中小企業庁が中小PMIガイドラインを初策定
⽬次
- 1. 買い手企業向け新指針
- 2. 豊富なPMI事例
- 3. プロフィール
事業承継の方法として増加する中小企業のM&Aの効果を発揮するために新指針が打ち出されました。中小企業庁は2022年3月17日、中小PMIガイドラインを初策定しました。PMIとは「Post Merger Integration」の略語で、M&A後の統合プロセスを表す言葉です。M&Aの目的を実現するための統合の効果を最大化するために必要なプロセスですが、これまで中小企業のM&Aは企業選びのマッチングばかりが注目され、後行程のPMI の関心と実行が十分でない課題がありました。ガイドラインは中小企業のPMIにおける方法論の「型」を提供し、M&Aを成功に導くメソッドとして期待されます。2022年度予算からは事業承継・引継ぎ補助金等でもPMIに取り組む中小企業の費用補助も拡充される予定です。
買い手企業向け新指針
中小PMIガイドラインは中小企業庁の「中小PMI支援メニュー」の一環で策定されました。全126ページにはガイドラインの概要、中小PMI総論、各論、付属資料等で構成されています。中小企業の規模や保有するリソースに合わせて「基礎編」と「発展編」を設けて、豊富なPMI事例も盛り込まれています。時系列でM&AとPMIのプロセスを紹介し、大きく「経営統合」、「信頼関係構築」、「業務統合」の3分野でノウハウが整理されています。M&Aの譲受企業やM&A支援機関のハンドブックとして重宝する内容となっています。近年、急増する中小企業のM&Aにおいて2020年に策定した中小M&Aガイドラインに続く国の指針となります。
豊富なPMI事例
PMIのポイントはM&Aの譲受企業がリーダシップを持って企業の統合を進める点になります。そのためガイドラインの内容も譲受企業が行うべき方法論がまとめられています。実際のPMIの取り組み事例が豊富に記載されている点が実効性のあるPMIの実行を後押しします。M&A直後に譲渡企業の従業員に面談やアンケートを実施して、買い手企業が改善点や従業員の不満を把握する手法や提案営業におけるクロスセルの実例、共同輸送や在庫管理など販管費を抑える具体例が充実しています。またPMIにおいて気を付けるべき失敗事例も多く紹介されています。
中小PMIガイドライン策定小委員会で委員を務めた日本PMIコンサルティングの竹林信幸代表取締役社長は「M&Aに関わる人々のPMIの教科書として広く使ってほしいです。PMIの質が高まることはM&Aの質を高めることになります。ガイドラインはM&Aを検討している多くの中小企業にとって有益なものになるはずです」と意義を語ります。