【IT業界M&A事例】M&Aだからこそ、懸命な努力をもってしても得られない成果を得られた

瀬谷 祐介

日本M&Aセンター業種特化チャネル部長

業界別M&A
更新日:

⽬次

[非表示]

【譲渡企業様】
・企業名⇒ジェイ・エス・シー株式会社
・事業内容⇒組込系受託開発と技術者派遣
・売上(M&A当時)⇒約3億円
・オーナー様のご年齢⇒58歳
・社員数⇒約40名

【譲受企業様】
・企業名⇒三栄ハイテックス
・事業内容⇒LSI設計、ソフトウェア開発
・売上(M&A当時)⇒約30億円
・社員数⇒約350名

譲渡企業様の概要とM&Aの検討理由

譲渡企業概要 ジェイ・エス・シー

譲渡企業はジェイ・エス・シー株式会社(以下、JSC)。所在地は愛知県で、設立は1993年。

組込系受託開発と技術者派遣を行っており、車載や半導体、産業機械関連の組み込み系の開発を強みにしていました。名古屋と滋賀の2拠点で事業運営しており、売上の約半数は大手との直接請負取引の形を取っていました。

M&Aの背景(譲渡企業)

創業から23年、リーマンショックの厳しい時期もなんとか乗り切りましたが、JSC元社長の青木様は単独での成長に限界を感じていました。青木様は当時58歳で、20代の息子が二人いましたが、2人とも継ぐ気はなく、社内にも経営を任せられるような人はいませんでした。

このような状況の中、①社内承継 ②外部招聘 ③M&Aという3つの選択肢を慎重に検討した結果、M&Aがベストな選択肢だと決断しました。

相手企業に求めるもの

相手として求める条件は大きく2つです。

  • 1.同業で製造業に強い企業
  • 2.中堅・準大手で勢いのある企業

この条件に合致したのが譲受企業となる、三栄ハイテックスでした。

譲受企業様の概要とM&Aの検討理由

譲受企業概要 三栄ハイテックス

譲受企業は三栄ハイテックス。所在地は静岡県で、LSI設計やソフトウェア開発を中心に行っていました。

東証1部上場のイノテックの子会社で、浜松を拠点とし、東海地区を中心に展開しています。当時の売上高は約30億円で、社員数は約350名でした。

M&Aの背景(譲受企業)

2002年M&Aという形で、イノテックの子会社となった三栄ハイテックスは、独立性を維持し、成長性を続けていましたが、今後の成長を加速させるために今度は買い手としてM&Aを検討することになりました。

三栄ハイテックスのメイン事業は半導体設計で、M&Aに至る5年前に車載に特化した拠点を名古屋に立ち上げました。

しかし、もともと顧客がいるわけではなかったため、中部地区、特に名古屋での新規顧客獲得を大きな課題としていたのです。

拠点には従業員はわずか5,6名のまま採用も進まず、技術者の確保が急務となっていました。

相手企業に求めるもの

三栄ハイテックスが既存の自動車関連事業の強化のために、ターゲットとして想定していたのは

  • 1.愛知県内に拠点がある企業
  • 2.自動車関連の組込系開発企業
    という2点でした。

これらのニーズに合致したのがJSCであり、M&Aを実施するに至ったのです。

M&Aで実現したもの

M&A後に実現したもの

M&A実行前には

  • 三栄ハイテックス:東海地区での事業基盤強化
  • JSC:主要取引先との取引拡大
    を主なシナジーとして想定していましたが、M&A実行から2年が経った今、これらは見事実現に至っています。

三栄ハイテックスとしては、新規取引先に対して以前より単価がアップできています。
名古屋拠点の人員も増員でき、人材交流で取引先に同行する等メリットを活かせています。

JSCとしても、大手の傘下に入ることによりブランド力を獲得し、単独では獲得が難しかったような新たな顧客との取引が開始しています。

譲渡企業オーナー青木様から、M&Aを経ての感想

青木様「長年取引を開始したいと希望していた新規大口顧客を、M&Aで信用が増したことによって獲得できましたし、今後は資金の心配なく、地域ごとの戦略が考えられるようになりました。」

「M&Aだからこそ、懸命な努力をもってしても得られない成果を得られたと確信しました。また通常では現金化出来ない未上場の株式を現金化できたことは、終わってみれば宝くじにあたったような心境に似ているかもしれません。」

