「プラスチック製品製造業界の展望」 射出成型M&A事例を踏まえて

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プラスチック製品は、日用品や自動車部品など、我々の身近に多く存在しています。プラスチックは合成樹脂とも呼ばれており、多くの分子を人工的に合成したものを指します。

プラスチック製品は様々な成型法(製造法)があり、例えば射出成型、真空成型、圧縮成型などが挙げられます。今回は射出成型を行う企業のM&Aについて事例を踏まえながら考察していきます。

プラスチック製品製造業界とは

プラスチックは「①原油→②石油精製工場→③ナフサ→④プラスチック原料→⑤プラスチック加工→⑥プラスチック製品」という工程を経て製造されます。

プラスチック製品製造企業は、原料(樹脂)をプラスチックに成型する、プラスチックの組立・塗装などの加工を行う、といった製造がメインとなりますが、これに加えて、自社で金型製造を行っていたり、高機能プラスチック製品の開発や高機能成型技術を保有したりすることで他社と差別化を図っています。

今から2年ほど前にはコロナウイルスの感染拡大の影響で下がってしまった売上を戻すという動きが目立ちましたが、現在では

  • 自社で持っていない技術をM&Aで獲得する
  • 後継者のいない経営者がM&Aによって自社の譲渡を検討する
  • 国内マーケットがシュリンクしていく中で海外への進出を考える

などの動きを各社が画策しているフェーズに入っています。

以下では、どのようにM&Aを活用するべきか、事例を踏まえてお伝えします。

射出成型M&A事例

【譲渡企業】大幸化成 × 【譲受け企業】岐阜プラスチック工業

2021年、岐阜プラスチック工業が、プラスチック射出成形の大幸化成を譲り受けました。
岐阜プラスチック工業は、プラスチックの綜合メーカーとして「リスのプラスチックグループ」として事業展開をしている企業となります。主な製品は日用品や物流産業資材となります。
大幸化成株式会社は群馬県邑楽郡明和町に本社を構える企業で、金型の起工から成型、組立までを一貫して行える企業です。

岐阜プラスチック工業はこのM&Aにより広域関東圏における生産能力増強及び物流の最適化を図りました。大幸化成は75トンから850トンまでの射出成型機を保有しており、岐阜プラスチック工業からの受注に幅広く対応できることが予想されます。

【譲渡企業】エスジーディー × 【譲受け企業】イリソ電子工業

2022年、イリソ電子工業は射出成形金型製造・販売のエスジーディー(現:イリソエンジニアリング)を譲り受けました。

イリソ電子工業は、東証プライムに上場しているコネクタの製造、開発及び販売を主に行っている企業で神奈川県に本社を構えます。
エスジーディーは岩手県花巻市の金型製造、金型部品加工を行う企業です。
こちらのM&Aでイリソ電子工業は、エスジーディーの技術を生かし、金型製造の内製化が狙えます。

【譲渡企業】東邦製作所 × 【譲受け企業】昭和化成工業

こちらは、昭和丸筒子会社の昭和化成工業が東邦製作所を譲り受けた事例です。
昭和化成工業は奈良県で樹脂成型を行っている企業ですが、一方東邦製作所は栃木県で大型射出成型を行っている企業です。550トンから850トンまでの成型機を保有し、自動車のインパネ、苗木コンテナ、ローンベース(駐車場用緑化資材)、コンビニエンスストア向け店舗用ディスプレイ、大型雑貨製品などを製造しており、本件は、東邦製作所の大型射出成型の技術の取込が狙いです。

射出成型M&Aマッチング例

射出成型業界のM&Aも盛んになってきている中で、3つの事例に共通していることは、譲渡企業の技術を生かせるM&Aであるということです。
ここで、射出成型業界の「業種によるマッチングの例」をお伝えします。

【業種によるマッチング例】

射出成型×射出成型

目的:エリア拡大、射出成型機などの機械の取得、人材の確保
同業のM&Aとなります。同じ製品を製造している企業同士が提携する事例が多く見られます。

金型製造×射出成型

目的:金型製造機能の内製化
射出成型を行う企業が金型製造メーカーを譲り受ける事例です。外注していた金型製造を自社で行えることを目的にしております。金型製造の外注費が数千万から数億円になる場合もあるため、内製化を図られている企業が増えています。

化学品メーカー×射出成型

目的:射出成型のノウハウを保有し、製造機能の強化
ゴムやプラスチック製品製造を行う企業が、射出成型機能の獲得を目的としたマッチングとなります。

譲り受けを検討する前に、M&Aをどういう目的で行うのかを明確にし、その上で企業を選定する必要があります。目的が明確になれば、その後は以下のことを確認し、意向に沿っている企業を探すことが必要です。

確認事項の一例

  • 扱っている製品、製品のサイズ
  • 保有している射出成型機のトン数
  • 金型製造のノウハウを保有しているか
  • 販売先

具体的なアクション

譲受け企業は、まずはM&Aの目的を明確にすることが必要です。
譲渡を検討されている企業は、まずは準備を始めることが必要です。


準備とは、自社の現状把握、自社の株式価値を知ること、譲受け企業の選定などがあります。また、後継者が決まっていない企業がご親族や従業員の方への承継も視野に入れつつM&Aを検討する、というケースもあります。

早い段階から準備することで、適切なタイミングで実行のフェーズに進めます。しっかりと準備をしておくことで、満足のいく条件や希望のお相手を見つけることに繋がります。下記はM&Aにおけるよくある失敗例です。いずれも原因は準備を始めるのが遅かったことに集約されます。

失敗例1

これまで業績は良く事業承継のタイミングが来た際に相談しようと思っていた。会社の業績悪化といった外的要因からM&Aを検討し始めたが、満足のいく株価でのお相手が見つからなかった。

失敗例2

社長自身の体調の悪化や後継者が突然継がないことになり、M&Aをせざるを得ない状況となった。候補先は見つかったが、時間が決まっているため、条件やお相手先を妥協しなければならなかった。

失敗例3

自身が65歳で引退したいと思い、その直前からお相手探しを始めた。お相手を探し始めた際には業界のM&A市場は成熟しており、お相手探しが難航した。

このように、M&A戦略が成功するかどうかは会社の業績やM&A市場の動向などによって大きく左右されます。そのため、M&A戦略を成功させるには、早い時期からの準備が非常に重要となります。

まとめ

プラスチック製品製造を行う中小企業の経営者からも「事業拡大を図りたい」「後継者がいなくて困っている」等のご相談を多くいただいてます。

日本M&Aセンター 業種特化事業部では、業界ごとの論点に知見を持つ業種専門チームを組織し、M&Aのご支援をさせていただいております。プラスチック製品製造業界でも多数の成約実績がありますので、まずはお気軽にご相談いただければと思っております。買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。また、上場に向けた無料相談も行っております。

本コラムやM&Aへのご関心、ご質問、ご相談等ございましたら、下記のお問い合わせフォームにてお問い合わせください。

著者

日本M&Aセンター 業種特化事業部コラム制作担当

日本M&Aセンター  業種特化事業部コラム制作担当 

業種特化事業部はIT、建設・設備工事、住宅・不動産、食品、調剤薬局、物流、製造、医療・介護といった各業界に特化し、日々新たな案件に取り組んでいます。各コンサルタントのノウハウや知見を集め、有益な情報発信に努めてまいります。

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