日本M&AセンターASEANレポート (2)高い経済成長力を誇るベトナム
⽬次
- 1. 安価な労働力を武器にした高い成長力
- 2. 地政学的にも高いポテンシャル
- 3. M&Aで有力企業への投資が可能
- 4. 業界初『中堅・中小企業向け』ASEAN M&Aを解説した書籍
- 4-1. 著者
日本M&Aセンターは2020年2月、ベトナム南部の商業都市ホーチミンに海外3拠点目となるベトナム現地法人を開設しました。ASEANではインドネシア、フィリピンに次ぐ人口規模を持ち、平均年齢も若く、長期的に高い経済成長力が見込まれています。コロナ禍で世界各国がマイナス成長となるなかでも、プラス成長を記録するベトナムの経済成長力は魅力的です。
安価な労働力を武器にした高い成長力
首都ハノイと商業都市ホーチミンの二大都市は至る所でオートバイが走り、高層マンションとショッピングセンターを合わせた複合施設が立ち並びます。戦禍にも見舞われた国の近代化を実現させたのが、1986年に導入したドイモイ(刷新)政策です。社会主義体制を維持しながら、中国のように経済的には資本主義を導入して、外国資本を取り入れて低成長時代から経済を立て直しました。 ベトナムの強みは何といっても若い労働力と廉価な人件費にあります。21世紀に「世界の工場」となった中国とは陸続きで、中国の人件費高騰を受けて生産拠点を別にも設ける「チャイナプラスワン」の代表格となっています。誘致した外国企業が現地生産した製品を海外に回して、輸出主導の経済運営を徹底しました。巨大化した国有企業の民営化にも取り組み、高い経済成長を維持してきました。ほかのASEANと比べて、近代化へのスタートが遅れた分、成長スピードの速さを証明しました。
地政学的にも高いポテンシャル
ベトナムは南北に細長く、メコン川流域の河口に位置します。中国、ラオス、カンボジアと面し、海外投資などで整備したインフラで、円滑なヒト、モノの移動も実現しました。リスクヘッジとなったチャイナプラスワンにともなう工場誘致に加え、ラオス国境にはラオバオ経済特区を設置。開発も進んでいます。ホーチミンからカンボジアまでは陸路で2時間程度と、国をまたいだビジネスも盛んで、ラオスやミャンマーなど発展途上の新興市場への水平展開も可能となっています。
ただ課題がないわけではありません。企業は社会主義体制と経済活動のバランス感覚を求められることです。そのため、非効率な国有企業も多く、大企業の株式民営化も道半ば。行政手続きの運用の不透明さなど官僚主導の弊害も多く残っています。
M&Aで有力企業への投資が可能
コロナ前のベトナムのM&A市場は年間300~400件が行われ、外資によるベトナム国内企業の買収は6~7割を占めました。国別では、日本からの投資件数が一番多く、レコフデータによると、2019年は33件で案件規模は平均13億円でした。日本の中堅・中小企業がM&Aするサイズとしては適格なサイズ感といえます。民営企業の歴史自体が浅く、産業の集積化が進んでいない現状があります。裏を返せば企業規模に関わらず、将来性のある企業が揃っています。日本の中堅・中小企業が現地のリーディングカンパニーに参画できるチャンスも広がっているのです。ベトナムの伸び盛りな若い経営陣に、日本からの資本や技術を注入して、成長を加速させるM&Aも十分に可能です。 国営企業の売却案件はベトナム政府の切り札と言われます。産業の近代化と企業運営の効率化、財政資金の調達などに役立つため、将来的に毎年数件のペースでM&Aが行われています。比較的大型のM&Aを検討する場合は特に注目のマーケットとなっています。
業界初『中堅・中小企業向け』ASEAN M&Aを解説した書籍
日本M&Aセンターは、中堅・中小企業経営層を対象に、東南アジア(ASEAN)でのM&Aという「成長戦略」の成功事例を紹介しながらノウハウを示す書籍『ASEAN M&A時代の幕開け 中堅・中小企業の成長戦略を描く』を発刊しました。本書は、堅苦しい大型海外M&Aの専門書が中心であったこれまでの海外M&Aに関する書籍と異なり、ストーリー形式の事例や実際にM&Aで海外進出した企業のインタビューを取り入れ読みやすさを重視し、“M&Aによる海外進出”をより身近に感じられる内容となっています。
日本M&AセンターがASEAN M&Aのノウハウを紹介
書籍『ASEAN M&A時代の幕開け 中堅・中小企業の成長戦略を描く』の詳細はこちら