青木様からM&Aを検討している経営者に3つのアドバイス

「M&Aは健全な事業拡大の手段である」

永年希望していた、規模が大きい相手先企業との取引が一瞬で実現しました。

「自分の経験値に専門家の知識を入れる」

M&Aは未知のものでも、取り掛かってしまえば何でもないのです。知識やノウハウのある専門家を利用しましょう。

「すべては覚悟から」

経営者であれば、覚悟を決めれば脳が準備に入ると思います。

IT業界の最新動向やM&A事例が良くわかるITソフトウェア業界M&Aセミナー開催中

著者

瀬谷 祐介

瀬谷せや 祐介ゆうすけ

日本M&Aセンター業種特化チャネル部長

外資系金融機関を経て、日本M&Aセンターに入社。業界再編部の立ち上げメンバーであり、2012年から、調剤薬局業界・IT業界を中心に、中小零細企業から、上場企業まで数多くの友好的なM&A、事業承継を実現している。これまで主担当として70件以上を成約に導いており、国内有数のM&Aプレイヤーの1人である。顧客満足度評価は、日本M&Aセンターのコンサルタント約500名中1位。

この記事に関連するタグ

「IT業界」に関連するコラム

過去最高の件数を記録した2024年上半期のM&A

業界別M&A
過去最高の件数を記録した2024年上半期のM&A

はじめに昨今、M&Aの話題を聞かない日はないほど、M&Aは経営オプションの一つとして確立し、世の中に広く浸透してきました。本コラムでは、具体的な件数を追いながら直近のM&Aトレンドについて解説していきたいと思います。@cv_buttonM&A件数で見る2024年のM&Aのトレンド早速ですが、今年の上半期(1月~6月)でのM&Aの件数を形態別にまとめましたのでご覧ください。(出典:レコフM&Aデータ

日本のIT業界における課題とM&Aによる解決方法

業界別M&A
日本のIT業界における課題とM&Aによる解決方法

はじめに皆さん、こんにちは。日本M&AセンターIT業界専門グループの七澤一樹と申します。私は、前職ではIT業界向けの人材紹介業に従事しており、現場担当として5年間、マネージャーとして3年間経験を積んで参りました。当社に入社後はIT業界専任のM&Aチームに在籍し、引き続きIT業界に関わらせて頂いております。IT業界においては、人材不足、急激な技術革新のスピードへの対応、多重下請け構造などといった業界

アクセンチュアとオープンストリームホールディングスのM&A | デジタル変革の推進力

業界別M&A
アクセンチュアとオープンストリームホールディングスのM&A | デジタル変革の推進力

皆さん、こんにちは。日本M&AセンターIT業界専門チームの鈴木雄哉と申します。昨今はIT企業がM&Aを活用するシーンも増えてきており、今回は直近のM&Aの事例を基に解説させて頂ければと思います。@cv_buttonはじめに2024年5月、アクセンチュア株式会社(東京都港区、代表取締役社長:江川昌史、以下、アクセンチュア)は株式会社オープンストリームホールディングス(東京都新宿区、代表取締役社長:吉

IT企業が直面している課題とは?

業界別M&A
IT企業が直面している課題とは?

皆さん、こんにちは。日本M&AセンターIT業界専門チームの土川幸大と申します。私はこれまでIT業界に10年間従事してきました。IT業のお客様も担当させて頂き、現在はM&A業界でIT業のお客様をご支援できればと精進しております。ここで多くのIT企業が直面している課題についてまとめてみます。@cv_button人材不足が招く負のスパイラル1.優秀な人材の採用が困難中小企業では優秀な人材の採用は困難とい

【2024年】IT業界の成長戦略型M&A事例紹介

業界別M&A
【2024年】IT業界の成長戦略型M&A事例紹介

皆さん、こんにちは。日本M&AセンターIT業界専門チームの大西宏明と申します。私は、前職ではIT業界のSIerの法人営業として従事しておりました。当社に入社後はIT業界専任のM&Aチームに在籍し、引き続きIT業界に携わっております。@cv_button近年のIT業界は目覚ましい成長を遂げており、以下のトレンドで動いていると考えており、業界自体が急速に日々進化していると推測出来ます。技術の進化と革新

日本屈指のスタートアップが考える「これまで」と「これから」

業界別M&A
日本屈指のスタートアップが考える「これまで」と「これから」

皆さん、こんにちは。株式会社日本М&AセンターIT業界専門グループ齋藤です。2023年12月5日、6日に経営者及び起業家向けのセミナーイベント「経営活性化フォーラム」を開催いたしました。IT業界専門グループリーダーの竹葉聖がモデレータを務め、EastVenturesパートナー金子剛士氏、dely株式会社取締役CFO戸田翔太氏をお招きし、『日本屈指のスタートアップが考える、「これまで」と「これから」

「IT業界」に関連するM&Aニュース

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース