MBIとは?MBOとの違いやスキーム、活用するメリットを解説
⽬次
- 1. MBIとは?
- 2. MBIと「MBO」の違い
- 3. MBIと「TOB」「LBO」との違い
- 3-1. TOBとは
- 3-2. LBOとは
- 4. MBIが行われるケース
- 4-1. 技術力やブランド力はあるが、経営がネックになっている時
- 4-2. 不採算事業を立て直す必要がある時
- 5. MBIで用いられるその他の手法
- 5-1. ファンドと共同出資をする
- 5-2. 対象企業自らが外部から経営の専門家を招へいする
- 6. MBIのメリット
- 6-1. 企業価値が向上する
- 6-2. 企業のマネジメント力が向上する
- 6-3. 不採算事業の切り離し・立て直しができる
- 7. MBIのデメリット・注意点
- 8. 終わりに
- 8-1. 著者
経営状態が振るわない企業に、外部の専門家を送り込み経営の立て直しを行う方法をMBIと言います。本記事ではMBIのスキームやメリット・デメリットを紹介するとともに、似た名称であるMBOやTOB、LBOとの違いについても説明します。
MBIとは?
MBIとは、投資家・ファンド・金融機関等が企業を買収し、経営権を握った後に経営の専門家を送り込み、企業の立て直しや、企業価値向上を図る買収形態の一つです。 企業価値が向上した後、保有株式を売却して、キャピタルゲインを得ることを主な目的として行われます。
「素晴らしい商材や技術力を保有しているが、経営がネックで伸び悩んでいる」、そのような企業を対象にMBIは実行されます。
なお、MBIは「Management Buy In」の頭文字を取った言葉です。経営権を獲得できる割合まで株式を保有した後に、対象会社へ人材を派遣するため、経営管理を表す「Management」と、株の買い付けを意味する「 buy in」が組み合わせられています。MBIによって招聘される専門家は、買い手側に属さない人物から選ばれるため、直接株を保有しません。
MBIと「MBO」の違い
MBIと似ている言葉に、MBOがあります。MBOとは「Management Buy Out」の頭文字の略語であり、日本では「経営陣買収」と呼ばれています。
MBOは企業の経営陣が自社株式を買い取り、経営権を取得して独立を目指す方法 です。「経営の効率化」を主な目的としており、MBIの目的である「キャピタルゲインの獲得」とは異なります。
またMBIでは社外の人間が経営を担いますが、MBOでは元社員が経営を担当する点も異なります。
MBIと「TOB」「LBO」との違い
TOBとは
TOBとは「Take Over Bid」の略語で、日本では株式公開買付けと言います。企業の買収や子会社化のための手法の一つで、 不特定多数の株主に対して、あらかじめ「買付期間」「買付株数」「買付価格」等を公告し、証券取引所の市場外において株式買付けを実施することを指します。
市場で株式を買い進めると株価が一気に上昇する可能性があるため、それを避けるために市場外にて取引が行われます。
LBOとは
LBOは「Leveraged Buy Out」の略語で、売り手側企業の保有資産や将来におけるキャッシュフローを担保に、買い手側企業が銀行などから資金を調達してM&Aを行う方法です。
買収に必要な資金調達を行うことや、必要に応じてSPC(特別目的会社)と呼ばれる会社を設立する点が特徴です。LBOで企業を買収した場合は、買い手側企業から経営者を送り込むケースが多くみられます。
MBIのように将来的なキャピタルゲインの獲得を目的にTOBやLBOを実行するケースも存在しますが、買い手側企業が主体的に経営に関与するのが一般的です。
MBIやMBOは 経営を誰が担うのか という点が重要であるのに対して、TOBやLBOでは M&Aの方法 に重点が置かれています。
MBIが行われるケース
前述の通り、MBIが行われる場面には主に以下のケースが挙げられます。
技術力やブランド力はあるが、経営がネックになっている時
企業が卓越した技術力やブランド力を保有しているのにも関わらず、経営面がネックとなりそれらの長所を生かし切れていない場合には、MBIによって外部から招かれた優秀な経営者による改善が見込まれます。
不採算事業を立て直す必要がある時
不採算事業を立て直す必要がある場合、事業の選択と集中、スリム化といった高度な経営戦略の知識・経験が求められます。
対象企業の経営陣にその知見を求めることが難しい場合にも、MBIによる専門家の招へいが有効になるでしょう。
MBIで用いられるその他の手法
これまでご紹介してきたように買い手が外部から経営の専門家を送りこむ以外にも、次のようなスキームが用いられるケースがあります。
ファンドと共同出資をする
経営に意欲を持つ経営者候補が、投資ファンドと共同で出資するスキームです。
経営者候補が自ら対象企業を発掘して、利益を獲得できるかどうか調査を行います。そして共同出資を求める投資ファンドに共同買収を提案して、買収資金を提供してもらう流れになります。
このスキームは外部から経営の専門家として経営者を送り込む一般的なスキームと類似しますが、対象会社の株式を保有するか、しないかという点が異なります。
経営者の種類 | 対象会社の株式の保有 |
---|---|
ファンドと共同出資する経営者 | 買い手当事者として株を保有する。 |
外部から招へいされた経営者 | 買い手に属さないため、直接的に対象会社の株は保有しない |
対象企業自らが外部から経営の専門家を招へいする
対象企業が自ら、外部から経営陣を招く場合もあります。
市場などの外部環境に大きな変化が生じたような場合、現状とは別のビジネスへの転換・移行を考えざるを得ないケースがあります。そうした場合、投資ファンドに支援してもらいながらMBIを実施して、新たなビジネス事業に精通した経営陣の招へいを行うケースも見られます。
MBIのメリット
MBIのメリットについて見ていきましょう。
企業価値が向上する
前述の通りMBIでは主に企業価値向上によるキャピタルゲインの獲得を目的にしています。経営能力に秀でた新しい経営者のもとで事業を展開することで、これまで十分に活用できていなかった会社の資産や従業員の能力をフル活用できるようになり、結果として企業価値を向上させることが期待できます。
企業のマネジメント力が向上する
不採算企業の立て直しなどマネジメント経験が豊富な経営者が就任することで、業務のマネジメント力の向上が期待できます。具体的には、これまで責任の所在や目標が曖昧だった業務について、責任者と目標が分かりやすく設定され、業務管理体制が構築されることが期待できます。
経営者のマネジメント能力は、役員から役職者、一般社員へと確実に伝わっていくため、企業全体のマネジメント力の向上が期待できます。
不採算事業の切り離し・立て直しができる
企業の立て直し経験が豊富な経営者が就任すれば、これまで手がつけられなかった不採算事業を本体から切り離して、コア事業に経営リソースを集中させて得意分野に尽力できる可能性があります。
つまり、MBIを活用して経営陣が変われば、新たな経営方法によって事業の効率化が図れるメリットがあると言えます。
MBIのデメリット・注意点
他の買収形態と比べて、MBIを実行する上でどのような点に注意すべきでしょうか。
MBIを活用して新しい経営者が送り込まれると、大きく経営方針が変わる可能性があります。加えて外部から新しい経営者が送りこまれるため、従来と異なる業務の進め方や風土に従業員が戸惑い、新経営陣に対して反発が起こる可能性も考えられます。
そうした事態を避けるため、従業員をはじめ取引先などステークホルダーに対する対策をあらかじめ検討しておく必要があります。
終わりに
MBIは、投資家・ファンド・金融機関等が企業を買収し、経営権を握った後に経営の専門家を送り込み、企業の立て直しや、企業価値向上を図る買収形態の一つです。
MBIは経営者が変わるため、従業員の反発や離反が発生しやすいとも言われており、従業員の協力が得られないおそれもあります。したがって、自社だけの判断でMBIを進めることはせず、社外の専門家(弁護士やM&Aコンサルタントなど)に相談をしながら進めることをおすすめします。