シナジー効果とは?シナジーの種類、方法をわかりやすく解説

経営・ビジネス
更新日:

グーグルやアマゾンなどが創業から20年程度で世界的企業に成長したのは、「足し算方式」の経営でなく「掛け算方式」の経営を効率よく行ったためと言われています。

企業経営において、この「掛け算方式」を生み出す核となるエンジンが「シナジー」です。本記事では、シナジーの概要、シナジーを創出する方法などをご紹介します。

シナジーとは

ビジネスシーンにおける「シナジー」とは、複数の要素や力を組み合わせることで、互いに補完し合い、相乗効果を生み出すことを指します。つまり、個々の要素や力が単独で持つよりも、組み合わせることでより大きな成果や効果を生み出すことを目指す考え方です。

シナジーは企業間のほか、組織内の部署やチーム間の連携や協力によって生まれることが一般的です。例えば、異なる部署や専門分野のメンバーが協力し、それぞれの専門知識やスキルを活かして共同プロジェクトを進めることで、より効率的かつ創造的な解決策や成果を生み出すことができます。

シナジーの実現には、コミュニケーションや協力、相互理解が重要です。メンバー間の意見交換やアイデアの共有、情報の共有が円滑に行われることで、シナジー効果を最大化することができます。

シナジーの具体的な例としては、異なる製品やサービスを組み合わせて新たな付加価値を生み出すことや、異なる企業が提携して相互に利益を追求することが挙げられます。また、チームメンバーがそれぞれの得意分野で協力し、より効果的なプロジェクトの進行や問題解決を行うこともシナジーの一例です。

シナジーは、個々の要素や力を最大限に活用するだけでなく、相手の強みや特徴を理解し、協力することでより良い結果を生み出す考え方です。ビジネスシーンにおいては、シナジーを生み出すことで競争力を高めることができるため、積極的に取り組むことが重要です。

この記事のポイント

  • シナジーの種類には、事業シナジー、財務シナジー、組織シナジーがあり、各種の統合や提携を通じて相互に利益を追求することが重要。
  • シナジーを生み出す方法にはM&A、業務提携、多角化戦略、グループ経営があり、これらを活用することで企業の競争力や生産性が向上する。

⽬次

[非表示]

シナジーの反対語は「アナジー」

シナジーの反対語は「アナジー(anergy)」です。「負のシナジー」とも言われ、2つ以上の要素が協力することで、個々の要素が独立して行動した場合に比べて効果がマイナスになる状況を指します。

シナジーの種類


ビジネスシーンにおけるシナジーのうち、代表的なシナジーをご紹介します。

事業シナジー

事業シナジーとは、異なる事業や企業が統合することで、相乗効果を生み出すことを指します。

例えば、ある企業が他の企業を買収することで、製品やサービスのラインナップを拡大し、市場シェアを増やすことができます。また、技術や製造能力、販売網などの資源を統合することで、コスト削減や効率化を図ることもできます。事業シナジーの実現には、統合計画の策定や組織間の連携が重要です。

財務シナジー

財務シナジーとは、企業の統合や合併によって生じる財務的な利益を指します。

例えば、統合によって生じるコスト削減や効率化により、企業の利益やキャッシュフローが増加することがあります。また、統合によって生じる規模の拡大やリスクの分散により、企業の信用力や資金調達の能力が向上することもあります。財務シナジーの実現には、財務戦略の策定や資金管理の最適化が重要です。

組織シナジー

組織シナジーとは、組織内の部署やチームが協力し、相乗効果を生み出すことを指します。

例えば、異なる部署や専門分野のメンバーが連携してプロジェクトを進めることで、より効果的な意思決定や問題解決が可能になります。

また、組織内での情報共有やコミュニケーションの強化により、情報の抜け漏れや誤解を防ぎ、効率的な業務遂行ができるようになります。組織シナジーの実現には、組織文化の統一やチームビルディングの促進が重要です。

これらのシナジーは、事業統合や合併などの組織変革の際に重要な役割を果たします。それぞれのシナジーが相互に連携し、組織全体の成果や競争力を向上させることが期待されます。

シナジーがもたらす効果


シナジーを創出することで、具体的にどのような効果をもたらすのでしょうか。期待できる主な効果は、以下の通りです。

生産性の向上

異なる部署やチームが協力し、情報やリソースを共有することで、作業の効率や生産性が向上します。例えば、製造部門と物流部門が連携し、生産計画と物流計画を調整することで、在庫の最適化や生産ラインのスムーズな稼働が可能になります。

コスト削減

シナジーによって、重複する業務やリソースを削減することができます。例えば、統合や合併によって、複数の企業が持つ同様の機能や部門を統合することで、人員や設備の削減が可能になります。これにより、コスト削減や効率化が図れます。

新たなビジネスチャンスの創出

異なる企業や部門が組み合わさることで、新たなビジネスチャンスが生まれることがあります。例えば、異なる製品やサービスを組み合わせて新たな付加価値を生み出すことができます。また、異なる企業が提携して相互に市場や顧客を拡大することも可能です。

競争力の向上

シナジーによって、企業の競争力が向上します。異なる部署やチームが協力し、各自の専門知識やスキルを活かして共同プロジェクトを進めることで、より効果的な戦略や解決策が生まれます。また、統合や合併によって企業の規模やリソースが拡大することで、競争力が強化されます。

顧客満足度の向上

シナジーによって、顧客へのサービスや製品の品質や提供方法が向上します。異なる部署やチームが連携して顧客のニーズに応えることができるため、顧客満足度が向上し、顧客の忠誠心や口コミ効果が高まります。

これらの効果は、シナジーによって異なる要素や力が組み合わさることで生じます。組織内や組織間の協力や連携を通じて、シナジーを最大限に活用することが重要です。

シナジーを生み出すための4つの方法


一般的にシナジーを生み出す方法として、M&Aを含め主な4つをご紹介します。

M&A

シナジー効果を生み出すためには、企業の内外にある要素、強みや特徴を、現状とは異なる形で組み合わせる必要があります。
このような、組織再編を行うのに最も適しているのがM&Aです。

M&Aによる組織変革や拡大は、現在多くの企業が事業を成長させる目的で戦略的に取り組んでいます。楽天によるM&A事例を見ていきましょう。

楽天は2003年に「旅の窓口」をM&Aによって買収し、楽天トラベルとして自社の旅行部門と統合しました。これにより、楽天ポイントが使える巨大な旅行サイト(楽天トラベル)が誕生します。この楽天トラベルの誕生により、旅行代金として楽天ポイントが使えるようになった結果、「旅の窓口」単体で営業していたときよりも競争力が上がり、多くの楽天会員が楽天トラベルを利用するようになりました。

一方、楽天側も楽天ポイントが旅行に使えるようになったことで、ポイントプログラムの価値自体が上がり、会員数をさらに増やすことに成功しました。

業務提携

業務提携とは、提携相手の資源を活用して事業の成長を図る施策のことをいいます。

業務提携にはいくつかの方法がありますが、その中でもシナジー効果がとくに生まれやすい提携が「販売提携」と「技術提携」の2つです。

販売提携とは、製品の販売やサービスの提供を、提携先に委託する業務提携のことをいいます。ベンチャー企業や中小企業のように自社の販売サービス網が整備されていない企業にとっては、自社製品を販売するための方法として販売提携は有効な手段です。

なお、販売提携には、提携先がメーカーから商品を仕入れて顧客に販売する「販売店契約」と、提携先がメーカーの代理人として商品を顧客に販売する「代理店契約」などがあります。

技術提携とは、技術や特許を持っている会社が他社に対してそれらを開放し、技術開発や製造・販売などに生かすための業務提携のことをいいます。

通常は、両社の間でライセンス契約や共同開発契約などを結んだうえで、技術提携が行われます。

多角化戦略

多角化戦略とは、既存の製品や現在自社製品を展開しているマーケットとは別の場所で、新たに事業展開をしていく戦略のことをいいます。

新分野へ進出するのはリスクが高いものの、既存の分野事業のみを継続している場合、万が一何かあった場合のリスクヘッジにはなりません。多角化戦略は、失敗するリスクはそれなりに高い分だけ、リターンもそれに応じて大きい戦略といえます。

