期もなんとか乗り切りましたが、JSC元社長の青木様は単独での成長に限界を感じていました。青木様は当時58歳で、20代の息子が二人いましたが、2人とも継ぐ気はなく、社内にも経営を任せられるような人はいませんでした。
このような状況の中、①社内承継 ②外部招聘 ③M&Aという3つの選択肢を慎重に検討した結果、M&Aがベストな選択肢だと決断しました。
相手企業に求めるもの
相手として求める条件は大きく2つです。
- 1.同業で製造業に強い企業
- 2.中堅・準大手で勢いのある企業
この条件に合致したのが譲受企業となる、三栄ハイテックスでした。
譲受企業様の概要とM&Aの検討理由
譲受企業概要 三栄ハイテックス
譲受企業は三栄ハイテックス。所在地は静岡県で、LSI設計やソフトウェア開発を中心に行っていました。
東証1部上場のイノテックの子会社で、浜松を拠点とし、東海地区を中心に展開しています。当時の売上高は約30億円で、社員数は約350名でした。
M&Aの背景(譲受企業)
2002年M&Aという形で、イノテックの子会社となった三栄ハイテックスは、独立性を維持し、成長性を続けていましたが、今後の成長を加速させるために今度は買い手としてM&Aを検討することになりました。
三栄ハイテックスのメイン事業は半導体設計で、M&Aに至る5年前に車載に特化した拠点を名古屋に立ち上げました。
しかし、もともと顧客がいるわけではなかったため、中部地区、特に名古屋での新規顧客獲得を大きな課題としていたのです。
拠点には従業員はわずか5,6名のまま採用も進まず、技術者の確保が急務となっていました。
相手企業に求めるもの
三栄ハイテックスが既存の自動車関連事業の強化のために、ターゲットとして想定していたのは
- 1.愛知県内に拠点がある企業
- 2.自動車関連の組込系開発企業
という2点でした。
これらのニーズに合致したのがJSCであり、M&Aを実施するに至ったのです。
M&Aで実現したもの
M&A後に実現したもの
M&A実行前には
- 三栄ハイテックス:東海地区での事業基盤強化
- JSC:主要取引先との取引拡大
を主なシナジーとして想定していましたが、M&A実行から2年が経った今、これらは見事実現に至っています。
三栄ハイテックスとしては、新規取引先に対して以前より単価がアップできています。
名古屋拠点の人員も増員でき、人材交流で取引先に同行する等メリットを活かせています。
JSCとしても、大手の傘下に入ることによりブランド力を獲得し、単独では獲得が難しかったような新たな顧客との取引が開始しています。
譲渡企業オーナー青木様から、M&Aを経ての感想
青木様「長年取引を開始したいと希望していた新規大口顧客を、M&Aで信用が増したことによって獲得できましたし、今後は資金の心配なく、地域ごとの戦略が考えられるようになりました。」
「M&Aだからこそ、懸命な努力をもってしても得られない成果を得られたと確信しました。また通常では現金化出来ない未上場の株式を現金化できたことは、終わってみれば宝くじにあたったような心境に似ているかもしれません。」
青木様からM&Aを検討している経営者に3つのアドバイス
「M&Aは健全な事業拡大の手段である」
永年希望していた、規模が大きい相手先企業との取引が一瞬で実現しました。
「自分の経験値に専門家の知識を入れる」
M&Aは未知のものでも、取り掛かってしまえば何でもないのです。知識やノウハウのある専門家を利用しましょう。
「すべては覚悟から」
経営者であれば、覚悟を決めれば脳が準備に入ると思います。