個人も会社を買う時代。個人M&Aのメリット・注意点をわかりやすく解説
法人だけでなく個人による買収の動きが活発化しています。本記事では個人、法人が会社を買うメリット、注意点についてご紹介します。
法人の買収をご検討の方は、希望条件(地域、業種など)を登録することで、条件に合致した譲渡案件のご提案や新着案件情報を受け取ることができます。まずは登録から始めてみませんか?
この記事のポイント
- 個人M&Aの増加背景には、経営者の高齢化や後継者不足、新型コロナの影響があり、手軽に利用できる「M&Aマッチングサイト」の普及が後押ししている。
- 会社を買うメリットとしては、ゼロから立ち上げる必要がないこと、ニーズのあるサービスを引き継げること、役員報酬を得られる可能性、自社事業の拡大、成長後の高額売却の可能性がある。
- 注意点としては、簿外債務の引き継ぎリスク、人材の流出リスク、顧客や取引先からの理解を得る必要があること。
⽬次
個人が会社を買う時代
中小企業白書によると、経営者の高齢化や後継者不足、新型コロナの拡大などの影響により、中小企業のM&A件数は近年増加傾向にあります。
そのようなM&A増加の要因の1つには、画面上で簡単に条件の入力や検索ができ、個人も手軽に利用できる「M&Aマッチングサイト」の普及が挙げられます。
従来はM&Aマッチングサイトも大企業をユーザーとして想定していましたが、近年では「スモールM&A」と呼ばれる数百万円程度の小規模なM&A案件も取り扱うようになりました。
また、働き方改革の推進によって副業を認める企業が増えていることも、個人が買い手としてM&Aに参入を始めている要因の一つに挙げられます。
個人が買収対象にしやすい会社としてまず挙げられるのは、個人でも挑戦しやすい金額の案件です。個人向けのM&Aマーケットならば、500~1,000万円程度の案件は豊富に存在します。
個人M&Aに向いている主な業種とその特徴・理由については「個人M&Aが行われやすい会社」をご覧ください。
会社を買うメリット5つ
個人や法人が会社を買うメリットとして、以下の5つが挙げられます。
ゼロから会社を立ち上げる必要がない
ゼロから会社や事業を立ち上げるためには、膨大な資金と多大な労力、期間というコストが必要です。しかし、既にビジネスを行っている会社をM&Aによって買収し、売り手側企業から設備や従業員を受け継ぐことでその負担が軽減されます。
人材育成や新たな設備投資に資金を回すことができ、買収後の事業成長に大いに役立てられます。
ニーズのあるサービス・商品で事業ができる
ゼロからスタートさせるビジネスの場合には、ユーザーのニーズを確認・把握したり、顧客マーケティングを始めたりする必要がありますが、既にビジネスをスタートさせている会社には、提供しているサービス・商品に顧客やファンがついているケースが大半です。
そのため既存顧客のニーズを確認・把握をあらかじめ行ったうえで事業を展開することができます。このように、M&Aにはマーケティング活動の効率化に資するメリットもあるのです。
自社の事業の拡大にもつながる
複数事業を展開している場合は、M&Aで買収した会社のビジネスとのシナジー効果によって、既存のビジネスの拡大やビジネスの効率化が期待できます。
期待するシナジー効果を発揮するためには、デューデリジェンスなどで事前に事業リスクを認識しておく、明確な事業計画を立案しておく、PMI(Post Merger Integration、M&A実行後の統合プロセス)をしっかりと実施することを念頭に準備を進めることが大切です。
成長したら高く売却できる可能性もある
M&Aで会社を買った後に、その会社が大きく成長して企業価値を高めれば、買った時よりも高い価格で売却できる可能性が出てきます。
会社を買えば、自分自身が事業の展開に関与できますので、直接的に会社の成長につながります。ただし、経営判断に失敗すると損失を発生させるリスクもあるので、この場合を想定して明確な撤退基準を設定しておくことが必要です。
会社を買う際の注意点
簿外債務を引き継ぐ可能性がある
