経営者やM&A支援機関が参加 実体験と学術的分析からM&Aを学ぶ
⽬次
- 1. M&A経験のある経営者が実体験を語る
- 2. 研究者の視点から愛知県の後継者問題を分析
- 2-1. 著者
M&Aの魅力を伝える「M&A TOKAI EXPO2022」(中部経済新聞社主催)が2022年10月26日、名古屋市のウインクあいちで開催され、日本M&Aセンター名古屋支社が初出展しました。イベントには東海エリアに拠点を持つM&A支援機関など11社が参加し、セミナーや相談ブースを通じて、来場者に最新情報をお届けしました。日本M&Aセンターが担当したセミナーをご紹介します。
M&A経験のある経営者が実体験を語る
日本M&Aセンター西日本事業法人部の安島峻平氏と田代多郎氏を司会進行役に、製造業が盛んな東海地方に合わせて、航空機部品を製造する東明工業株式会社(愛知県知多市)の二ノ宮啓社長を招いたディスカッションを企画。5社の企業をM&Aで譲り受けた東明工業様に、譲り受けのポイントやPMI(M&A後の統合作業)の方法を伺い、定員を超える34名が参加しました。
同じ投資額に対して、既存の企業を譲り受けるか設備投資するか迷っていたという二ノ宮社長。既存の企業をM&Aで譲り受けることは「設備が増える上に、従業員もお客様も付いてくる」と決断した理由を語りました。実際にこれまで大手企業一社からの受注に依存していましたが、M&Aによって企業を譲り受けたことで、譲渡企業の取引先だった別の大手企業からも受注を獲得できたメリットを紹介しました。
PMIで譲受け企業を導くためには、「現場社員の心をつかむこと」が大切だと話します。「我々企業の傘下に入って良かったと思ってもらうために、些細なことではあるがトイレを改装した」とM&AのPMIで語られるクイックヒットを実践してきました。M&A後の投資回収について、「キャッシュや利益といった目に見える部分での回収は十年以上かかったが、シナジー効果は5年程で出てきた」と、譲受け企業ならではの経験を語りました。
研究者の視点から愛知県の後継者問題を分析
イベント後半では、日本M&Aセンター中日本会計事務所部の伊藤泰之部長が、愛知大学経済学部の打田委千弘教授を招き、データ分析から愛知県の事業承継の傾向を解説しました。
愛知県を名古屋市、名古屋市以外の尾張、東三河、西三河の4エリアに分け、それぞれの後継者不在率や後継者候補を統計学から独自に分析。特に後継者不在率が高いエリアは名古屋市と東三河であると指摘しました。そのうち後継者候補について、名古屋市は従業員承継や外部招聘を検討している企業が多いのに対し、東三河は未検討の割合が高く、打田教授は「東三河エリアの経営者たちは事業承継問題に悩んでいる方がほかの地域より多いのではないか」と分析結果から導きます。
打田教授は「廃業企業の上位25%の労働生産性は、存続企業の中央値を大きく上回っており、生産性の高い企業の退出が一定程度生じている(2020年中小企業白書)」と紹介し、廃業を救うM&Aが非常に重要だといいます。「アベノミクスによって財政政策や金融政策を打ち出しても経済が良くならなかったのは、日本経済のサプライサイドを強化してこなかったから。地域の中小企業の労働生産性を上げられなかったから。地域の中小企業を守り、労働生産性を維持すれば賃金も上がるはず」と、M&Aの可能性を語りました。
日本M&Aセンターはイベントやセミナーを通して、全国の後継者問題に悩む経営者にM&Aの有効性を広め、課題解決に貢献してまいります。
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