IPOの減少予想広がり、スタートアップ企業の目線はM&Aに
⽬次
- 1. IPO延期の動きも
- 2. 成長のためにIPOからM&A選択が加速化するか
- 3. プロフィール
“上場熱”が高かった昨年から一転して2022年は新規上場数が減少するとの市場予想が広がっています。株安傾向が続く2022年の市場動向やウクライナ情勢への懸念からIPOを目指す企業にとって厳しい環境となっています。東京商工リサーチの全国「IPO意向企業」動向調査によると、株式上場(IPO)の意向を示す企業は1,857社だった一方で、業績伸び悩みの傾向があると分析し、「世界経済の混乱による投資家心理の冷え込みや株価低迷でIPOは逆風となっている」と指摘しています。
IPO延期の動きも
東証1部に上場予定だった住信SBIネット銀行は2022年3月7日に上場延期を公表し、「ウクライナ情勢や最近の市場動向など様々な環境の変化を総合的に勘案」との延期理由を表明しました。期待していた株価や上場メリットが得られないと判断すれば、今後もIPOを延期する企業が出てくる可能性があります。
2021年には14年ぶりにIPOが100社を超え、136社が上場しました。ただ2022年4月に予定する東京証券取引所の市場再編を前に、大企業が上場する子会社を非上場化するトレンドもあり、あえて上場を廃止する企業も数多くありました。
全国「IPO意向企業」動向調査の業種別では情報サービス・制作業が540社と全体の約3割を占め、システム開発やweb関連サービスといったIT関連企業が多く、ベンチャーやスタートアップ企業などで構成されています。売上高では年商50億円未満が84.3%で、従業員数は50人未満が約6割と中堅・中小企業が主体となっています。ただ比較可能な最新決算で、IPO意向企業1,422社を合算すると、売上高が8兆8,062億円と微減しています。さらに1,174社の当期利益は1,602億円の赤字で、うち4割が赤字と伸び悩みを示す結果となりました。スタートアップ企業などは初期投資を負担するため赤字から事業を始めるケースが多いとされています。東京商工リサーチはコロナ禍で「利益確保が難しく赤字に転落するIPO意向企業が目立っている」と指摘しています。
成長のためにIPOからM&A選択が加速化するか
スタートアップ企業の支援を打ち出す日本M&Aセンター取締役の渡部恒郎は「2022年のIPOは厳しい環境となっている。アメリカの中央銀行にあたるFRBによる金融引き締めがあり、国内市場の株価も落ちているため、IPO意向企業が当初、見込んでいた株価が非常に低くなり、IPO数が鈍ってくる可能性が高い」と話しています。スタートアップ企業がIPOではなく、アメリカ市場のようによりM&Aを選択する可能性を予想しています。2021年には後払いサービスのペイディがIPOではなく、M&Aを選び、米決済大手ペイパル・ホールディングスに3,000億円で買収されました。今後、IPOを目指す企業がどう対応するか注目されます。