中小M&A支援機関の登録制度スタート
⽬次
- 1. 透明性と公平性ある中小M&A市場に向けて
- 2. 情報提供受付窓口も設置
- 2-1. 著者
中小企業庁による中小M&A支援機関の登録制度が早ければ2021年9月にも運用が始まります。登録制度は中小企業におけるM&Aの更なる促進のため策定された「中小M&Aガイドライン」を遵守する支援機関を登録して公表することで、第三者への事業承継を検討する経営者にとってM&A支援機関を選ぶための新たな基準となります。登録機関によるサービス提供の費用は現在、運用中の事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)の対象となり、より円滑なM&Aの推進につながり、中小企業の事業承継の進展が期待できます。また中小M&A市場の実態把握と健全な市場環境の整備にも寄与します。
透明性と公平性ある中小M&A市場に向けて
登録制度は中小企業、小規模事業者の事業承継や生産性向上を図るため、官民が連携して2021年から今後5年間で取り組む内容をまとめた「中小M&A推進計画」に盛り込まれました。登録制度の対象はM&A専門業者(仲介業者、FA)や金融機関、インターネットを介してマッチングを行うM&Aプラットフォーマーや個人事業主など多岐にわたります。中小企業のM&Aを担う事業者数は年々増加しており、中小企業庁によると2020年末には約370あるとされています。
登録するための要件として、事業者等はM&Aを進める上で基本的な手続きや手数料を事前提示するなどの行動指針を提示した「中小M&Aガイドライン」の遵守を宣言し、自社のホームページに明記することが必要です。加えてガイドライン遵守の誓約書を中小企業庁に提出します。ガイドライン遵守が制度化されることによって、違反事業者への登録取り消しも可能となり、市場の透明性と公正性の確保につながります。 M&Aは企業の重大な経営判断となるため企業とM&A支援機関とが秘密保持契約を結ぶことが多くあり、未上場企業ではM&A成約後に開示しないこともあるため、中小M&A市場の実態把握が難しい面がありました。ただ今回の登録制度によって登録事業者はM&Aの実績報告も求められるため、全体の成約件数や企業負担の費用などが今後、数値化できるようになります。中小企業の経営者がM&Aを経営手段の一つとしてより安心して選択できる環境となります。
情報提供受付窓口も設置
登録機関は経済産業省または中小企業庁のホームページ上で会社概要とともに一覧として公表されます。M&Aを検討する中小企業の経営者にとってはガイドラインを遵守する支援機関を選ぶことができるようになり、M&A支援機関に対する信頼感の醸成も図られます。登録制度に合わせてM&A支援機関の支援に関する情報提供受付窓口も設置され、健全な市場環境の整備にもつながります。