後継者難倒産が急増、2022年上半期は過去最多224件
後継者不在による倒産が深刻化しています。東京商工リサーチが7月14日に公表した「後継者難倒産」の状況調査で、2022年上半期(1-6月)の「後継者難倒産」が224件に上りました。上半期ペースで初めて200件を超えて過去最多を記録しました。上半期の倒産全体(3,060件)に占める割合も、7.3%と増加しており、経営者の高齢化に伴う後継者不在という社会課題が顕在化しています。
後継者難倒産とは、代表者の「病気」や「高齢」、「死亡」を理由に倒産した企業を2013年から調査した状況調査になります。
2022年上半期の後継者難倒産の産業別では、「サービス業他」が54件と最も多く、全体の約4分の1の割合となっています。建設業が51件、卸売業の37件と続きます。全10産業のうち、農・林・漁・鉱業、金融・保険業、不動産業を除く7産業で前年同期比を上回りました。資本金別では、1,000万円未満が128件と全体の約6割となっています。後継者難倒産は中小・零細企業に限らず、資本金1億円以上も2件あることから中堅企業にも後継者不在が広がりつつあることが読み取れます。
2021年の経営者の平均年齢は、62.7歳(東京商工リサーチ「全国社長の年齢」調査)となっており高齢化の進展で、経営者の死亡や体調不良などが経営環境に大きな課題となっています。要因別では「死亡」が122件と半数以上を占め、「体調不良」が71件と約3割、「高齢」を理由とした倒産も約1割の22件となりました。
日本M&Aセンターが支援した譲渡企業の代表者の年齢分布では、60歳以上が全体の6割となっており、70歳以上が2割以上となっています。
負債別では、1億円未満が約7割の152件。1億円以上5億円未満が64件と増加し、3年連続で前年同期を上回りました。また5億円以上10億円未満が6件、10億円以上が2件となっています。
東京商工リサーチは「代表者の病気や死亡が事業継続を断念する大きな要因になり、後継者不在は事業規模を問わず経営上の大きなリスクになっている。中小・零細企業の後継者不在や事業承継は、企業単独での解決は難しくなっている。政府や自治体、金融機関だけではなく、外部の支援機関との協力も今まで以上に重要」と指摘しています。
コロナ禍においては積極的な資金繰り支援の効果もあり、2021年の倒産件数は57年ぶりの低水準となった一方で、後継者難倒産は増加しており、後継者不在による倒産を減らしていくためにも様々な対策が求められています。