コロナ禍の事業承継を支える地方銀行の取り組み ――大分銀行×日本M&Aセンター WEBセミナー
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経営者は孤独と言われますが、後継者問題も他人には相談しづらいテーマの一つです。現在、企業の後継者不在問題は深刻です。日本全体で中小企業・小規模事業者の2025年には70歳以上の経営者が約245万人になると言われています。後継者の高齢化、代替わりが本格的になってくるにもかかわらず、現在の後継者不足は全国平均で66%、3社に2社は跡継ぎがいないというのが現状です(平成28年度総務省「個人企業経済調査」、平成28年度株式会社帝国データバンクの企業概要ファイルから推計)。
そうした深刻な状況のなか、M&Aという手法を通して経営のバトンをしっかりとつなぎ、事業承継に成功している企業も多くあります。そしてその相談窓口の一つとなっているのが、地元の銀行です。 6月22日、株式会社大分銀行主催(日本M&Aセンター共催)で事業承継セミナーをWEBで開催しました。日本M&Aセンターは2020年6月30日に大分オフィスを開設。コロナ禍で成長や存続の危機に直面する地域企業をサポートしています。本セミナーでは、大分県の事業承継・M&Aの実情をお伝えするとともに、事業承継解決の選択肢の一つとしてのM&Aをわかりやすくお伝えしています。これは、他県の企業の方にも共通する現実です。
M&Aによる事業承継で会社の存続と発展を図る
最初に、日本M&Aセンター 大分事務所 オフィス・リーダーの仲田理が、大分県の事業承継およびM&Aの実態を説明しました。
「跡継ぎ不在」に加えて、技術革新や競合の増加、人口減少などによって「全体的にマーケットが縮小」することで先行きへの不安が広がっています。このダブルパンチの解決策として、M&Aによる事業承継で会社の存続と発展を図っていこうとする会社が大分県内にも多くいらっしゃいます。
今回のコロナ禍によって経営者の方の意思決定に3つの変化が起きています。
- 事業承継の問題が待ったなしに
- 事業承継の方向転換(親族承継から、M&Aを通してより大きな企業のグループに入って発展を目指す)
- 先行き不安による廃業かM&Aかの選択 これらの決断が前倒しになったことで、結果的にM&Aを選択するケースが増えているのです。
M&Aはご縁とタイミング。早めのスタートが肝心
そもそも中堅・中小企業の経営者の皆様は、下記のような悩みを抱えていらっしゃいます。
- 事業承継しなければいけないが、子供に大変な思いはさせたくない(親族承継が当たり前ではない時代に)
- 一人で経営することへの不安。大手企業の傘下に入って、会社を成長させたい
- 先行きの不透明感。1年先どころか、3か月先も見通すことが難しい
- 資金繰りがタイトになり返済が長期化
- 事業再編の動きが加速。いつどの波に乗ればいいか
- 長引くコロナ禍に疲れた。廃業、閉店を検討している これまで抱えてきた悩みがコロナによって顕在化、または不安感が増しています。
現在の経営の現状をまとめると、コロナ禍という社会情勢の大変化を受けてM&Aによる事業承継が加速しています。とりわけ、当社でお手伝いした大分県のM&Aは、県外の隣接業種や同業種が多い傾向です。しかしながら、M&Aはご縁とタイミングです。「今はまだ早い」と思う方がいらっしゃいますが、早めのスタートが肝心です。早めのスタートが、将来の選択肢を広げてくれます。
コロナで事業承継M&Aが「真剣に検討しなければならないもの」に
セミナーの最後に、主催者の株式会社大分銀行 法人営業支援部の石井秀典様より、大分銀行の事業承継・M&A支援内容についてご説明いただきました。
【石井氏】これまで事業承継M&Aというのは、漠然とした将来に対する不安への解決策の一つという認識だったのが、コロナ禍によって真剣に検討しなければならないものと考える経営者の方が増えたという印象です。今後も当行への相談は増えていくと予測され、それを全力で支えるべく人員を整えています。
事業承継の方向性についても、株価対策をどうすればいいか、親族内承継の進め方、雇用維持のために外部に事業を委ねたいなど、さまざまな悩みを抱えていらっしゃると思います。 銀行は、地域の活性化、事業や雇用を維持しながら会社を継続させることを最大限のポリシーとして活動を行っています。その中でも、M&Aによる事業承継は今後の経済状況をみても避けて通れない部分だと思っています。今後も、一番に力を入れて企業の相談に応えていきます。