ECを使って売上をあげるためには!?また成長戦略としてのM&Aとは

白鳥 雄飛

日本M&Aセンター業種特化2部 シニアコンサルタント

業界別M&A
更新日:

⽬次

[非表示]


日本М&Aセンター食品業界専門グループ、シニアチーフの白鳥です。
当コラムは日本М&Aセンターの外食・食品専門チームの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。

本日はEC販売に関する事例の紹介をさせて頂きます。ゼロから食品のEC販売を手掛けられ、楽天市場でジャンル別トップまで上り詰めたonce in株式会社 長坂社長。そしてさらなる成長戦略を推進するためM&Aでonce inを譲渡された経緯について、4月に実施したセミナーのハイライトも交えまして紹介します。

EC業界の動向とEC販売で成功する秘訣とは?

EC業界の展望は

経済産業省ホームページによると、国内のBtoCのEC市場規模は2020年で1兆9,278億円と2兆円に迫るところまで伸びてきております。

7年前の2013年は1兆1,166億円であり、10年以内に173%も市場が伸びております。また小売店のEC化率は2020年で8%とこちらは7年前と比較すると209%と2倍以上まで増えてきています。国内のどの産業を見渡しても最もマーケットが伸びている業種のひとつと言えます。

2020年に関しては新型コロナウイルスが流行し、宿泊、旅行などのサービス業のEC売上が下がっているため2022年以降、コロナ禍が落ち着きこれらの業界の需要が回復すればさらにマーケットが加速していきます。一方で米国のEC化率は21%、中国のEC化率は32%ほどで少し頭打ち感がでており、日本は少なくとも5年ほどは成長の白地があると言える市場です。

今後確実に伸びるマーケット、入り口でこけないために必要なこと

これだけ伸びているマーケットですので、さまざまな規模、業種が参入してきますがほとんど8割以上のお店がサイトを作ったものの安定的に物が売れず淘汰されることとなってしまいます。楽天市場でも長坂社長の肌感覚では「1割もいない店舗数が楽天の9割以上の売り上げを作っている感覚です」と言うように、売れる店、売れない店、非常に優勝劣敗の差が激しい領域と言えると思います。

そんな中まず何を考え、どんなことに注意すれば勝てるのか、長坂社長はこう言います。「しっかり経済、環境を分析したうえで、売る商品を間違えないこと」当たり前のことに思えますがEC独特の分析の仕方があるようです。

重要なフレームワーク

「まず外部環境を5つの軸で分析すること、また4Pで自社の商品を分析すること、また商品を企画、製造、販売、顧客のリアクション、改善、このPDCAをしっかり回していったうえで、競合×商品のマップ上のどこで戦っていくのか、しっかり戦略に基づいて世に商品を届けるべきだ」と長坂社長は言います。

どこまでもその分析の仕方はロジカルで数学的。マーケティング手法をECなりに理解したうえで改善とプロモーションを行っていく必要があります。
また、時代によって顧客のニーズは変化していくのでその流れをくむことも大事になります。フィードバックの量が多いのもEC業の特徴です。

「どこに向かっていて、いま正しいことをやって売れているのか?売れていないのか?道しるべがない中手探りで暗いトンネルを進んでいても疲弊し心もすさんできますので、上記のようなフレームワークは羅針盤になる」と長坂社長は言います。

EC店舗でトップに上り詰めた後、考えた成長戦略とは?

トップになり、5年後のEC業界の展望を考える

そんな長坂社長はEC事業を本格的に開始され約10年弱で楽天市場ジャンル別トップ、表彰もされるようなお店にのし上がります。

売上高も順調に伸長し、個人事業から会社経営に移行しすべてが順風満帆に進んでいましたが、社長はもっと先の未来を予想していました。
とあるトップのショップは水産を扱うお店でしたが、お肉を扱ったり、総菜を扱うことではじめて売れ始めていることに気づきます。

肉屋が肉を売る、魚屋が魚だけを売る時代は終わり、未来は垣根を越えてくるんじゃないか。そう長坂社長は感じたそうです。愛着のある自分の会社をさらに飛躍させていくためには、どこかと組んで伸ばすことも経営上必要である、と感じるようになったそうです。

まず始めはセルサイド、バイサイド決めていなかった

そんなタイミングに日本M&Aセンター白鳥と接触しました。
初めての面談では3時間ほど大阪の地元の喫茶店で色んなお話をさせていただきました。

長坂社長のこれまでの苦労話や、今後の業界のこと、ご自身の私生活のことなどさまざまです。後から聞いた話では、「この時はまだ会社を買うのか、売るのか決めていなかった。まずどんなものか、私自身体験しないと分からない性格で、白鳥さんが飛び込んでみようと思わせてくれたので、いろいろ会社の話を聞きたいと思った」そのような経緯で当社と契約されました。

M&Aの交渉を通じて感じたことについて

社名、社長の待遇、屋号など変わらないM&A

まず、前提として、once inは成長している黒字企業、社長も40代でバリバリ働ける。ということで、経営に困っている企業ではありません、所望されていることはonce inの早い成長の実現、これに尽きます。

ですので、今回のM&Aは社名や屋号、社長の待遇、従業員さんの待遇、すべて変わっておりません。株主だけが変わったのみです。むしろ長坂社長が買い手企業の事業へも積極的に関わっていくことで買い手企業にも良い影響を与えると言えます。

売り手企業が非常に勉強になった買収監査

M&Aのディールの中でも特に売り手企業社長のストレスがMAXになるのが、買収監査というイベントです。
別名デューデリジェンス、DDと言ったりします。買い手企業と基本合意契約と締結し、独占交渉状態となったうえで、買い手企業が売り手企業について書面の確認や2時間以上に及ぶインタビューを実施し、会社の隅から隅まで調査するのがDDです。重箱の隅をつつくような質問がきたり、買い手企業の経営水準と比較して見られることもあり非常にストレスフルな時間となります。

ただ、長坂社長はこのDDの経験について、「自社を客観的に見れるよい時間であった。お金を払ってでもやった方がいい」と振り返っています。ずっとオーナー経営をやっていると自分の会社を客観的にみることなどはできません、臭いものにふたをしてしまうケースもある中、色々な指摘が今後のプラスの材料になると長坂社長は高い視座でDDの対応をしました。

今振り返って思う、こうしておけばよかったと思う事

「20年弱くらい経営してきた会社を売るという選択は、自ら手塩に育てきたわが子を手放すようなもの。

正直実感がわかなくて夜な夜な公園に行って、涙する日も正直ありました。でも迷ったり、悩んだりしたとき担当者である白鳥さんに一個一個相談に乗ってもらいました。
相談する中で、白鳥さんから一度としてM&Aした方がいいとは言われませんでした。自らが考え、悩み最終的に選択した。だからこそ寄り添ってもらえる存在がいたのはありがたかったです。今振り返るとあのとき、そこまで悩む必要はなかった、落ち着けよと言いたいですね」と長坂社長は爽やかに振り返ります。

いかがでしたでしょうか?
今後も食品業界専門グループから最新の業界情報をお届けさせて頂きます。

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

IT業界の最新動向やM&A事例が良くわかるITソフトウェア業界M&Aセミナー開催中

著者

白鳥 雄飛

白鳥しらとり 雄飛ゆうと

日本M&Aセンター業種特化2部 シニアコンサルタント

1985年、宮城県仙台市生まれ東京工業大学卒業後、㈱リクルートにて、法人営業を経験。その後、㈱日本M&Aセンターに入社。食品業界支援室にて、食品業界を中心に上場企業から中堅・中小企業まで幅広くM&Aの支援を行っている。主に40代のオーナー社長のM&Aの実績が豊富で売上5億~30億以上の案件の実績がある。

この記事に関連するタグ

「IT業界・食品業界」に関連するコラム

焼肉業界の現状とM&A戦略|焼肉店・焼肉屋M&A

業界別M&A
焼肉業界の現状とM&A戦略|焼肉店・焼肉屋M&A

当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。今回は勝又が「焼肉業界の現状とM&A戦略」というテーマでお伝えします。@cv_button1.外食産業:焼肉業界の今本項では、外食産業の中で特に近年、動きの激しい焼肉業界について現状を記載いたします。自明の事実も多々ございますがご一読ください。コロナ禍では“勝ち組”の焼肉業界2019年、世界中を騒がせた

多様化する食品業界の出口戦略|スイングバイIPO事例紹介

業界別M&A
多様化する食品業界の出口戦略|スイングバイIPO事例紹介

こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援グループの岡田享久です。当コラムは日本М&Aセンターの食品専門チームのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。今回は「多様化する食品業界の出口戦略」について解説します。@cv_button今注目の経営手法スイングバイIPO2024年3月26日、IoTプラットフォームを提供するソラコムが東京証券取引所グロース市場に上場しました。ソラコムは2015年

セブン&アイホールディングスに対する買収騒動について

業界別M&A
セブン&アイホールディングスに対する買収騒動について

当コラムは日本M&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。今回は水上が「セブン&アイホールディングスに対する買収騒動」についてお伝えします。@cv_button当社の関連ニュースセブン&アイ、カナダのコンビニ大手より買収提案米アーティザン、セブン&アイに買収案巡る情報開示要求今回の買収提案の概要セブン&アイホールディングスは2024年8月19日、アリマンタシォ

外食・食品業界における投資会社/PEファンドの動向

業界別M&A
外食・食品業界における投資会社/PEファンドの動向

当コラムは日本M&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。今回は高橋が「外食・食品業界における投資会社/PEファンドの動向」についてお伝えします。@cv_button外食・食品業界における投資会社/PEファンドによるM&Aの推移PEファンドを中心とする投資会社による外食・食品業界に対するM&A件数は、2024年に入り8月末時点で過去最高水準の件数を記録しており

【2024年上半期総集編】盛り上がりを見せる食品M&Aについて

業界別M&A
【2024年上半期総集編】盛り上がりを見せる食品M&Aについて

当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。今回は白鳥が過去一水準の盛り上がりを見せる食品関係のM&Aについて2024年上半期の事例に基づいて記載します。@cv_button食品全業種で実施!2024年上期大手企業M&Aニュース2024年上半期は、新型コロナウイルスが収束し、第5類に分類されてから2年が経ち、食品業界のМ&Aの件数はコロナ以前の水

過去最高の件数を記録した2024年上半期のM&A

業界別M&A
過去最高の件数を記録した2024年上半期のM&A

はじめに昨今、M&Aの話題を聞かない日はないほど、M&Aは経営オプションの一つとして確立し、世の中に広く浸透してきました。本コラムでは、具体的な件数を追いながら直近のM&Aトレンドについて解説していきたいと思います。@cv_buttonM&A件数で見る2024年のM&Aのトレンド早速ですが、今年の上半期(1月~6月)でのM&Aの件数を形態別にまとめましたのでご覧ください。(出典:レコフM&Aデータ

「IT業界・食品業界」に関連するM&Aニュース

一正蒲鉾、インドネシア持分法適用関連会社を子会社化

一正蒲鉾株式会社(2904)は、PT.KaiaAnugerahIndonesia(インドネシア・ジャカルタ)から、持分法適用関連会社であるPT.KMLICHIMASAFOODS(インドネシア・西ジャワ州)の株式を追加取得し、連結子会社化することを決定した。一正蒲鉾は、水産練製品・惣菜の製造販売及びきのこの生産販売を行っている。PT.KMLICHIMASAFOODSは、水産練製品製造販売を行っている

KDDI、セキュリティ企業のラックを買収、TOBを実施へ

KDDI株式会社(9433)は、株式会社ラック(3857)の普通株式を、公開買付け(TOB)により取得すると発表した。ラックは、TOBに対して賛同を表明している。また、TOB完了後、ラックは上場廃止となる見通し。KDDIは、大手総合通信事業者。日本国内の家庭・個人向けならびに企業向けの通信サービス、海外における企業・個人向けの通信サービスを展開している。ラックは、セキュリティソリューションサービス

「ロピア」展開のOICグループ、洋菓子店「トシ・ヨロイヅカ」を買収

株式会社OICグループ(神奈川県川崎市)は、2024年10月15日、株式会社サンセリーテ(東京都中央区、ブランド名:トシ・ヨロイヅカ)と株式譲渡契約を行い、子会社化した。OICグループは、食品スーパーマーケット「ロピア」をはじめ、生産・製造、貿易・卸、小売、外食まで幅広い事業を展開している。サンセリーテは、シェフパティシエ・鎧塚俊彦氏が代表をつとめ、洋菓子の製造・販売、パティスリー、エクアドルのカ

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース