新型コロナウイルスによってM&Aマーケットはどうなるか
⽬次
- 1. 強い打撃を受ける業界
- 2. 追い風もある
- 3. 買収戦略を実行するチャンス
- 3-1. 著者
この度の新型コロナウイルス感染拡大に際し、罹患された皆様および感染拡大により様々な影響を受けている皆様に心よりお見舞い申し上げると共に、一日も早い事態収束をお祈り申し上げます。
新型コロナウィルス感染症の世界的流行により、2020年4月現在も、人々の行動に制限がかかり経済活動に大きな影響を与えています。 私は2008年に日本M&Aセンターに参画以降、度々、景気の下降局面に直面し、その度に今自分に何ができるかを問い続けてきました。 入社直後の2008年9月、当時全米でも五指にはいる投資銀行であったリーマン・ブラザーズがサブプライムローンの大幅な値下がりにより経営破綻。それを機に、金融業界を中心に一気にリセッションに入り、投資は冷え込みました。その後浮き沈みを繰り返しながら経済活動が正常な状態に戻りつつあると感じていた矢先、2011年3月11日に東日本大震災が発生しました。
今回の新型コロナウィルスは、既に世界全体で290万人が感染しており死者は20万人を超えています。(2020年4月28日時点) 日本政府は緊急事態宣言を発令し、その対象地域は当初の7都道府県から今や全国へと拡がっています。
強い打撃を受ける業界
業界毎にみると、外出自粛により外食産業、海外渡航禁止等が強く影響する観光業、また部品製造を中国等の海外サプライヤーに依拠しているメーカーは強い打撃を受けており、当面の資金繰りと同時に、リストラによる人員削減も差し迫った課題になっています。今後はこのような業界にモノ、サービスを提供している業界、企業への影響も大きくなっていくでしょう。
このように実消費活動の低迷が大企業へと影響を及ぼす様子は今回の大きな特徴とも考えられ、リーマンショックのように金融機関が機能不全に陥った状況に比べれば、時間は多少かかっても回復基調になったときのスピードは相当早いと推察できます。 現状は感染防止のための行動制限による経済停滞であり、経済そのものに原因があって下降局面に入っている訳ではないからです。 その時には需要の爆発が起こり、経済が急回復することが見込まれます。
追い風もある
今後の感染者数の拡大は未知数ではありますが、業界自体が発展途上で成長余地のあるIT、AI、ロボティクス、バイオヘルスケア等の業界については引き続き資金ニーズも強くあります。 また、今回リモートワークが強制的に実施されたことによって多くの業界で業務効率化が図られており、遠隔でも従来と変わらず成果が出せると認識を改めている企業も多くあるでしょう。 個人においてもリモートワークが当然となったことで、自身のキャリアについて考え、働き方をシフトしたいと思う層が今後出てくることが予想されます。 それにより、生産性を重視した知識労働者を必要とする業界はもちろん、地方の優良企業においても優秀な人材を確保する機会が増えるはずです。
買収戦略を実行するチャンス
経済の急回復と、優秀な人材の流動性も上がる、という来たるべき時期に備えて、企業は今何をすべきか?
M&Aの観点で考えると、私は、余裕のある企業は、今まさに「買収戦略を実行するチャンスである」と考えています。 上に述べてきた通り、新型コロナウイルスは、時期に関して決して楽観視はできないものの、いずれ収束します。需要が回復する際、最大限の商機をつかめるよう、今から準備を進めておくことが重要です。 また、先行き不安により譲渡を検討される経営者様が増加しているのも事実です。実際、リーマン・ショックによる景気後退期間(2008~2010年)に買収戦略を実行し、その後更に大きく成長した企業の事例も多くあります。 一方で好況時よりも経営判断が難しい状況ですから、やみくもなM&A実行は非常に危険であり、事前シュミレーション等の綿密な計画が必要となります。