会社を買う際に株式譲渡の手法を利用する場合には、会社の資産だけでなく債務も引き継ぎますが、場合によっては簿外債務を引き継いでしまうおそれがあります。簿外債務とは、帳簿に載っていない(貸借対照表に計上されていない)隠れ債務です。
買収後に簿外債務があることが判明した場合には、想定外の費用負担を求められる可能性があります。また簿外債務のほか、顕在化していない問題を抱えている場合もあります。具体的には、税務当局と税務上のトラブル(課税処分に対する不服審査の申立を検討しているなど)や、公害問題や訴訟リスクなどが潜在的な課題として挙げられます。
そうしたリスクを回避するにはデューデリジェンスをしっかりと実施することが重要です。しかし、それだけでは表面化していないリスクに対応できないケースも考えられます。
こうしたリスクに対応するためには、M&Aの最終契約書(株式譲渡契約書など)に表明保証を載せてもらう方法が考えられます。表明保証とは、情報が正しく虚偽ではないことを売り手に約束してもらうもので、もし表明保証に違反した場合には損害賠償や契約解除を請求できるようになります。
人材の流出リスクがある
M&Aを実行した場合には、売り手企業から優秀な人材が辞めてしまう可能性があります。
買い手側として、スキルや経験値が高い従業員も含めて高く評価していたのにもかかわらず、高評価をつけていた人材が抜けてしまうと買収の目論見が大きく崩れてしまいかねません。
したがって、売り手側企業の従業員に対しては、M&A実施の事実を告げる段取りや、丁寧な説明を果たすための準備、発表後のケアを十分検討することが大切です。
顧客や取引先からの理解が必要
経営者、あるいは会社が新しく変わったとしても、今まで通り重要な顧客・取引先であることには何ら変わりありません。今まで以上に関係を深めて顧客・取引先の役に立てるように努めることをわかりやすく明確に伝えましょう。顧客基盤を維持・成長させることは、会社の成長には欠かすことのできない重要なポイントです。
会社を買う3つの方法
個人や法人が会社を買う方法には、以下の3つの方法が考えられます。
M&A仲介会社などM&A支援機関の活用
主に法人向けの選択肢となりますが、まずM&A仲介会社など支援機関の活用が挙げられます。 M&A仲介会社とは、会社や事業の売買を仲介、成約後も見据えてサポートしてくれる会社です。
M&A仲介会社を利用する最大のメリットは、幅広い選択肢の中から自社に最適なM&Aの相手先を見つけてくれ、専門的なサポートが受けられる点です。特に大手のM&A仲介会社は長年の経験から買い手・売り手双方のニーズや成約に向けてのポイントを熟知していますので、M&Aパートナーとして力強い味方となってくれます。
一方で、M&A仲介会社を利用するデメリットとしては、後述のマッチングサイト等と比べて費用がかかる点です。M&Aの仲介という専門性・難易度が高いサービスを、コンサルタントや公認会計士、弁護士、税理士など専門家を介在して提供していることが、その背景にあります。
費用体系は会社によって内容や呼び名が異なりますが、主に着手金・月額報酬・中間報酬・成功報酬などの体系になっています。
日本M&Aセンターでは、ご相談からM&Aの成約まで、経験豊富なM&Aのプロが丁寧にサポートいたします。会社の買収・売却をご検討の場合は、無料相談をご活用ください。ご相談は無料、秘密厳守で承ります。
事業承継・引継ぎ支援センターの活用
事業承継・引継ぎ支援センターは、後継者不足に悩む中小企業・小規模事業の事業承継をM&Aなどの活用によってサポートすることを目的とする国の事業です。創業を目指す起業家と、後継者不在の会社や個人事業主を引き合わせるなどの支援が受けられます。
事業承継・引継ぎ支援センターを活用するメリットは、国の事業であるため安心して利用できる点、M&Aに関する専門家が無料で相談に乗ってくれる点です。
デメリットは外部の専門家に依頼する際は別途費用がかかること、案件数は他のサービスに比べると潤沢ではないことが挙げられます。
M&Aマッチングサイトの活用
M&Aマッチングサイトとは、会社の売り手と買い手をマッチングさせるWebサービスです。海外案件も含めて非常に数多くの案件が掲載されていますので、自ら希望する相手先を探しやすい特徴があります。
