日本M&AセンターASEANレポート (2)高い経済成長力を誇るベトナム

海外M&A
更新日:

⽬次

[非表示]

日本M&Aセンターは2020年2月、ベトナム南部の商業都市ホーチミンに海外3拠点目となるベトナム現地法人を開設しました。ASEANではインドネシア、フィリピンに次ぐ人口規模を持ち、平均年齢も若く、長期的に高い経済成長力が見込まれています。コロナ禍で世界各国がマイナス成長となるなかでも、プラス成長を記録するベトナムの経済成長力は魅力的です。

安価な労働力を武器にした高い成長力

首都ハノイと商業都市ホーチミンの二大都市は至る所でオートバイが走り、高層マンションとショッピングセンターを合わせた複合施設が立ち並びます。戦禍にも見舞われた国の近代化を実現させたのが、1986年に導入したドイモイ(刷新)政策です。社会主義体制を維持しながら、中国のように経済的には資本主義を導入して、外国資本を取り入れて低成長時代から経済を立て直しました。 ベトナムの強みは何といっても若い労働力と廉価な人件費にあります。21世紀に「世界の工場」となった中国とは陸続きで、中国の人件費高騰を受けて生産拠点を別にも設ける「チャイナプラスワン」の代表格となっています。誘致した外国企業が現地生産した製品を海外に回して、輸出主導の経済運営を徹底しました。巨大化した国有企業の民営化にも取り組み、高い経済成長を維持してきました。ほかのASEANと比べて、近代化へのスタートが遅れた分、成長スピードの速さを証明しました。

地政学的にも高いポテンシャル

ベトナムは南北に細長く、メコン川流域の河口に位置します。中国、ラオス、カンボジアと面し、海外投資などで整備したインフラで、円滑なヒト、モノの移動も実現しました。リスクヘッジとなったチャイナプラスワンにともなう工場誘致に加え、ラオス国境にはラオバオ経済特区を設置。開発も進んでいます。ホーチミンからカンボジアまでは陸路で2時間程度と、国をまたいだビジネスも盛んで、ラオスやミャンマーなど発展途上の新興市場への水平展開も可能となっています。

ただ課題がないわけではありません。企業は社会主義体制と経済活動のバランス感覚を求められることです。そのため、非効率な国有企業も多く、大企業の株式民営化も道半ば。行政手続きの運用の不透明さなど官僚主導の弊害も多く残っています。

M&Aで有力企業への投資が可能

コロナ前のベトナムのM&A市場は年間300~400件が行われ、外資によるベトナム国内企業の買収は6~7割を占めました。国別では、日本からの投資件数が一番多く、レコフデータによると、2019年は33件で案件規模は平均13億円でした。日本の中堅・中小企業がM&Aするサイズとしては適格なサイズ感といえます。民営企業の歴史自体が浅く、産業の集積化が進んでいない現状があります。裏を返せば企業規模に関わらず、将来性のある企業が揃っています。日本の中堅・中小企業が現地のリーディングカンパニーに参画できるチャンスも広がっているのです。ベトナムの伸び盛りな若い経営陣に、日本からの資本や技術を注入して、成長を加速させるM&Aも十分に可能です。 国営企業の売却案件はベトナム政府の切り札と言われます。産業の近代化と企業運営の効率化、財政資金の調達などに役立つため、将来的に毎年数件のペースでM&Aが行われています。比較的大型のM&Aを検討する場合は特に注目のマーケットとなっています。

業界初『中堅・中小企業向け』ASEAN M&Aを解説した書籍

日本M&Aセンターは、中堅・中小企業経営層を対象に、東南アジア(ASEAN)でのM&Aという「成長戦略」の成功事例を紹介しながらノウハウを示す書籍『ASEAN M&A時代の幕開け 中堅・中小企業の成長戦略を描く』を発刊しました。本書は、堅苦しい大型海外M&Aの専門書が中心であったこれまでの海外M&Aに関する書籍と異なり、ストーリー形式の事例や実際にM&Aで海外進出した企業のインタビューを取り入れ読みやすさを重視し、“M&Aによる海外進出”をより身近に感じられる内容となっています。

日本M&Aセンター ASEAN M&A 書籍

日本M&AセンターがASEAN M&Aのノウハウを紹介
書籍『ASEAN M&A時代の幕開け 中堅・中小企業の成長戦略を描く』の詳細はこちら

■書籍『ASEAN M&A時代の幕開け 中堅・中小企業の成長戦略を描く』

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

この記事に関連するタグ

「ASEAN・クロスボーダーM&A・書籍・海外M&A」に関連するコラム

日本M&AセンターASEANレポート (1)アジアを代表する金融都市シンガポール

海外M&A
日本M&AセンターASEANレポート (1)アジアを代表する金融都市シンガポール

中堅・中小企業のM&Aを支援し、企業の存続と発展に貢献してきた日本M&Aセンターは2016年にシンガポールに初の海外拠点を設け、本格的に海外のM&A業務を展開しています。2021年9月時点で、海外拠点はASEANの4か国(シンガポール、インドネシア、ベトナム、マレーシア)に広げ、成約数や売り手企業の案件数も増加しています。日本企業による全体のM&Aの内訳でも、2割程度が海外案件のクロスボーダーとな

