製造業における6つのM&Aマッチングパターンとは?

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あらゆる業種が製造業への参入意欲を占めている

自社でM&Aを検討する際、まず初めに頂く質問は「どんな会社が買ってくれるの?」
「どんな会社を買えばいいの?」という、マッチングに関するご質問が非常に多いです。

例えば、M&Aが活況と言われる調剤薬局では、調剤薬局同士のM&Aがほとんどなので、社風や経営者同士の相性のみがポイントになることが多く、異なるビジネスモデル同士の相性を考えたマッチングを考える必要がないケースも多いです。

他方、製造業においては、同業がM&Aで買い手として名乗りを上げるケースというのは、おおよそ55%程度(当社過去仲介案件調べ)と、隣接業種・異業種が手を挙げるケースが実に半分程度の割合を占めます。隣接・異業種の例としては、商社、IT企業、コンサルティング会社等があげられます。

そのため、マッチングにおいては、同業大手を単純に上からあたっていくだけでは難しく、地域・業種を飛び越えて、M&Aの候補先をリサーチし、提案していく必要があり、マッチングの難易度としては非常に高いのですが、「あらゆる産業が製造業への参入意欲を示している」とも言えます。幅広い業種への提案を進め、自社のビジネスモデルの価値を正しく理解してもらうためには、たくさんのノウハウやネットワークを持っているアドバイザーに依頼をすることが非常に重要となります。

##6つのマッチングパターン(例:金属加工業のケース)
本コラムにおいては、「中堅・中小製造業が譲渡を検討する場合、どんな企業が名乗りをあげる可能性があるのか?」について、大きく6つのパターンを紹介します。

M&Aを検討するオーナー経営者の方々が、自社の永続と成長が期待できる相乗効果を生み出す上で、どのような企業と提携するのが一番良いのか、改めて考えるための材料にしていただきたいです。

日本の中堅・中小製造業の中でも最も多いと言われる「金属加工業」を例に見ていきましょう。
下記の表は、金属加工業の企業がM&Aを実施する際に、見込める相乗効果(シナジー)を図示したものです。


図:日本M&Aセンター作成
上記の表に則って考えた場合、シナジーの方向性としては、「販路拡大 :売り先を広げる(①~②)」か「総合化:やれることを広げる(③~⑥)」かのどちらかに該当することになります。

「販路拡大 or 総合化?」自社のM&A戦略に照らし合わせてみよう

「販路拡大 :売り先を広げる」というケースの場合は、基本的には同業同士のM&Aになることが多く、①異なる取引層を獲得する、もしくは②新しい製造業点を開拓するという、横展開のアプローチとなります。企業規模が大きくなることで仕入れコストを下げる、拠点数を増やすことで顧客フォロー体制を強化するなど、規模が大きい程、優位性が高まるビジネスモデルの場合は、メリットが大きいと言えます。

「総合化:やれることを広げる」というケースの場合は、「切削と板金」、「少量×量産」等、専門領域が異なる企業同士のM&Aになることが多いです。日本のものづくりは、多くの企業が工程ごとに分業体制をとっているケースが多いため、「餅は餅屋」という世界観のもと、ハイレベルな技術を持っている中堅・中小製造業がいたるところに存在していますが、近年は「総合化」を目指す中堅・中小企業が増加しております。

製造業における「総合化」とは例えば、「一貫生産(加工、組立・検査等一連の製造プロセスを一手に担う)」という意味合いを持つこともありますし、「垂直統合(商社が、製造プロセスまで手掛ける)」のようなシナジーを指すこともあります。
いずれにせよ、同業ではなく、自社がまだ手掛けていない技術や、異なるビジネスモデルの企業と手を組むことで、ビジネスモデルを変えていくというマッチングパターンも多く存在します。

「販路拡大シナジー」で規模の経済を追求

新しい製造拠点やマーケットを、もし自力で拡大していく場合、多くの設備投資はもちろんのこと、人材を新たに採用し、教育していく必要があることは言うまでもありません。
設備投資については、銀行からの借り入れのメドがつけばなんとかなるかもしれませんが、今日、多くの企業の悩みのタネとなっている「人材不足」という問題は、お金の力でどうにかなる問題ではありません。

そこでM&Aを通じて、既に熟練の技術者を抱えている企業を譲り受ける、もしくは人材・資金・設備等の経営基盤が整っている大手企業に譲渡をすることで、業界の中でより強いポジションを築くことが可能とあります。

その中で、①の系列補完とは、例えば自動車部品サプライヤーの中で、「トヨタ系」の企業と「ホンダ系」の企業がM&Aを行うケース等が該当します。エンドユーザーであるトヨタもしくはホンダが、難色を示すのでは?という懸念を示される方もいらっしゃいますが、近年は、エンドユーザー側が中堅・中小サプライヤーなど特定の系列への依存体制から脱却することを進めていることもあり、系列を超えたM&Aも決して珍しくはなくなっています。
エンドユーザーにとって、最も怖いのは、あくまで各々のサプライヤーが存続のチャンスを逃して、廃業に追い込まれてしまうケースなのです。

また②の地域補完については、その名の通り、地域を飛び越えたM&Aであり、単純に生産能力の増強のみならず、複数の拠点を抱えることで、販売・アフターフォロー等、顧客対応における付加価値アップも期待できます。

「総合化」を通じてビジネスモデルを変化させる

単純に規模を拡大するだけでは、マーケットのニーズに応えることができないというケースも近年においては増加しております。産業機械(自動機)メーカーを例に挙げてみましょう。


図:日本M&Aセンター作成
中堅・中小産業機械(自動機)メーカーは、特定の機械(加工機、組立機、検査機等)に特化している企業が多く、機械を発注する工場(ユーザー)側も、各々の設備をバラバラに発注するケースが一般的でした。

その場合、ラインビルダー(工程間を繋ぐ)としての役割は、ユーザー側の技術者(工機部隊)が担っていましたが、近年の技術者不足により、機械メーカーがライン一括で受注し、システム提案まで求められるケースが増加しております。

つまり、これからの中堅・中小製造業は、特定の技術に特化するだけでなく、複数の技術を獲得し、それらを組み合わせて、付加価値を高めないと生き残っていけない時代になりつつあるということです。

マッチングパターンの図表に照らし合わせると、④工程補完が上記に該当します。
現状は、外注しているが、本来的には内製化していくことで付加価値を高めることのできる工程があるのであれば、「内製化」というのが、M&Aでの有力な選択肢になるはずです。

また、同業同士のM&Aに近いケースでは、③技術補完等が選択肢として挙げられます。
一見、同業同士であっても、例えば少量多品種を得意とするメッキ業と、大量生産を得意とする同じくメッキ業の組み合わせ等、別の得意領域を持つ企業同士のM&Aは、③技術補完というパターンに属します。

他には、先に述べたような「商社×製造業でのM&A」など、商流の中での「上流⇔下流」に位置する企業同士が手を組む⑤商流補完というケースも存在します。
特定顧客との長期取引を通じて技術を磨いてきた中小製造業は、それゆえに別の販路・ネットワークを広げることを苦手としているケースも多く、商社等のマーケットとの強い結びつきのある企業と組むことは、弱点を補完するための強い一手になります。
他方、商社においても、仕入れた製品をそのまま販売して、利ザヤを稼ぐモデルではなく、より付加価値を高めていきたい考えのもと、製造機能を内製化することは、大きなメリットがあります。

まとめ

独立独歩で技術を磨いてきた中堅・中小企業にとって、どのような手を組むべきなのか、なかなかイメージしづらい部分があるかと思いますが、本コラムでご紹介した、いくつかのパターンをふまえて、自社の経営課題の解決に繋がる、提携先は果たしてどのような企業なのかを、考えるきっかけにしていただけますと幸いです。

著者

日本M&Aセンター 業種特化事業部コラム制作担当

日本M&Aセンター  業種特化事業部コラム制作担当 

業種特化事業部はIT、建設・設備工事、住宅・不動産、食品、調剤薬局、物流、製造、医療・介護といった各業界に特化し、日々新たな案件に取り組んでいます。各コンサルタントのノウハウや知見を集め、有益な情報発信に努めてまいります。

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