【SFUG CUP 2022優勝】Salesforceで大企業の壁攻略 DXを浸透させた秘策
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セールフォース・ジャパン主催の「SFUG CUP 2022 第10回Salesforce 全国活用チャンピオン大会」が9月14日に開催され、日本M&Aセンター データマーケティング部の藤田舞さんが大企業部門に出場し、初優勝を飾りました。決勝大会で発表した日本M&AセンターのSalesforce活用方法をお届けします。
Salesforceとは、世界トップシェアを誇るCRM(顧客関係管理)サービスで、顧客情報の管理からデータ分析、マーケティング活用などを社内で促進し、営業活動や商談をサポートするクラウドサービスです。国内外の数多くの企業と接点を持つ日本M&Aセンターは2014年に導入し、Salesforceを活用して成長を加速させてきました。
SFUG CUP 2022(第10回Salesforce 全国活用チャンピオン大会)は、Salesforce導入企業の担当者が自社の活用事例のプレゼンテーションを行い、「技術」「業務改善」「定着化」の3つの観点で競う大会です。今回は過去最多48社が出場し、中小企業部門と大企業部門の予選を勝ち抜いた計8社が、決勝の舞台で自社の取り組み事例を発表しました。
手探りのシステム構築で立ちふさがったシステム拡張の壁
日本M&Aセンター データマーケティング部は、自社のSalesforceにおけるデータ分析や機能改修を担い、M&Aプロセスで重要なマッチングにおいて大きな役割を果たす部署です。
新卒入社4年目で任されたSalesforce導入を任された藤田さん。新システムの導入や定着化は、当然容易なことではなく、周囲から”期待されているとはいえない”状態からのスタートだったといいます。導入期のユーザー数は100名ほど。M&Aコンサルタントが得た顧客の情報を手探りで情報入力して、管理と分析を開始しました。
M&Aニーズの高まりによる事業拡大で、社内のユーザー数が400名を超えたころ、機能拡張に課題が生まれました。業務の属人化や、情報を何度も書き換えることによるシステム管理の煩雑化。現場の要望に応えられないケースも出てきました。システムをカスタマイズすることは、一見便利になるようで、実は管理が大変になるという面もあるのです。2年近くを掛けてSalesforceの”標準機能のみ”に全面リニューアルし、システム開発を完全内製化しました。「リニューアルしたのに便利になっていないのでは?」と現場からクレームがでるなど順風満帆ではありませんでしたが、現場の声ひとつひとつに耳を傾け、改修を重ねたといいます。
例えば、Salesforce活用には数多くのマニュアルが整備されています。そうはいっても毎回マニュアルを探して開くのは手間で、確実にみてもらえるとは限りません。特に確認しなければならない事項をセクションに表示したり、同時並行でマニュアルを表示できるようURLを埋め込んだりして、現場の使いやすさを高める努力をしました。
定着への道のりで気付いた現場を巻き込むことの重要性
社員の理解促進のため、読みやすい「新人日記」というコラムの作成を開始。社内で寄せられた相談を社員の似顔絵付きで毎週配信・社内掲示し、漫画形式で遊び心がありつつも「こんな情報が欲しかった」という的を射た内容は社内で人気となりました。定着が進むにつれて、現場から「データ活用のためダッシュボードを一緒に作成してほしい」といった前向きで能動的な要望も増えていきました。社内研修では部長がダッシュボードの活用例を解説することで現場への活用方法の拡散にも成功しました。
一方で活用と定着の裏には成長企業ならではの悩みも。成長に伴って2021年、ユーザー数が1000名を超えると、①要望の増加に作業が追い付かない②システム改修の影響大③業務の要件に付いていけないといった「大企業の壁」に直面しました。
社内でSalesforce人材を育成する資格制度 全社を巻き込む動きへ
大企業の壁に悩んでいた時、総務部から「中途入社した社員をSalesforceが使いこなせるように研修してほしい」と頼まれました。M&A業務やSalesforce活用も未経験な社員をどこまで育てられるか不安を抱えながら始めましたが、約束の1か月を終えてみるとレポートやダッシュボードを一人で作成できるまでになりました。「これは他部署にも応用できる」と確信しました。
自信を深めた成功体験から社内資格制度を立案。初級資格(MDA=Management Data Analyst)と上級資格(MDD=Management Data Designer)を設けました。両資格は、Salesforceのレポートドリルと当社業務にマッチしたオリジナルカリキュラムで構成し、上級資格はSalesforceの認定アドミニストレーターを習得できるほど充実したカリキュラムです。社内資格の取り組みはセールスフォース・ジャパンからも認められています。
※認定アドミニストレーターは、Salesforceのシステム管理者を認定するSalesforce公認の資格で、全世界共通のスキルを証明できることから、ポータブルスキルとして注目されています。
受講者は、所属部署に合わせたダッシュボードを作成して、上司に成果を報告することで修了します。修了者や部長からは、「ダッシュボードより問題点が洗い出され仕事が効率的になった」「コミュニケーションが活性化した」との声が次々に寄せられました。
修了したあるコンサルタントは、出張先の隙間時間で他の企業を追加訪問できる「ついでに訪問リスト」のレポートを作成し、出張先での業務効率化と生産性向上を提案。同じ部署の6人が合同でダッシュボードを作成した際は、「業務課題を同じ視線で共有できるため、皆が積極的に業務改善できるようになった」とボトムアップの強化につながりました。2022年9月時点で、22歳の新入社員から60歳までの幅広い140名以上の修了者を輩出する順番待ちの人気資格となり、現場での業務改善の動きが全社に広がりました。各部署の現場で要件定義と改修を平行して実施できるようになったことは、「大企業の壁」の攻略に大きく貢献しました。
キャリアの幅を広げる多様な働き方のモデルも創出
資格制度は、自部署の業務改善をリードする人材育成だけでなく、個人のスキルアップと多様な働き方も可能にします。例えば子育て世代の社員が育休明けの時短勤務中に、アドミニストレーターとしてスキルアップ期間に充てます。育児も落ち着きフルタイムで復職したら、部署に戻ってSalesforceの推進責任者として活躍できる未来も描けるのではないでしょうか。病気や介護による長期離職していた社員も、資格を活用することで職場復帰時の新しいキャリアの道しるべとなるはずです。
偶然生まれた社内資格制度というアイデアは、「自らシステム設計を理解できれば業務を改善できる」という意識を社内に浸透させ、会社全体のDXを推進することに成功しました。集積されたデータが活用される環境に生まれ変わりました。業務改善をリードする人材育成とスキルアップ、多様な働き方の可能性をも導き出す社内資格制度は、今後も日本M&Aセンターの成長ツールとして大きな価値を創出していきます。