また、案件のサイズも数百万円から高額な案件まで、バラエティに富んだ案件がそろっています。
利用する場合に情報の拡散や漏洩に注意する必要があること、複雑な手続きや交渉・調整など仲介会社と同レベルのサポートを期待することは難しいことなどが挙げられます。近年はサポートを充実させる会社も増えてきていますが、弁護士など専門家への依頼には別途費用がかかることに注意が必要です。
個人のM&Aではその他商工会議所などが相談先として挙げられます。詳しくは「個人によるM&A案件の探し方」をご覧ください。
会社を買う流れ
個人・法人が会社を買う基本的な流れは以下の通りです。
会社の買収の目標・戦略を定める
最初に必ず行うことは買収する目的や戦略を明確に定める点です。
M&Aを進めている途中で、困難な問題や解決するハードルが高いトラブルが発生することはよくあります。その際には設定した目的や戦略に立ち返ることで、問題やトラブルに対処しやすくなります。
また進むべき目標・戦略を明確に定めておくと、横道に逸れたり余計な仕事を増やしたりするリスクを減らして効率的にM&Aを進められるでしょう。
M&Aの予算・業種を決める
会社を買う目的や戦略を決めたら、次にM&Aの予算や買収対象となる業種を決めます。予算は買収金額だけでなく、買収に付随する費用も含めて検討することが必要です。例えば、M&A仲介会社を利用する場合には、その費用も計算しておく必要があります。
デューデリジェンスやバリュエーション(企業価値評価)など専門性の高い領域では弁護士など外部の専門家を利用する費用を考慮する必要があります。
個人M&Aの場合には、法人によるM&Aに比べて、追加費用の捻出が難しいケースが考えられるので、余裕を持った予算枠の設定が好ましいといえます。買収後に事業を自分で運営していくことが可能かどうかという点を考慮して十分に検討しましょう。
買収候補企業を選定する
候補となる会社を決めるには、M&A仲介会社やM&Aマッチングサイトなどを活用しましょう。M&A仲介会社は買収の希望条件を踏まえて最適な企業を紹介してくれることが期待できます。
個人でM&Aマッチングサイトを利用する場合には、自身で候補先企業を抽出して検討する必要がある点に注意が必要です。
候補企業とコンタクトをとる
候補会社が選定できたら、相手側とコンタクトをとります。M&A仲介会社の支援を受ける場合は、仲介会社が間に入り調整・交渉を行います。
一方、個人でM&Aマッチングサイトを利用している場合には、買い手側が直接相手企業にコンタクトを求める必要があります。
経営者・代表者と面談・交渉する
双方が本格的な検討意欲が高まった段階で、両者の代表者が直接面談を行います。いわゆるトップ面談と呼ばれるものですが、これは交渉の場ではなく、互いの事業や価値観の理解を深め、疑問や不明点を解消する場です。
特に売り手の譲渡オーナー側は「この相手先に会社を任せて大丈夫か」「従業員は安心して働くことができるか」といった点で慎重に見極める必要があります。
基本合意書を締結する
トップ面談後、お互いに次のステップに進む意思確認が取れたら、基本合意書を締結します。そこでお互いに合意すれば基本合意書を締結します。
基本合意書は、守秘義務や独占交渉権の付与などに法的拘束力を持たせるものの、それ以外の項目には法的拘束力がない構成であることが一般的です。法的拘束力がなければ基本合意書に定める意味がないように思えますが、M&Aのスキームや売買価格などは今後の交渉次第で変更になる可能性もあるので、あえて法的拘束力がない条項と定めておくのです。
デューデリジェンス(買収監査)を実施する
トップ会談が終了したら、買い手は対象会社に対して詳細な調査、つまりデューデリジェンスを行います。
デューデリジェンスの対象は、事業、財務、法務、税務、人事、IT、など非常に広範にわたり、弁護士や公認会計士などの専門家の協力が不可欠です。
調査を通じて対象会社のリスク・問題点を洗い出し、対応を検討したうえで、買収希望価格を算定・決定します。デューデリジェンスの結果が買収価格に反映されるので、慎重かつ丁寧にプロセス・結果を確認しておきましょう。
最終条件の調整・最終契約を締結する
デューデリジェンス実施後、さまざまな項目を協議・調整したのちに最終的な合意ができたら、最終契約を締結します。最終契約はM&Aスキームの種類によって契約書のタイプが異なります。株式譲渡の場合であれば株式譲渡契約書の締結になり、事業譲渡の場合であれば事業譲渡契約書の締結になります。
個人M&Aの場合には契約書の内容の精査は、弁護士など専門家に依頼することをおすすめします。最終契約を締結してクロージング手続き(株式の移転や売買代金の支払いなど)を完了させれば、基本的にはM&A手続きは完了しますが、両者はM&A成約後も従業員や取引先への説明、PMIに向けて準備などやるべきことがたくさんあります。これらはスムーズな統合、結果的にシナジーの創出を実現させるために不可欠です。
個人・法人が会社を買って成功するためのポイント
買収を成功させる主なポイントは、以下の通りです。
デューデリジェンスでリスクを洗い出す
前述の通り、デューデリジェンスを実施して売り手企業のリスクをしっかりと抽出することが必要です。デューデリジェンスをきちんと実施するには、M&Aにおけるデューデリジェンスの経験や実績が豊富な弁護士や公認会計士、あるいはM&A仲介会社に依頼することをおすすめします。
特に個人M&Aの場合には、自身による調査は限界があるため、費用がかかったとしてもプロフェショナルサービスを徹底的に利用すると良いでしょう。中途半端なデューデリジェンスで終わってしまうと、買収後に想定外の大きな費用・損失が発生してしまうリスクがあります。
M&Aの専門家に依頼・相談する
M&Aのディールには専門的な知識や経験が必要不可欠です。したがって、些細なことであってもいつでも相談できる相手がいれば心強いでしょう。M&A紹介会社を利用していれば、困った時に頼りになるプロフェッショナルを紹介してもらえますが、その他の方法でM&Aを進める場合には自分で専門家を探さなければなりません。
特に個人でM&Aに取り組む場合には、専門家が不可欠です。自分の人的ネットワークの中に役立つ専門家がいなければ、信頼できる専門家を紹介してもらうよう公的なM&A支援機関に相談することも一つの方法です。
自社・自分に見合ったサイズ・事業内容の会社を買う
法人でも個人でも、会社を買う際には自分に見合った規模や事業内容の会社を買うことが重要です。資金的な問題もありますが、それ以上に自分では管理しきれなくなってしまうリスクがあるからです。特に個人の場合は、自分でコントロールできない規模の会社を買ってしまうと、リスクが顕在化した時に想定以上の損失をこうむってしまう可能性があります。
また、これまで経験したことがないビジネスを展開しているような会社を買ってしまうと、事業展開の落とし穴(素人では気付かない注意点など)に落ちてしまい、会社を安定的に経営できなくなってしまうリスクもあります。そのため、自分で制御可能な規模や事業内容の会社を買うことが重要です。
会社を買うには、専門家の協力が不可欠
会社を買うには、本記事で紹介したように様々な選択肢があります。それぞれのメリットやデメリットを踏まえて自社・自分に適した方法を利用して買収候補先を見つけることが重要です。
また、法人でも個人でも会社を買う基本的な流れは同じですが、個人ならではの気をつけるポイント(専門家を利用する必要性は法人が会社を買う場合よりも高いなど)に配慮する必要があります。
そして、M&Aは買収が完了すれば成功というわけではありません。もちろん最終契約の締結やクロージング手続きの完了まで至ることは重要ですが、買った会社を成長させることや経営者も従業員も楽しく幸せに仕事が続けられることはより大切です。
したがって、デューデリジェンスをしっかりと実施して会社を買うリスクを詳細に調査・検討して、表明保証なども利用して、リスクの顕在化に備えておくことは、会社を買う際に極めて重要です。
法人の買収をご検討の方は、希望条件(地域、業種など)を登録することで、条件に合致した譲渡案件のご提案や新着案件情報を受け取ることができます。まずは登録から始めてみませんか?