過渡期にある中所得国の罠「タイ王国」
⽬次
- 1. 中所得国の罠とは
- 2. 成長に黄色信号
- 3. 悲観的であるべきか?
- 4. M&Aの側面からは?
- 4-1. 著者
まずタイ王国における2月初旬時点での新型コロナの感染状況は、感染者数は増加傾向(※)にありますが、タイ政府は新型コロナとの共存へ舵を切り始めました。※2022年2月執筆時の情報
中所得国の罠とは
中所得国の罠(Middle-Income Trap)は2007年に世界銀行のレポートである「東アジアのルネッサンス」(An East Asian Renaissance-Ideas for Economic Growth)で生まれた言葉です。
外国からの投資や人件費の安さを生かし急速に成長した多くの中所得国(1人あたりGNIが約1,000~約12,500ドル)が、そのレンジを抜けだせず高所得国(1人あたりGNIが約12,500ドル以上)に成り上がれず手をこまねいている状況にあります。タイはグラフ(※)の通り右肩上がりで成長しています。
※出典:The World Bank Data
成長に黄色信号
上記の通り、タイは上下が有りながらも成長を続けてきています。しかし私はこのまま成長が続き続けるとは考えていません。低所得国から中所得国に成るためには外国からの投資や人口の増加が必要になります。タイは外国からの投資に対して多くの恩典を与えて誘致してきました。人口も順調に増え約7,000万人まで増加しています。
一方、合計特殊出生率は年々低下しています。ASEAN諸国ではシンガポール(1.14*)に次いで2番目に低い水準(1.51*)になっています。つまり急速な少子化に進んでいるのです。人口でいけば医療水準の向上等により寿命の高齢化が進んでいるため、引き延ばしはできているもののまもなく人口減少期にはいります。
※出典:Bangkok Post 「Record low birth rate worries officials」2021.02.12 *2019年データ
悲観的であるべきか?
人口は経済成長に必要不可欠な要素であると考えます。そういった観点から日本とタイは似た状況にあるのではないでしょうか。しかしながら、その過渡期には多くの産業が集約され、また新たなビジネスが生まれるという側面もあります。日本国内のM&Aによる業界再編はこちらを参照ください。
また、タイ政府は国際競争力のある付加価値の高い産業を生むためのThailand4.0政策も大々的に打ち出して恩恵を与えています。つまりタイ政府も自国の立ち位置を理解し、積極的な政策を行っています。タイは外資を誘致し(特に日本から)、成長してきた国であるため、しっかりとしたメリットを提示できれば多くの投資は誘致できると考えます。
M&Aの側面からは?
M&Aは上記の通り、業界の再編に伴うM&Aは急増すると考えています。また、少子高齢化も相まって後継者不在企業のM&Aも増加します。ここ10年近くは買い手市場になるのではないかと考えております。そのような意味では直接投資が一番多い日本企業にとってはタイでのビジネスを拡大する良いチャンス・タイミングが巡ってきていると思います。
次回はタイにおける日系企業界隈についてお話しさせて頂く予定です!