鹿児島放送が事業承継・M&Aセミナーを開催 M&Aによる事業承継について解説

事業承継
更新日:
理想の買い手企業が見つかります。会社売却先シミュレーションM-Compass。シミュレーションする

⽬次

[非表示]

鹿児島県のテレビ局KKB鹿児島放送は2021年12月23日、地元の経営者向けに事業承継とM&Aを解説するセミナー「事業承継・M&Aセミナー 鹿児島企業の10年先の経営を考える」を開催しました。県内で高まる後継者不在率と休廃業数に対する解決策の一つである事業承継型M&Aをテーマにしたセミナーには約百人が参加しました。セミナーに先立って「ニッポンには、跡継ぎが足りない」と題した特別番組も放送され、M&Aによって事業承継した企業事例を交えて後継者不在問題について解説しました。KKB鹿児島放送は、特別番組とセミナー開催を通じて地域に密着したメディアとして地域活性化を目指し、積極的に事業承継とM&Aの情報を発信しています。

2社に1社が後継者不在 鹿児島県の後継者不在問題

セミナーの第一部では日本M&Aセンター 専務執行役員CCO 中村利江(出前館元社長)が鹿児島県内の事業承継問題の状況を解説しました。帝国データバンクの調査によると、2020年の鹿児島県内で廃業・解散を選択した企業数は、594社に上りました。その背景には後継者不在率が51.3% と、県内企業の2社に1社が後継者不在の要因があります。現状が続けば、県内で廃業見込み企業は3社に1社の17,577社となり、廃業によって89,962人の雇用が失われると、中小企業庁が試算しています。また、廃業見込みの企業の約6割は黒字の企業であり、黒字企業が廃業を選択することは鹿児島県、九州地方の経済にも大きな悪影響を与えます。こうした事態を避けるため、経営者が事業承継やM&Aについて情報を集めて、準備を進めることが重要だと呼び掛けました。

M&A経験者が赤裸々に語るM&A

宅配ポータルサイトを運営する出前館に事業譲渡された酒類の通販事業などを展開する鹿児島市の薩摩恵比寿堂(現出前館コミュニケーションズ)の元共同経営者である福元和行氏と経営幹部としてM&A後の統合プロセス(PMI)に尽力した藤根力氏が登壇し、M&Aで感じた想いや当時の対応を対談形式で赤裸々に語りました。

福元氏は、M&Aを決断した背景や心情面の変化、M&A後の会社の様子を中心に話しました。
会社では当初M&Aの予定はなく、当時出前館を経営していた後に買い手となる中村と出会ったことが契機となりました。福元氏は経営理念や会社の将来性、中村自身の人柄に共感し、M&Aで譲渡して従業員の未来を託すことが企業の成長につながると考えるようになったそうです。M&A直前に事業譲渡を止めようとした葛藤もあったと語り、譲渡後の会社について共同経営者や家族らと話し合い、悩み抜いた先に事業譲渡を決断した背景を伝えました。

買い手企業の適切な心構えと大きく揺れ動く売り手企業の経営者の心情に対応することがM&Aには必要です。M&Aでは、買い手企業が売り手企業を選ぶのではなく、買い手企業が売り手企業から選ばれないと成立しません。つまり買い手企業の経営者が譲渡先として相応しい人物であるか判断されることになります。中村は福元氏との面談には敬意と細心の注意を払い、覚悟を持って対応できたとうなずきます。複数のM&A経験からM&Aは順調に進むケースは少なく、売り手企業の経営者は家族も周囲の意見もあり、必ず途中で事業譲渡について迷うことがあると話しました。

M&A後の統合プロセスを支えた藤根氏は、譲渡後の苦労について話しました。
M&A直後は経営統合に不安しかなかったこと、出前館から経営幹部が派遣されることで薩摩恵比寿堂の良さが無くなってしまうのではないかと考えていたそうです。
しかしながら、出前館の経営幹部が半年間ほど鹿児島に常駐し、藤根氏をはじめ従業員とコミュニケーションを綿密に図ったことで、経営統合は順調に進みました。藤根氏はM&A後の経営プロセスは買い手・売り手それぞれのコミュニケーションが重要であると説明しました。

福元氏は対談の最後に、事業を継続させていく上で次の世代に引き継ぐ手段となるM&Aを選択肢として知っておくことが大切と語りました。福元氏もM&Aによって自身が経営する会社の事業や財務の状況を勉強することができたと言います。経営者にはM&Aを知り、M&Aと親族承継、従業員承継の三つからどの形の事業承継が適切かを考えてほしいと語りました。

M&Aを正しく知って経営戦略の選択肢を増やす

第2部では、日本M&Aセンターダイレクトマーケティング部部長の竹賀勇人が「正しく知って頂きたいM&A」と題して、経営者がM&Aの正しい知識を学ぶ重要性を伝えました。

講演では、M&Aを活用した事業承継や成長戦略を事例とともに説明。全国では66%、127万社が後継者不在となっており、M&Aによる第三者承継が増加していることを解説し、マイナスなイメージであったM&Aが、前向きなものに変わっている状況にも触れました。M&Aを実施することで売上高成長率や営業利益成長率が実施しない企業より、高い傾向があることを数字と共に解説しました。M&Aによる譲渡は、ビジネスモデルの刷新、人材確保、法律改正への対応にもつながり、未来に向けたビジネスモデルを獲得することができると説明しました。企業経営において、不足しがちなヒト・モノ・カネ・情報の経営の4要素において、M&Aによる譲渡によって、既存収益性の継続や大手リソースの活用、オーナーリスクの軽減などのメリットがあることを話しました。講演の最後には、M&Aについて正しく情報収集を行い、M&Aによるパートナー戦略を経営戦略の選択肢の一つとして知ることが重要と結びました。

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

この記事に関連するタグ

「後継者不在・M&A・譲渡企業」に関連するコラム

中小企業がM&Aを行う背景や目的とは?手法や成功のポイントをわかりやすく解説

M&A全般
中小企業がM&Aを行う背景や目的とは?手法や成功のポイントをわかりやすく解説

急速に高齢化が進み、2025年問題が目前に迫る中、中小企業によるM&Aの件数は増加傾向にあります。本記事では、中小企業のM&Aの現状とその目的、用いられる手法、中小企業のM&Aを成功に導くポイントについて紹介します。この記事のポイント中小企業のM&Aが増加傾向にある背景として、経営者の高齢化による「後継者不在問題」と、人口減少による「縮小する国内市場への対応」が挙げられる。中小企業がM&Aを選択す

会社の身売りと会社売却の違いとは?

M&A全般
会社の身売りと会社売却の違いとは?

新聞や経済ニュースなどで時折目にする「会社の身売り」という言葉は、会社売却とどのように違うのでしょうか。本記事では、身売りが指す意味合い、会社売却の概要についてご紹介します。日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様のM&A成約まで伴走します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。会社売却・事業承継のお

事業承継・引継ぎ補助金とは?中小企業庁が解説!

広報室だより
事業承継・引継ぎ補助金とは?中小企業庁が解説!

本記事では、事業承継・引継ぎ補助金の概要と、本補助金の制度運用を担う、中小企業庁財務課の高橋正樹課長補佐による解説(※)、最新の公募概要をご紹介します。※本記事は2021年6月30日に公開された内容を編集しています。役職等は取材当時の内容です。事業承継・引継ぎ補助金とは事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継や事業再編、事業統合を促進し、日本経済の活性化を図ることを目的とした補助金です。具体的には、事業

会社売却後どうなる?会社、社長、社員への影響を解説

M&A全般
会社売却後どうなる?会社、社長、社員への影響を解説

中小企業のオーナー経営者が会社売却を検討する際「売却した後、関係者に与える影響が一番気がかり」と考える人は少なくありません。本記事では、中小企業が会社売却をおこなう際、会社関係者、取引先などそれぞれのステークホルダーに与える影響、メリット、注意点についてご紹介します。この記事のポイント中小企業が会社売却を検討する際、売却後の関係者への影響が懸念される。売却後、会社は存続し、オーナー経営者は引き続き

【中小企業経営者 事業承継・M&A意識調査】8割超が後継者候補未定も、事業承継を「重視している」は1割超にとどまる

広報室だより
【中小企業経営者 事業承継・M&A意識調査】8割超が後継者候補未定も、事業承継を「重視している」は1割超にとどまる

日本M&Aセンターは、2022年11月に40代以上の中小企業経営者400名を対象に、各社の経営状況や事業承継、M&Aに関する意識調査を実施しました。◆調査結果サマリー調査の結果、後継者候補が決まっていない企業は87.5%と8割を超えていますが、「事業承継を重視している」企業はわずか12.5%、「後継者不在を課題と感じている」企業も13.5%にとどまりました。多くの中小企業が後継者不在にもかかわらず

【M&A成約式】 上場企業とのM&Aで生産力向上、メイドインジャパンの製品力で成長促進へ

広報室だより
【M&A成約式】 上場企業とのM&Aで生産力向上、メイドインジャパンの製品力で成長促進へ

「メイドインジャパンの製品を世界に発信したい」という思いが合致したM&Aとなりました。野菜調理器製造事業を行う株式会社ベンリナー(以下、ベンリナー、山口県岩国市)は、印刷品製造業を営む三光産業株式会社(以下、三光産業、東京都)と資本提携を結びました。両社は、2022年12月22日、広島県内のホテルにてM&A成約式を執り行いました。握手を交わす三光産業株式会社代表取締役社長執行役員石井正和氏(左)と