なお、多角化戦略はさらに細かく、「水平型多角化戦略」「垂直型多角化戦略」「集中型多角化戦略」「集成型(コングロマリット型)多角化戦略」に分類できます。

多角化戦略の分類 概要
水平型多角化戦略 同一業界内で既存の事業とは異なる製品やサービスを提供することを目指す戦略です。

例えば、自動車メーカーが自社ブランドの自動車に加えて、電気自動車や自動車関連のサービスを展開することが水平型多角化の一例です。
垂直型多角化戦略 自社の供給チェーンや価値連鎖に沿って、上流や下流の段階での事業展開を行う戦略です。

例えば、農業企業が自社で農産物の生産から加工、販売までを一貫して行うことが垂直型多角化の一例です。
集中型多角化戦略 既存の事業領域内で、市場や顧客のニーズに合わせた新たな製品やサービスを提供する戦略です。

例えば、飲料メーカーが健康飲料やスポーツドリンクなど、既存の飲料市場における特定のセグメントに集中して展開することが集中型多角化の一例です。
集成型(コングロマリット型)多角化戦略 既存の事業とは異なる業界や市場に進出し、多様な製品やサービスを提供する戦略です。

例えば、家電メーカーが家電製品の製造・販売だけでなく、不動産や金融などの異なる業界にも進出することが集成型多角化の一例です。

詳しくは関連記事をご覧ください。

グループ経営

グループ経営は、組織内の横断的な連携や協力を強化することで、異なる事業や部門の相乗効果を最大化する手法です。リソースの最適化,マーケットの拡大、技術やノウハウの共有などを通じて、グループ全体の成果や競争力を向上させることが期待されます。

終わりに

企業が目標とする成長を実現するためには、単なる足し算による積み上げ式ではなく、掛け算式に成長していくラインを目指さなければなりません。

本記事で紹介した企業事例のように、M&Aにはシナジーを生み出すための大きな力があるため、その力を必要なタイミングで上手く使いこなすことが求められます。

日本M&Aセンターでは、M&Aをはじめ様々な経営課題の解決に向けて専任チームを組成し、ご支援を行っています。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

この記事に関連するタグ

「シナジー効果・シナジー」に関連するコラム

【開催レポート】737名が列席!中部支社開設10周年記念式典 提携先へ伝える感謝の気持ち

広報室だより
【開催レポート】737名が列席!中部支社開設10周年記念式典 提携先へ伝える感謝の気持ち

日本M&Aセンター中部支社は、2013年4月1日に名古屋駅前にオフィスを構え、今年10周年を迎えました。2023年11月29日には、中部支社開設10周年記念式典を名古屋マリオットアソシアホテルにて開催しました。提携先の金融機関や会計事務所などから737名の方が参加し、10年間の感謝の気持ちを伝えました。司会は元テレビ愛知アナウンサーの天野なな実さんが行い、会場は盛況のうちに終わりました。参加者から

【M&A成約式】 上場企業とのM&Aで生産力向上、メイドインジャパンの製品力で成長促進へ

広報室だより
【M&A成約式】 上場企業とのM&Aで生産力向上、メイドインジャパンの製品力で成長促進へ

「メイドインジャパンの製品を世界に発信したい」という思いが合致したM&Aとなりました。野菜調理器製造事業を行う株式会社ベンリナー(以下、ベンリナー、山口県岩国市)は、印刷品製造業を営む三光産業株式会社(以下、三光産業、東京都)と資本提携を結びました。両社は、2022年12月22日、広島県内のホテルにてM&A成約式を執り行いました。握手を交わす三光産業株式会社代表取締役社長執行役員石井正和氏(左)と

経営者やM&A支援機関が参加 実体験と学術的分析からM&Aを学ぶ

広報室だより
経営者やM&A支援機関が参加 実体験と学術的分析からM&Aを学ぶ

M&Aの魅力を伝える「M&ATOKAIEXPO2022」(中部経済新聞社主催)が2022年10月26日、名古屋市のウインクあいちで開催され、日本M&Aセンター名古屋支社が初出展しました。イベントには東海エリアに拠点を持つM&A支援機関など11社が参加し、セミナーや相談ブースを通じて、来場者に最新情報をお届けしました。日本M&Aセンターが担当したセミナーをご紹介します。M&A経験のある経営者が実体験

同業・異業種のM&Aで成長スピードを加速 グループ年商150億円を目指す西和物流の挑戦

広報室だより
同業・異業種のM&Aで成長スピードを加速 グループ年商150億円を目指す西和物流の挑戦

M&Aの経験豊富な経営者から経営哲学やM&Aの狙いを聞くインタビューコーナー「巧者に学ぶM&A戦略」が始まりました。初回は奈良県に本社を構える総合物流企業の西和グループです。これまで6度の同業・異業種のM&Aを実行し、グループを拡大させて成長を続けてきました。地元メディアや業界誌で注目企業に選定されるなど地域と業界の発展にも貢献されています。西和グループの中核企業である株式会社西和物流の萩原良介代

シナジー追求のための PMI取り組みの必要性

PMI
シナジー追求のための PMI取り組みの必要性

シナジーは自然体では得られないM&Aは「企業の成長」という目的を達成する手段だ。オーガニックグロース(自力成長)では成し得ないドラスティックな(レバレッジの利いた)成長を、両社(売り手企業と買い手企業)が実現していくのがM&Aと言える。そういった意味では、両社がM&A後のシナジー効果を得て初めて「M&Aの目的を成就した」と言えるものであって、書類上M&Aが成立したとしても、シナジー効果を実現或いは

事例にみるシナジー創出のポイント

M&A全般
事例にみるシナジー創出のポイント

シナジーは「創出」するものシナジーの実現を考える上でまず認識しなければならないことは、シナジーは買収を行えば自然に湧いて出てくるものではない、ということだ。シナジーは、買収企業が「創出」しなければならない。M&A戦略の策定から、買収価格の決定、買収後の事業計画の策定に至る一連のプロセスは全て買収企業が主導する。買収後は強力なリーダーシップを発揮し、対象会社と二人三脚で事業計画を実現していかなければ

「シナジー効果・シナジー」に関連するM&Aニュース

ミンカブ・ジ・インフォノイド、子会社間で吸収合併へ

株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド(4436)は、連結子会社であるCWSBrains株式会社(東京都港区)と、同じく連結子会社化した株式会社フロムワン(東京都中央区)を合併することを決定した。CWSBrainsを存続会社とし、フロムワンは消滅会社とする吸収合併方式。合併にあたり、フロムワン株主に対してCWSBrains普通株式1株を交付する。ミンカブ・ジ・インフォノイドは、投資家向けソーシャルメ

イワキ、住建情報センターよりヘルスケア事業を譲受へ

アステナホールディングス株式会社(8095)の完全子会社であるイワキ株式会社(東京都中央区)は、株式会社住建情報センター(神奈川県横浜市)より、ヘルスケア事業の譲り受けを決定した。アステナホールディングスは、グループ会社の経営管理などを行う持株会社。イワキは、一般用医薬品の販売、化粧品・食品原料の販売、医療機器の製造販売、体外診断用医薬品の製造販売を行っている。住建情報センターは、一般建設業、不動

ブロードバンドタワー、持分法適用関連会社エーアイスクエアの一部株式を譲渡へ

株式会社ブロードバンドタワー(3776)は、42.6%の議決権を持つ持分法適用関連会社である株式会社エーアイスクエア(東京都千代田区)の一部株式を、HEROZ株式会社(東京都港区)に譲渡することを決定した。譲渡後の議決権所有割合は、16.7%となる。ブロードバンドタワーは、インターネット業界を中心に多くの産業分野に携わる顧客に対し、データセンターサービス・クラウドサービス・ストレージソリューション

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース