レーマン方式とは?M&Aにおける成功報酬の計算方法、種類を解説

M&A実務
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M&A仲介会社などに支払う成功報酬は、多くの場合「レーマン方式」という計算方法によって算出されます。本記事ではレーマン方式の概要や具体的な計算方法、メリット、注意点などについて解説します。

日本M&AセンターではM&Aに精通した弁護士・公認会計士・税理士など専門家を含めた盤石の体制で安全・安心のM&Aをサポート致します。成功報酬など、詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

M&A支援機関に支払う主な費用

レーマン方式について見ていく前に、M&A支援機関に対して支払う費用を確認しておきます。
M&A支援機関ごとに異なりますが、一般的に発生する費用は以下の通りです。

費用の種類 内容
相談料 契約をする前の相談時に支払う費用です。大手M&A仲介会社では相談料無料のケースが多く見られます。
着手金 M&A支援機関とアドバイザリー契約を結んだときに支払う費用が着手金です。
月額報酬(リテイナーフィー) 支援機関が業務遂行の費用として請求する月額費用です。支援機関によって月額費用の有無や支払いタイミングは異なります。
中間報酬(中間時金) 基本合意書が締結された時点で支払います。
成功報酬 M&Aの最終契約の締結後に支払います。多くのM&A支援機関ではレーマン方式を報酬の計算基準に採用しています。

※このほか弁護士や公認会計士・税理士などにデューデリジェンス(買収監査)を依頼する際の費用などが発生します。詳しくは各M&A支援機関にお問合せください。

レーマン方式とは

レーマン方式とは、M&Aの取引金額などに一定の報酬率を乗じる計算方式です。M&A仲介会社などM&A支援機関に支払う成功報酬を算出する際によく用いられます。

「レーマン方式」の名前はドイツの経営学の権威であるレーマン博士に由来しており、博士の学説を応用してこの成果配分方式が生み出されたと言われています。

レーマン方式の基本の計算式は以下の通りです。

成功報酬の金額=報酬基準額(取引金額)×報酬率

この算式における「報酬基準額」は、後述の各方式の方法で算出した「報酬基準額」をベースに算出した金額となります。一般的に取引金額(買収金額)が大きくなればなるほど、「報酬率」は低くなるという特徴があります。

この記事のポイント

  • M&A支援機関に支払う費用には、相談料、着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬があり、成功報酬は一般的にレーマン方式で算出される。
  • レーマン方式は、取引金額に応じた報酬率を適用し、取引金額が大きくなるほど報酬率が低くなる特徴がある。小規模M&Aでは費用負担が増加する可能性がある。
  • M&A支援機関選びは報酬額だけでなく実績や相性も考慮する必要がある。

⽬次

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レーマン方式の計算方法


レーマン方式による料率は、以下料率例のように金額に応じて細かく階層化されています。

報酬基準額 料率
5億円以下 に該当する部分
5%
5億円超 10億円以下 に該当する部分 4%
10億円超 50億円以下 に該当する部分 3%
50億円超 100億円以下 に該当する部分 2%
100億円超 に該当する部分 1%

たとえば報酬基準額が8億円の場合、以下のように計算します。

A: 5億円以下に該当する部分(5億円)⋯⋯5億円×5%=2,500万円

B: 5億円超10億円以下に該当する部分(8億円ー5億円=3億円)⋯⋯3億円×4%=1,200万円


上記のようにレーマン方式の料率に応じて算出した金額を、最後は合計します。


C: 2,500万円+1,200万円=3,700万円

報酬基準額の決め方


報酬基準額の決め方は支援機関によって異なりますが、主に「株式価値基準」「オーナー受取額基準」「企業価値基準」「移動総資産基準」が用いられます。

株式価値基準

M&Aによって譲渡された株式の譲渡対価を報酬の基準とする方式です。株式の売却額に対してのみ料率の対象とするため、他の方式と比べてコストを抑えて算出することができると言われます。


報酬基準額= 株式譲渡額

オーナー受取額基準

株式の譲渡額に加え、会社がオーナー経営者やその親族からの借入金(役員借入金)を加えた金額を報酬基準額とする方式です。
多くの場合、会社を譲渡する際に株式譲渡の代金とは別にオーナー経営者に返済されます。


報酬基準額= 株式譲渡額+株主とその家族からの借入金(役員借入金など)

企業価値基準

株式の譲渡額や役員借入金だけでなく、銀行からの借入金なども含めた有利子負債の合計額を報酬基準額に加えた方式です。会社を譲渡すれば、オーナー経営者は株式の譲渡代金が受け取れるだけでなく、会社が金融機関などから借りていた負債からも解放されます。その分企業価値が上がるという考え方に基づいたものです。金融機関からの借入金残高が大きい場合は、株価レーマン方式と比べて、多くの報酬が必要になります。