「後継者不在・M&A・譲渡企業」に関連する学ぶコンテンツ

M&Aの事前準備。売り手が押さえておくべきポイント

M&Aの事前準備。売り手が押さえておくべきポイント

自社の売却を考える譲渡オーナーの多くにとってM&Aは未知の体験であり、不安はつきません。本記事では、相手探しを始める前に何を準備しておけばいいのか?どのような状態にしておけばいいのか?売り手が押さえておきたいM&Aの事前準備として資料収集・株式の集約についてご紹介します。この記事のポイントM&Aの事前準備として、売り手は企業価値評価や資料収集が必要で、特に決算書類や財務関連資料が重要である。M&A

M&Aはどこに相談できる?相談先の種類と選び方

M&Aはどこに相談できる?相談先の種類と選び方

いざ、M&Aについて情報収集を始めようとするとき、「信頼のおける人、M&Aに詳しい人に話を聞いてみよう。」と考える方は多いのではないでしょうか。M&Aには高度な論点が複雑に絡み合い、高い専門性や知識が必要とされるため、当事者だけで進めることは難しく、一般的にはM&A仲介会社をはじめ、様々な専門家が関係してきます。本記事ではM&Aの相談先の種類とその選び方について紹介します。どのような相談先があるの

売り手がM&Aを行う目的

売り手がM&Aを行う目的

譲渡オーナーの中には「M&A(=会社売却)」自体が目的になってしまい、M&Aを通じて会社をどうしていきたいのか、何を実現したいのか、目的が見えづらくなるケースが少なくありません。目的がぶれると、譲渡したい相手の条件や、判断軸も定まらず成約まで長期化してしまいかねません。あるいはM&Aを実行したとしても、満足を得られる結果に至らない可能性もあります。本記事では、中小企業の売り手がM&Aを行う目的につ

売り手が自社の情報を開示する流れ

売り手が自社の情報を開示する流れ

譲渡・売却先の探し方、選び方のポイントでご紹介した通り、譲渡・売却したい相手の条件を明確化した後、具体的な相手探しを進めます。M&Aを検討している、という事実は売り手企業にとって機密情報です。どのように情報管理を行いながら、相手企業に情報を共有し、M&Aの検討を進めていくのでしょうか。本記事では、売り手が情報を開示していくプロセスを中心にご紹介します。この記事のポイント売り手がM&Aを進める際、最

企業概要書(IM)の準備

企業概要書(IM)の準備

企業概要書(IM)は譲受け企業が譲渡企業を評価し、M&Aの検討を進めるか判断する重要な書類の1つです。本記事では、IM(企業概要書)の概要、記載する内容や作成時の注意点などについて解説します。この記事のポイント企業概要書(IM)は、譲渡企業の詳細情報をまとめた資料であり、譲受け企業がM&Aを検討する際に重要な役割を果たす。IMには企業概要、事業内容、財務状況、譲渡理由などが記載され、読み手にわかり

譲渡・売却先の探し方、選び方のポイント

譲渡・売却先の探し方、選び方のポイント

会社の譲渡・売却を通じてどういう会社になりたいか、そのためにどんな相手に会社を売却したいか、イメージし明確化することは非常に大切です。本記事では、売却する相手を探す時、そして具体的に検討する時のポイントについてご紹介します。この記事のポイントM&Aの譲渡先を探す際は、同業種か異業種か、近隣か遠隔地かを考慮し、シナジー効果を見込むことが重要である。譲渡先が事業会社、ファンド、または個人かによっても戦

「後継者不在・M&A・譲渡企業」に関連するM&Aニュース

ウエルシアホールディングス、子会社の現物配当により孫会社が異動へ

ウエルシアホールディングス株式会社(3141)の完全子会社であるウエルシア薬局株式会社(東京都千代田区)は、保有するウエルシア介護サービス株式会社(茨城県つくば市)の発行済全株式を、ウエルシアホールディングスへ現物配当することを決定した。これにより、ウエルシア介護サービスの発行済全株式を取得することとなり、同社はウエルシアホールディングスの完全子会社となる。ウエルシアホールディングスは、調剤併設型

日本エコシステム、テッククリエイトの全株式取得へ

日本エコシステム株式会社(9249)は、株式会社テッククリエイト(石川県金沢市)の全株式を取得し、グループ化することに関し、株主との間で株式譲渡契約を締結することを決定した。日本エコシステムは、環境、公共サービス、交通インフラに関する事業を行う。テッククリエイトは、北陸三県の鉄道線路・施設の保守点検、石川県内の工場・商業施設・公共施設などの給排水衛生設備、空調設備工事等を行う。テッククリエイトのグ

ニッスイのグループ会社、ニュージーランドの漁業会社IFL社を買収へ

株式会社ニッスイ(1332)のグループ企業であるSealordGroupLtd.(ニュージーランドネルソン市、以下シーロード社)は、インディペンデント・フィッシャリーズ(ニュージーランドクライストチャーチ市、以下IFL社)との間で、同社の買収契約を締結した。今後、同国の通商委員会および海外投資局の許可・承認を得ることなどを条件として、買収が成立する見通し。シーロード社は、ニッスイのグループ企業で、

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース