【医新伝診】院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる診療所の事業承継
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本誌を読まれている先生方も1度は「事業承継」という言葉を聞かれたことがあるのではないでしょうか。事業承継と聞くと、引退を迫られているようで前向きになれなかったり、何から着手すればよいのかわからず悩みや不安を抱えている方も多いと思います。本稿では、『院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継』をテーマに院長が抱える事業承継への不安を1つでも解消し、笑顔で事業承継を終えられるような気付きを提供いたします。
後継者不在率は89.3%?「後継者がいない」は特別なことではありません
「89.3%」・・・この数字は日本における無床診療所の後継者不在率です。日本医師会総合政策研究機構の調査によれば、「後継者が決まっていない」と回答した割合は89.3%で、親の事業を継ぐのが当たり前だった昔とは異なり、今や「子供が親の診療所を継ぐほうが珍しい時代」になりました。診療所を継がない子供が悪いわけではなく、時代の移り変わりと共に継げない理由が増えてきたと言ったほうが適切かもしれません。その理由には、『診療科・専門性の違い』『家族の意向・反対』『勤務医志向者の増加』などがあげられます。
診療科・専門性の違い
精神科と心臓血管外科では診療内容から治療薬に至るまで大きな違いがあります。親子で診療科・専門性が異なるケースは多々ありますが、実際に親の診療所を引継ぎ、子供が得意とする診療科で新たにスタートを切るケースはごくわずかです。
家族の意向・反対
医学部進学と同時に子供が大都市圏へ住まいを移し、Uターンを期待していたものの戻ってこないケースです。当初は実家の診療所を引き継ぐ予定でいたものの、医学部卒業後にそのまま大学病院で腕を磨き同僚と結婚・出産、子供が幼稚園・小学校に通い始めた時には住宅も購入しており、結果的には奥様の反対でUターンが実らなかった事例もありました。
勤務医志向者の増加
以前は開業を医師人生の目標として掲げていた方も多かったのですが、「病院の勤務医として臨床の第一線で医療を担い続けたい」「開業は失敗する可能性もありリスクだ」と捉える医師も増えてきました。自分のやりたい医療を自分の手が届く範囲及び限定的な責任の範囲内でやるという新しい価値観が生まれつつあります。
『親族に医師がいる・子供が医学部に通う』=『後継者がいる』という等式は既に当てはまらない時代を迎えている今、どのような方法であれば事業承継を円滑にできるのか、その要因を紐解いていきたいと思います。
第三者承継(M&A)について
不測の事態の保険代わりに、55歳を超えたら始める事業承継の準備
「事業承継の準備をしてください!」と正面切って言われても『まだまだ現役の自分には関係ない。』『子供が医学部に入ったから問題無い。』と自分事には捉えにくいものです。そこで下記の質問が自院・自身に当てはまるかまずは〇×を付けてみてください。
(1)開業から数十年が経過、患者も安定して来院し経営も順調
(2)臨床・診療の腕にも自信あり、若い医師には負けない自信あり
(3)長男は勤務医、次男は医学部在学中、後継者候補も万全だ
1つでも○があれば、事業承継を考えるタイミングを迎えているかもしれません。事業承継の準備を始める時期はいつが最適なのかと問われれば、それは『55歳を超えたら』と断言できます。
開業から数十年が経ち、業績も順風満帆、息子は勤務医、次男は医学部在学中。将来の不安がなく、心に余裕のある時は、様々な情報を整理整頓し、時間に余裕を持って検討・決断ができるからです。院長として毎日の診療を担うことは勿論大事なことですが、自身が始めた診療所の出口を見据えておくことも同じくらい大事なことと言えます。
極端な例を出せば、院長に万が一の事態が起きた診療所の最後を何度か見たことがありますが、「悲惨」という言葉の他に見出せるものがありませんでした。ご家族は閉院の手続きや業者対応で疲弊し、職員は職を失い、患者は治療が滞るといった事態になります。事業承継の準備だけでもしておけば、免れることができた諸課題も多数あります。院長の後継者探しだけでなく、医療法人化や資産の相続税対策もその1つでしょう。
「事業承継の準備』はご自身だけではなく、『家族・職員・患者のための行うもの』であることを強くご認識頂きたいと考えます。事業承継の準備が不測の事態が起きた際の保険に代わり、いわばお守りにもなるのです。
適切な『相談先』とは?診療所の事業承継に経験を持ち秘密保持を徹底できる『企業』
事業承継を真剣に検討しようと思い立った時、悩ましいのは相談相手です。親・親族・友人・先輩後輩・金融機関・会計事務所・出入り業者など様々な候補が上がると思いますが、むやみやたらに誰にでも相談を持ち掛けることは避けてください。
診療所という単体の事業でも様々なステークホルダー(利害関係者)が関与しているため、情報管理は徹底する必要があり、その相談先は限定するのが鉄則です。
最初の相談先として適切なのは、「情報と経験を持ち秘密保持を徹底できる企業」です。
具体的には、下記の3つに該当するか否か必ず確認をして頂きたいと思います。
(1) 診療所における事業承継の成功事例を豊富に持つ企業
(2) 診療所を引き受けたいというニーズ(買いニーズ)を蓄えている企業
(3) 昨今の医療情勢やトレンド、スキーム(事業承継の方法)を押さえている企業
事業承継や第三者承継(M&A)を生業とする会社が昨今非常に増えておりますが、株式会社とは違う「医療機関の事業承継」に慣れている企業は限られます。くれぐれも相談先にはご注意いただければと思います。適切な相談先を決めることが事業承継における第1歩となりますが、もし相談先に困るということであれば東証一部に上場しており、日本で最も事業承継の支援をしてきた日本М&Aセンターも相談先の候補にご検討ください。
日本М&Aセンターは、設立30年で累計6,000件以上の成約実績を誇り、日本で最も事業承継の支援をしてきた会社です。病院・診療所・介護事業の第三者承継(М&A)を毎年約100件成功に導いてきた医療・介護分野の専門集団『医療介護支援部』が診療所の事業承継を支援します。