準備が必要なお金は半額以下? クリニックの承継は高値案件こそが狙い目?

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クリニックのM&A
クリニックの譲受けを検討されている際、後継者を探しているクリニックの譲渡希望価格を見て「これほど高額であれば、新規に開業した方がいいのでは」と感じた経験を持つ方は、少なくないのではないでしょうか。

クリニックの開業を検討する際に「新規開業と承継開業を金額で単純比較することは危険」という点に留意が必要です。

本記事では承継案件における、譲渡希望価格の捉え方、検討ポイントについて事例を交えてお届けします。

M&Aの目的、検討ポイントは業界・業種によって異なります。病院・クリニックのM&Aに精通した専門チームがあなたの会社のM&Aをご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

クリニックの譲渡希望価格が、高く見える理由とは?

まずは『クリニックの譲渡希望価格が高額に見える理由』 について事例をもとに説明します。



医療法人日本クリニック(仮称)の理事長を務める万田先生(仮名)は御年75歳、今年で創業30年を迎えます。

「そろそろ事業承継を考えよう」と思い立ち、会計事務所に相談を持ち掛けたところ、「従業員の生活を守り、患者さんを引き続き診療してもらえる第三者承継(M&A)を検討してはどうか」と提案を受けました。

会計事務所に紹介を受けた日本M&Aセンターのコンサルタントに無料相談を依頼し、M&Aに関する詳細説明を受けた後、クリニックの資産価値を参考まで算出してもらうことにしました。

その結果、医療法人日本クリニックの資産価値は「3億円」という評価が付けられました。

なぜこんなにも高く評価されたのでしょうか?説明を聞くと納得のいくものでした。

万田先生は急な資金が必要になった時に備え、黒字転換した開業後3年目以降、毎年1,000万円を28年間欠かさずに法人の銀行口座に貯金していたのです。

開業時の借り入れは既に返済を終えていたため、総額2億8,000万円の現金を、医療法人日本クリニックはまるまる保有していることになります。

営業権を含む資産価値が3億円、と聞いた万田先生は、3億円を希望価格としてお相手探しを始めました。(続く)


譲渡希望価格が高額なクリニックの特徴とは?


創業年数が長く、優良な経営状態で利益を内部留保しているほど、当然法人の資産価値は高くなり、譲渡希望価格は比例して上昇します。

クリニックの譲受を希望される方が「3億円」という金額を目にした時、一瞬たじろいでしまうかもしれませんが、クリニックの承継案件を検討するときは 【高値が付いているほど、経営状態が良いクリニック】 という意識で探していく方が、良いお相手に巡り合う確率が格段に高まります。

法人の資産価値(≒譲渡希望価格)は必ず用意するべきお金?

本記事のもう一つのテーマ「希望価格は、譲受ける際に必ずしも用意しなければならない金額ではない」についても、先の事例の続きをもとにご紹介します。

希望価格を3億点、と決めた日本クリニックの万田先生ががお相手探しを始めて3ヶ月後に、譲渡先のお相手が見つかりました。

お相手は、現在は勤務医として勤めており、開業を検討している西山先生(仮名)です。

西山先生は、患者さんが定着するまで赤字経営のリスクがある「新規開業」よりも、30年にわたり地域の患者さんから支持されてきたクリニックを受け継ぐ「承継開業」でスムーズなスタートを切りたいと考え、医療法人日本クリニックを引き継ぐことを決意しました。(続く)


ここで疑問に浮かぶのが「西山先生はどのように資金を工面したのか」という点です。

勤務医である西山先生は、3億円を超える貯金など持ち合わせていません。しかし、西山先生は難なく医療法人日本クリニックの承継を実現致しました。

果たして、どのように日本クリニックを承継したのでしょうか?

クリニックの譲渡で用いられる手法とは?


クリニックの第三者承継(M&A)でよく使われる手法の一つが「役員退職金を用いた譲渡対価の支払い」です。

次の計算式(最終報酬月額×勤続年数×功績倍率3倍)を用いると、

【万田先生の最終月額役員報酬 250万円 × 30年 × 3倍 = 2億2,500万円】

という値が出てきます。この2億2,500万円は「役員退職慰労金の支払い」という形で、法人日本クリニックが持っている現金から万田先生に支払いを行いました。

つまり、譲受ける側の西山先生は【3億円から2億2,500万円を引いた7,500万円】を用意すればよいことになります。

残り7,500万円は、西山先生個人が銀行から借りるのではなく、承継した医療法人日本クリニックで借入を行うことにしました。

このように個人ではなく、法人を使ってお金を工面できる点も承継案件のメリットです。

「借入が新たに7,500万円であれば、新規開業と変わらないのでは?」と異議を唱える方もいらっしゃると思いますが、一時的な支出だけではなく、中長期的な展望を含めた検討をしなければなりません。


西山先生には算段がありました。

役員報酬を5年間だけ3,000万円から2,000万円に減額して、差額の1,000万円と純利益の1,000万円を返済に回し、わずか4年で7,500万円の借入を返済する計画を立てたのです。

詳細は割愛しますが、役員退職金を支給することは中長期的な税務メリットも享受することができ、4年以内の完済も実現可能です。

譲受から半年間、日本クリニックの万田先生に患者さんの引き継ぎ、そして近隣医療機関や地元医師会等への挨拶回りにも同行してもらい、すべての引き継ぎを完了しました。

承継前と変わらない患者数を維持することができ、西山先生は今現在、安心して万田先生から引き継いだ患者さんたちの診療に臨むことができています。


終わりに

以上、『クリニックの譲渡希望価格が高額に見える理由』 と 『譲渡希望価格は、必ずしも用意しなければならない金額ではない』というテーマでお届けしました。承継開業を、スムーズに開業を進める選択肢として、本記事を参考に検討いただければと思います。

病院・クリニックのM&Aを検討されている方は、同業界のM&Aに精通している専門家への相談をお薦めします。

M&Aの目的、検討ポイントは業界・業種によって異なります。病院・クリニックのM&Aに精通した専門チームがあなたの会社のM&Aをご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

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