報酬基準額= 株式譲渡額+すべての有利子負債(役員借入金、銀行借入金)

移動総資産基準

株式の譲渡額に加え、有利子負債だけでなく買掛金や未払金などすべての負債合計額を報酬基準額とする方式です。買掛金などすべての負債を含むため、4つの中で報酬基準額が高額になりやすい傾向があります。


報酬基準額= 株式譲渡額+すべての負債(役員借入金や銀行借入金、買掛金など)

自社の負債状況などを合わせて、どの方式を取り入れた支援機関を選定するか慎重な検討が求められます。

レーマン方式を活用するメリット


M&Aの成功報酬をレーマン方式にするメリットは、以下の通りです。

手数料が公平である

成功報酬が一律定額の場合に比べて、レーマン方式ならば、M&Aの規模に応じて支払う額が変わるため、企業の規模に関係なく仲介会社をはじめとする支援機関と公平な取引が行えます。

また、「成功報酬は、基準価額に対して一律10%」と定率式で定められていた場合、基準価額が仮に1億円であれば報酬も1,000万円で済みますが、基準価額が50億円になると、50億円×10%=5億円にも膨れ上がります。

これだと、M&Aの規模が大きくなればなるほど割高感があるように思えるかもしれません。このように定額式や定率式と比べると、レーマン方式による手数料は、双方にとって公平な計算方法であるといえます。

M&A実施にかかる費用があらかじめ算出できる

レーマン方式で計算される成功報酬額は、報酬基準額を把握できればおおよその金額を計算できます。
変動幅の大きな成功報酬の額さえわかれば、M&A実施に必要な手数料などの費用を見積もることができM&Aの計画も立てやすくなります。

レーマン方式を活用する注意点

取引金額が小さいほど料率が高くなるため、小規模のM&A案件の場合、企業側の費用負担が増えてしまう点が挙げられます。

また、小規模の場合でも最低報酬額が設定されていることもあります。M&Aの規模が小規模になればなるほど最低報酬額を下回る可能性が大きくなり、最終的には手数料負担率がレーマン方式を逆転する現象が起きやすくなります。

また、同じ会社でもレーマン方式の報酬基準額は何をベースにするかで報酬額が大きく変わる点にも注意が必要です。

レーマン方式を用いた成功報酬の算出例


ここでは前述の料率表をもとに、A社を例にそれぞれの基準で計算していきます。

■A社の前提条件
・譲渡価額⋯⋯5億円
・役員借入金⋯⋯5,000万円
・有利子負債の合計(役員借入金を含む)⋯⋯1億円
・有利子負債以外の負債⋯⋯1億5,000万円

株式価値基準の計算例


譲渡価額5億円× 料率5%=2,500万円

オーナー受取額基準の計算例


【報酬基準額】譲渡価額5億円+役員借入金5,000万円=5億5,000万円

(5億円×5%)+{(5億5,000万円-5億円)×4%}=2,700万円


企業価値基準の計算例


【報酬基準額】譲渡価額5億円+有利子負債1億円=6億円

(5億円×5%)+{(6億円-5億円)×4%}=2,900万円


移動総資産基準の計算例


【報酬基準額】譲渡価額5億+有利子負債1億+有利子負債以外の負債1億5,000万=7億5,000万円

(5億円×5%)+{(7億5,000万円-5億円)×4%}=3,500万円


終わりに

M&A仲介会社などM&A支援機関に支払う報酬には、着手金や中間報酬、リテイナーフィーや成功報酬などさまざまなものがあります。その中で、金額的に圧倒的に大きなウエイトを占めているのが成功報酬です。

支援機関の多くはこの成功報酬をレーマン方式で算出しているため、M&Aの規模が大きくなればなるほど、報酬額が増えていく特徴があります。また、レーマン方式には株価を報酬基準額にする場合やオーナー経営者が受け取る額を報酬基準額にする場合など、さまざまな方法があり、どれを採用しているかによって最終的な金額が大きく変わります。

したがって、レーマン方式による成功報酬額のバリエーションを知るためには、複数の支援機関から見積もりを取って比較するのが良いでしょう。

ただし、報酬額のみで仲介会社を選んでしまうのはリスクが大きいため、レーマン方式による成功報酬額の違いをある程度理解しておいた上で、これまでの実績や経験、情報量の豊富さ、または自社との相性などを考えた上で総合的に判断することをおすすめします。

日本M&AセンターではM&Aに精通した弁護士・公認会計士・税理士など専門家を含めた盤石の体制で安全・安心のM&Aをサポート致します。成功報酬など、詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

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M&A マガジン編集部

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