ECを使って売上をあげるためには!?また成長戦略としてのM&Aとは
⽬次
- 1. EC業界の動向とEC販売で成功する秘訣とは?
- 1-1. EC業界の展望は
- 2. 今後確実に伸びるマーケット、入り口でこけないために必要なこと
- 3. 重要なフレームワーク
- 4. EC店舗でトップに上り詰めた後、考えた成長戦略とは?
- 4-1. トップになり、5年後のEC業界の展望を考える
- 4-2. まず始めはセルサイド、バイサイド決めていなかった
- 5. M&Aの交渉を通じて感じたことについて
- 5-1. 社名、社長の待遇、屋号など変わらないM&A
- 5-2. 売り手企業が非常に勉強になった買収監査
- 5-3. 今振り返って思う、こうしておけばよかったと思う事
- 5-4. 著者
日本М&Aセンター食品業界専門グループ、シニアチーフの白鳥です。
当コラムは日本М&Aセンターの外食・食品専門チームの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
本日はEC販売に関する事例の紹介をさせて頂きます。ゼロから食品のEC販売を手掛けられ、楽天市場でジャンル別トップまで上り詰めたonce in株式会社 長坂社長。そしてさらなる成長戦略を推進するためM&Aでonce inを譲渡された経緯について、4月に実施したセミナーのハイライトも交えまして紹介します。
EC業界の動向とEC販売で成功する秘訣とは?
EC業界の展望は
経済産業省ホームページによると、国内のBtoCのEC市場規模は2020年で1兆9,278億円と2兆円に迫るところまで伸びてきております。
7年前の2013年は1兆1,166億円であり、10年以内に173%も市場が伸びております。また小売店のEC化率は2020年で8%とこちらは7年前と比較すると209%と2倍以上まで増えてきています。国内のどの産業を見渡しても最もマーケットが伸びている業種のひとつと言えます。
2020年に関しては新型コロナウイルスが流行し、宿泊、旅行などのサービス業のEC売上が下がっているため2022年以降、コロナ禍が落ち着きこれらの業界の需要が回復すればさらにマーケットが加速していきます。一方で米国のEC化率は21%、中国のEC化率は32%ほどで少し頭打ち感がでており、日本は少なくとも5年ほどは成長の白地があると言える市場です。
今後確実に伸びるマーケット、入り口でこけないために必要なこと
これだけ伸びているマーケットですので、さまざまな規模、業種が参入してきますがほとんど8割以上のお店がサイトを作ったものの安定的に物が売れず淘汰されることとなってしまいます。楽天市場でも長坂社長の肌感覚では「1割もいない店舗数が楽天の9割以上の売り上げを作っている感覚です」と言うように、売れる店、売れない店、非常に優勝劣敗の差が激しい領域と言えると思います。
そんな中まず何を考え、どんなことに注意すれば勝てるのか、長坂社長はこう言います。「しっかり経済、環境を分析したうえで、売る商品を間違えないこと」当たり前のことに思えますがEC独特の分析の仕方があるようです。
重要なフレームワーク
「まず外部環境を5つの軸で分析すること、また4Pで自社の商品を分析すること、また商品を企画、製造、販売、顧客のリアクション、改善、このPDCAをしっかり回していったうえで、競合×商品のマップ上のどこで戦っていくのか、しっかり戦略に基づいて世に商品を届けるべきだ」と長坂社長は言います。
どこまでもその分析の仕方はロジカルで数学的。マーケティング手法をECなりに理解したうえで改善とプロモーションを行っていく必要があります。
また、時代によって顧客のニーズは変化していくのでその流れをくむことも大事になります。フィードバックの量が多いのもEC業の特徴です。
「どこに向かっていて、いま正しいことをやって売れているのか?売れていないのか?道しるべがない中手探りで暗いトンネルを進んでいても疲弊し心もすさんできますので、上記のようなフレームワークは羅針盤になる」と長坂社長は言います。
EC店舗でトップに上り詰めた後、考えた成長戦略とは?
トップになり、5年後のEC業界の展望を考える
そんな長坂社長はEC事業を本格的に開始され約10年弱で楽天市場ジャンル別トップ、表彰もされるようなお店にのし上がります。
売上高も順調に伸長し、個人事業から会社経営に移行しすべてが順風満帆に進んでいましたが、社長はもっと先の未来を予想していました。
とあるトップのショップは水産を扱うお店でしたが、お肉を扱ったり、総菜を扱うことではじめて売れ始めていることに気づきます。
肉屋が肉を売る、魚屋が魚だけを売る時代は終わり、未来は垣根を越えてくるんじゃないか。そう長坂社長は感じたそうです。愛着のある自分の会社をさらに飛躍させていくためには、どこかと組んで伸ばすことも経営上必要である、と感じるようになったそうです。
まず始めはセルサイド、バイサイド決めていなかった
そんなタイミングに日本M&Aセンター白鳥と接触しました。
初めての面談では3時間ほど大阪の地元の喫茶店で色んなお話をさせていただきました。
長坂社長のこれまでの苦労話や、今後の業界のこと、ご自身の私生活のことなどさまざまです。後から聞いた話では、「この時はまだ会社を買うのか、売るのか決めていなかった。まずどんなものか、私自身体験しないと分からない性格で、白鳥さんが飛び込んでみようと思わせてくれたので、いろいろ会社の話を聞きたいと思った」そのような経緯で当社と契約されました。
M&Aの交渉を通じて感じたことについて
社名、社長の待遇、屋号など変わらないM&A
まず、前提として、once inは成長している黒字企業、社長も40代でバリバリ働ける。ということで、経営に困っている企業ではありません、所望されていることはonce inの早い成長の実現、これに尽きます。
ですので、今回のM&Aは社名や屋号、社長の待遇、従業員さんの待遇、すべて変わっておりません。株主だけが変わったのみです。むしろ長坂社長が買い手企業の事業へも積極的に関わっていくことで買い手企業にも良い影響を与えると言えます。
売り手企業が非常に勉強になった買収監査
M&Aのディールの中でも特に売り手企業社長のストレスがMAXになるのが、買収監査というイベントです。
別名デューデリジェンス、DDと言ったりします。買い手企業と基本合意契約と締結し、独占交渉状態となったうえで、買い手企業が売り手企業について書面の確認や2時間以上に及ぶインタビューを実施し、会社の隅から隅まで調査するのがDDです。重箱の隅をつつくような質問がきたり、買い手企業の経営水準と比較して見られることもあり非常にストレスフルな時間となります。
ただ、長坂社長はこのDDの経験について、「自社を客観的に見れるよい時間であった。お金を払ってでもやった方がいい」と振り返っています。ずっとオーナー経営をやっていると自分の会社を客観的にみることなどはできません、臭いものにふたをしてしまうケースもある中、色々な指摘が今後のプラスの材料になると長坂社長は高い視座でDDの対応をしました。
今振り返って思う、こうしておけばよかったと思う事
「20年弱くらい経営してきた会社を売るという選択は、自ら手塩に育てきたわが子を手放すようなもの。
正直実感がわかなくて夜な夜な公園に行って、涙する日も正直ありました。でも迷ったり、悩んだりしたとき担当者である白鳥さんに一個一個相談に乗ってもらいました。
相談する中で、白鳥さんから一度としてM&Aした方がいいとは言われませんでした。自らが考え、悩み最終的に選択した。だからこそ寄り添ってもらえる存在がいたのはありがたかったです。今振り返るとあのとき、そこまで悩む必要はなかった、落ち着けよと言いたいですね」と長坂社長は爽やかに振り返ります。
いかがでしたでしょうか?
今後も食品業界専門グループから最新の業界情報をお届けさせて頂きます。
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