「M&Aの舞台裏~真実の物語」がスタート
⽬次
- 1. 業績好調なIT企業が事業譲渡を決めた理由
- 2. M&Aで異業種を選んだ理由
- 3. 事業譲渡から1年、事業環境の変化は
- 3-1. 著者
日本M&Aセンター業種特化事業部が手掛けたM&Aの企業経営者に聞く動画コンテンツ「M&Aの舞台裏~真実の物語~」が2021年9月にスタートしました。業績好調だったIT企業「スタイルズ」は2020年にM&Aによって半導体商社「菱洋エレクトロ」グループにジョインしました。創業者である、スタイルズの梶原稔尚代表取締役社長をゲストに迎え、決断した背景やM&A後の経営環境の変化について、日本M&Aセンター取締役の渡部恒郎と案件に携わったIT業界支援室長の竹葉聖がお話を伺いました。
業績好調なIT企業が事業譲渡を決めた理由
大学時代に没頭した役者業の傍ら、エンジニアとしてアルバイトをしていた梶原社長は2003年にスタイルズを創業しました。業績を順調に伸ばしながら経営者として黒字経営を貫き、会社を成長させてきました。当初はM&Aの買い手として日本M&Aセンターに相談。ただ当時梶原社長の年齢は50代後半。「59、60歳で事業承継を考えようになって、株式の相続などで家族に迷惑を掛けてしまう」と創業者特有の心配事から事業譲渡に考えが変わったそうです。「創業者として株を持ち続ける考えはなく、共同創業者も同じ意向だった。家族も事業承継に興味はなさそうだった」と振り返ります。金額的な条件は特になく、M&Aによって「どうやってM&A先の企業の手助けができるか」を考え、「異業種であるということだけが条件だった」と話します。決断において「自分がM&Aを決断する上で(自社の)業績は意識してなかった。ただ業績が良ければ良い買い手は見つかりやすいだろうと思っていた」と話します。
M&Aで異業種を選んだ理由
IT業界はM&A市場でも特に件数が多く、同業種のM&Aが圧倒的多数を占めます。梶原社長は同一業種の規模獲得ではなく、「これからの日本のデジタル化を考えた時に自社の技術者が事業会社の成長にコミットしていきたい」との願いがありました。政府の成長戦略にも盛り込まれ、DXは経済界のキーワードにもなっています。ただ梶原社長は「デジタル化を内製化するためには技術者の採用から教育、エンジニア組織の立ち上げなど自社ではとても大変。技量のあるIT企業をM&Aによって内部に取り込みことは大きな一歩になる」と経営者に再考を呼び掛けます。
事業譲渡から1年、事業環境の変化は
M&A後も親会社からトップを任せられている梶原社長は「既存事業は変わらず好調で、従業員はオーナー企業から子会社に変わっても大きな変化はないと思う」と話します。重要なことは「従業員に将来性があって、実力を活かしていける場を作りだすことが一番」と明言します。M&Aにより、株式を手放した後も変わらず、経営者という立場で親会社との新規事業の立ち上げを担います。「新しい事業を考えることが仕事で楽しい。自分にできることがある限りは仕事を続けていきたい」と変わらぬ情熱で仕事に向き合っています。