中堅・中小企業こそ、M&AによってASEANに進出するべき理由

海外M&A
中堅・中小企業こそ、M&AによってASEANに進出するべき理由

日本国内経済の長期停滞が危惧される中、日本の経営者は海外市場、特に成長著しいASEANに目を向けていかなくてはならない時代となりました。中堅・中小企業がASEANの国々に事業を展開する際に有効な戦略がクロスボーダーM&Aです。日本M&AセンターがASEANM&Aのノウハウを紹介書籍『ASEANM&A時代の幕開け中堅・中小企業の成長戦略を描く』の詳細はこちら中堅・中小企業こそ、M&AによってASEA

【業界初】中堅・中小企業向け 海外M&Aをやさしく解説する書籍を発刊

海外M&A
【業界初】中堅・中小企業向け 海外M&Aをやさしく解説する書籍を発刊

日本M&Aセンター海外事業部マレーシア駐在員事務所所長の尾島です。この12月、M&A業界初となる「中堅・中小企業向け」海外M&Aのノウハウを詰め込んだ書籍「ASEANM&Aの幕開け-中堅・中小企業の成長戦略を描く-」を上梓します。日本国内経済の長期停滞が危惧される中、日本の経営者は海外市場、特に成長著しいASEANに目を向けていかなくてはならない時代となりました。日本M&Aセンターは、中堅・中小企

マレーシアのM&A事情や女性の働き方は?現地M&Aコンサルタントにインタビュー!

広報室だより
マレーシアのM&A事情や女性の働き方は?現地M&Aコンサルタントにインタビュー!

日本M&Aセンターでは、クロスボーダーM&Aの支援強化に向けて、ASEAN地域に拠点を設けています。今回は、マレーシア現地法人NihonM&ACenterMalaysiaSdn.Bhd.でM&Aコンサルタントとして活躍するDaphnieOngさんに、入社の経緯や今後の目標をインタビューしました!プロフィールダフィニーオンさん(写真中央)2020年2月入社。M&Aコンサルタントとして日本とマレーシア

海外M&Aでは現地特有の論点に注意 ~会計~

海外M&A
海外M&Aでは現地特有の論点に注意 ~会計~

海外M&AではM&Aの対象となりうる企業が海外に所在していることから、文化や言語、宗教にはじまり、準拠するルールや実務慣行等も日本とは異なります。すなわち、会社法や労働法、税法、会計基準、ビジネス慣習等の違いを把握したうえで、海外M&Aを検討する必要があります。そこで、今回は海外M&A、特にASEAN(東南アジア諸国連合)域内におけるM&Aを検討する上で注意すべき事項の一部を紹介したいと思います。

グローバルなタックスプランニングの基本①外国子会社配当益金不算入制度 活用のすすめ

海外M&A
グローバルなタックスプランニングの基本①外国子会社配当益金不算入制度 活用のすすめ

海外子会社を有する会社が活用できるタックスプランニング手法のひとつ「外国子会社配当益金不算入制度」をご紹介します!(※本記事は2021年12月に執筆されました。)そのほか海外のM&A情報はこちらから海外の子会社が稼ぐ方がグループ全体の税率が下がる?日本は世界でも法人税率が高い国のひとつとして有名です。現在、日本で活動する会社のもうけに対してかかる税金の税率は中小企業の場合で約34%(法人税・地方税

「ASEAN・クロスボーダーM&A・書籍・海外M&A」に関連するM&Aニュース

ルノー、電気自動車(EV)のバッテリーの設計と製造において2社と提携

RenaultGroup(フランス、ルノー)は、電気自動車のバッテリーの設計と製造において、フランスのVerkor(フランス、ヴェルコール)とEnvisionAESC(神奈川県座間市、エンビジョンAESCグループ)の2社と提携を行うことを発表した。ルノーは、125の国々で、乗用、商用モデルや様々な仕様の自動車モデルを展開している。ヴェルコールは、上昇するEVと定置型電力貯蔵の需要に対応するため、南

マーチャント・バンカーズ、大手暗号資産交換所運営会社IDCM社と資本業務提携へ

マーチャント・バンカーズ株式会社(3121)は、IDCMGlobalLimited(セーシェル共和国・マエー島、IDCM)と資本提携、および全世界での暗号資産関連業務での業務提携に関するMOUを締結することを決定した。マーチャント・バンカーズは、国内および海外の企業・不動産への投資業務およびM&Aのアドバイス、不動産の売買・仲介・賃貸および管理業務、宿泊施設・飲食施設およびボウリング場等の運営・管

米ベインキャピタル、ティーガイアへのTOBが成立

米投資ファンドのベインキャピタルによる株式会社BCJ-82-1を通じた、株式会社ティーガイア(3738)への公開買付け(TOB)が2024年11月20日をもって終了した。応募株券等の総数(11,718,929株)が買付予定数の下限(7,076,300株)以上となったため成立している。また、ティーガイアは現在、東京証券取引所プライム市場に上場しているが、所定の手続を経て、上場廃止となる見込み。本公開

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース