中小企業M&Aの肝はマッチングにあり 運命の1社との出会いを促す

M&Aを支える匠
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M&Aにおいて最大の肝といわれる企業同士の「マッチング」。中堅・中小企業のM&Aにおいては、条件だけでなく、企業文化やトップ同士の相性など、目に見えない要素が2社の”相性”を大きく左右します。

日本M&Aセンターでは、610名のM&Aコンサルタントが、経験をもとに月約17,000件の企業をマッチングし中堅・中小企業に提案しています。その裏には、マッチング促進を担う専門部署であるマッチング戦略部が存在し、「マッチング大会」の企画や、「デジタルマッチングシステム」を開発しています。

日本M&Aセンターのマッチング戦略部の中心メンバーである大櫛 愛也さんと林田 佳南穂さんに、M&Aの相手探しの裏側を聞きました。


(写真左から)日本M&Aセンター マッチング戦略部 林田 佳南穂さん 大櫛 愛也さん

膨大な情報を整理しすべての企業に相手を見つける

―マッチング戦略部はどのような部署ですか?

大櫛: 当社はM&A仲介業界最多の610名のコンサルタントが在籍しており、日々膨大な新しい情報が入ります。譲渡希望企業に最も合う良い相手を探すにあたっては、できるだけ多くの候補先から選ぶ必要があります。長年育ててきた自社の運命を託す相手企業は、わずか数社の候補より、数百社の候補から選びたいですよね。その意味で、仲介会社の規模は重要な意味を持っています。

一方で、情報があふれてコンサルタントがM&A案件情報や顧客ニーズを的確に把握しきれなければ、お相手探しは困難になります。当社と契約いただいたすべての譲渡希望企業の相手を見つけるべく、システムの力を活用してマッチングを促進し、生産性向上を図るのが私たちの部署です。

蓄積データを分析し、精度の高いマッチングシステムを追求する

—具体的にどのような取り組みをされていますか。

これまで蓄積したマッチングデータを分析し、コンサルタントがマッチング時に必要な情報に素早くリーチできるようなシステム作りをしています。コンサルタントとヒアリングを重ね、譲渡案件の状況の定期確認もしています。

さらに過去の成約事例の傾向からマッチング候補企業をシステムが提案する「AIマッチング」や、譲受け企業の希望条件を抽出する「買いニーズマッチング」、容易に類似業種の検索ができる「キーワードマッチング」など独自ツールの開発・運用をしています。

最近では日々いろいろな機能や施策をリリースしているため、社内のコンサルタントからは、マッチングのアイデアツールが増えてありがたいという声もいただきます。

一方で、単純にマッチング件数が増えれば良いかというと、一概にそうとはいえません。マッチングの質を担保するため、マッチング後の「提案率」など、質を測る数値のモニタリングもしています。マッチングの量と質、速さの追求は、マッチング期間の短縮や担当者の工数削減につながり、結果的にお客様へより良い提案が可能になると考えています。

コンサルタントが譲渡企業オーナーの想いや案件の魅力を社内で発表する場

―コンサルタントが担当案件を社内で発表しあう「マッチング大会」の企画や開催もしていますね。

林田: 譲渡案件を担当しているコンサルタントが、譲受け案件を担当しているコンサルタントに向け、担当企業の概要や魅力を紹介したり、マッチングポイントや希望条件を解説したりしています。

今の形態になったのは2020年からで、毎週月曜日に1時間半程度、オンラインで開催しています。毎回約50名のコンサルタントが参加しており、すでに70回以上開催してきました。

デジタルツールや通常のマッチングだけではお相手が見つからない案件、資料・データだけでは良さが伝わりにくい案件も含め、担当コンサルタントが譲渡企業に代わってアピールするのです。最後はやはり人。デジタルの分野ではカバーしきれないマッチングを行う重要なイベントです。

―どのような成果が出ていますか?

林田: 2021年度では、約600案件を発表いただきました。発表者希望者も多く、1か月後の枠が埋まるほどです。社内では、「交渉相手が見つかった」「成約できた」とご報告いただくこともあり、コンサルタントが多く在籍している当社だからこそ実現できている、必要な取り組みだと思います。


―譲受け企業版マッチング大会も新たに始まりました。

林田: 譲渡企業だけでなく、譲受け意欲の高い企業も社内で発信したいとのコンサルタントの声を受け、初めて開催。「こんな会社を譲り受けたい」というニーズや「譲受け企業としての魅力や想い」を発表していただきました。当日は100名以上のコンサルタントが参加し、コンサルタント同士の活発なコミュニケーションやマッチングに繋がりました。今後も継続して開催していきたいと考えています。

マッチング大会以外にも、コンサルタントの中でハイパフォーマーの傾向を分析し、社内研修で発信したり、社内報で毎月「マッチング通信」という連載を持ち、マッチングツールの活用方法や便利な新機能を共有したりしています。効果的なマッチング、質の高いマッチングのために、あらゆる角度から何ができるか検討し、デジタルとリアルの融合を考えています。

コンサルタントの頭の中のロジックをシステムに

―今後について教えてください。

大櫛: 譲渡企業様に良いお相手と確実に商談に進んでいただけるよう、マッチングの顧客カバー率を向上する施策を検討しています。

フロー自体も抜本的に変え、極力自動化することで、コンサルタントがお客様とのコミュニケーションにより集中できる環境をつくっていきたいです。

現状コンサルタントが頭の中で考えているマッチングロジックをシステムに落として標準化するには、業種別のマッチング知見の棚卸しや、これまでのデータの分析が必須です。

かつ、システムの枠組みができたところで、同時に質の高いデータが積み上げられていないと、実際に走り出そうとしたときにお客様に受け入れられるものになりません。即座に一足飛びには実現できないのでステップバイステップにはなりますが、未来を見据えた構想から企画をすでにはじめております。

マッチングにおいては、マッチング大会のようなリアルなやり取りの活性化と、デジタルツールをどう融合させるかがポイントで、どちらが欠けてもいいマッチング・生産性向上は実現できません。
これからもマッチングの面からお客様のご期待にこたえ、イノベーションを起こし、すべての企業にお相手を見つけられるようにしていきたいです。

―マッチングはM&Aの要であり、これからのイノベーションが期待できる領域ですね。ありがとうございました。

著者

M&A マガジン編集部

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