親の会社を継ぐメリットとは?後継者に必要な能力・スキルなどわかりやすく解説

事業承継
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親の会社を継ぐ「親族内承継」とは?

親族内承継とは、経営者が自分の子どもや孫など親族に会社を引き継ぐことを指します。

親が経営する会社を継ぐと、経営権が引き継がれるとともに、会社の株式も引き継がれます。自社株式を所有することで、会社の経営に参画できます。

また会社が所有する建物や土地、設備などの有形資産のほか、ブランド価値や顧客データ、商標などの無形資産も承継の対象となります。

帝国データバンクの調査(※)によると、2022年の事業承継は「親族承継(同族承継)」により引き継いだ割合が34.0%、血縁関係によらない役員などを登用した「内部昇格」が33.9%、買収や出向を中心にした「M&A他」の割合が20.3%、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」は7.5%という結果でした。

親族外の承継の割合が高まっているものの、親族承継(同族承継)は依然高い数値です。本記事では、家業、親の会社を継ぐことのメリット・デメリットや後継者に必要な適性、会社を継ぐための流れなどについて詳しく解説します。※帝国データバンク 全国企業「後継者不在率」動向調査 (2022年)

この記事のポイント

  • 親の会社を継ぐ方法には「相続」「生前贈与」「株式売買」があり、それぞれ税金や手続きが異なるため、承継者は特徴を理解する必要がある。
  • 親の会社を継ぐ際には、経営者としての責任や借金の引き継ぎ、税金負担、相続トラブルのリスクがあるため、慎重な準備と専門家のサポートが重要である。

⽬次

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親の会社を継ぐ方法

承継方法には、「相続」「生前贈与」「株式売買」の3つがあります。

親族承継の承継方法 概要
相続 経営者が亡くなった後、遺言や遺産協議の内容をもとに、経営者が保有する株式を譲受ける方法。相続人が複数いる場合はトラブルに発展するケースもある。
生前贈与 経営者と後継者の間で株式贈与契約を締結し、経営者が保有する株式を無償で譲受ける方法。無償であるため株式取得資金の準備が不要だが、手続きが複雑になる。
株式売買 経営者と後継者の間で株式譲渡契約を締結し、経営者が保有する株式を金銭などの対価と引き換えに譲受ける方法。外部の第三者とも取引可能だが、税金負担やリスクを考慮する必要がある 。

承継方法によって、税金や手続きなどが異なるため、承継者がそれぞれの特徴を理解して選ぶことが大切です。

親の会社を継ぐタイミング


親の会社を継ぐタイミングとして、主に以下のタイミングが挙げられます。

親が事業からの引退を考え始めた時

一般的に多いのは、親が高齢に差し掛かり、事業からの引退を考え始めた時が挙げられます。経営者として余裕をもって新経営者に引継ぐことができれば、順調に事業承継を進めることができます。

そのため親が引退を考え始めた場合は、なるべく早期に親子で意思確認を行い、具体的な引き継ぎに向けて準備を進めることが大切です。

親が他界した時

また、後継者になることが決まっていない状態で、親である経営者が他界した時も、会社を継ぐタイミングとしては多く挙げられます。この場合は相続などの手続きが必要となるため、早急な決断と対応が求められます。

親と約束していた時期が近づいた時

後継者候補としてあらかじめ家業を継ぐ時期を約束していた場合は、当然ながらその時期が近付いた時が継ぐタイミングになります。他のケースと比べて、後継者としての準備期間が設けられていると考えられるため、スムーズに親の会社を継ぐことが期待されます。

継ぐべきかどうかを判断するには、自分自身のスキルや経験、将来の展望などを考慮しましょう。会社を財務や法務などさまざま観点からのチェックが必要です。会社相続の専門家にアドバイスを求める方法も有効です。

親の会社を継ぐメリット


親の会社を継ぐメリットを詳しく解説します。

働き方の自由度が高くなる

親の会社を継ぐメリットの一つは、働き方の自由度が高くなる点です。経営者になれば、仕事のスケジュールやタスクの優先順位などを自分で決定できます。また、自分のアイデアやビジョンを取り入れて、経営を行うことができます。

定年退職やリストラの不安がなくなる

自分自身が経営者となるため、定年退職やリストラの不安がなくなるメリットも挙げられます。

ただし、会社を継続して運営しなければならないという経営者としての重い責任と、経営管理能力が問われます。経営の経験が浅い場合は、専門性を持つ役員、従業員など体制を強化し、外部の専門家の協力を得ながら、経営に不可欠な部分を補う必要があります。

従業員や取引先、ステークホルダーからの納得を得られやすい

代々一族によって受け継がれている会社の場合、子が親の会社を継ぐことは、従業員や取引先、ステークホルダーから納得を得やすいという一面があります。

さらに新しい経営者が事業計画やビジョンをしっかりと提示できれば、取引先やステークホルダーの期待に応えやすくなるでしょう。経営スキルを十分アピールできれば、新しい取引先や販路の獲得も期待できます。

多額の利益を得られる可能性がある

親から引き継いだ会社で事業譲渡や会社売却の実行により、多額の利益を得る可能性があります。また事業の成長ポテンシャルが高い場合には、将来的に高い評価額が期待できるでしょう。

また、事業譲渡や会社売却で得た資金を、新たなビジネスの立ち上げや投資に活用する方法もあります。もし引き継ぐ事業の成長性に疑問がある場合には、ビジネスモデルを一新して新しい事業を立ち上げる方法もあります。

親の会社を継ぐ際の注意点


親の会社を継ぐ際の注意点を詳しく解説します。

一度会社を継いだら簡単にはやめられない

当然ながら、一度会社を引き継いだ後、経営者として簡単にやめることはできません。なぜなら、経営者は従業員の雇用や会社の存続などに責任を負う必要があるからです。

また、会社の経営に関わる重要な決断を迫られるプレッシャーもあります。このような責任やプレッシャーの大きさに対峙する覚悟が経営者には求められます。

借金や連帯保証も引き継がれる

親が借金や負債を抱えている場合、それらの債務は子が引き継ぐ可能性があります。また会社の経営状態が悪化している場合には、多額の資金が必要になるため、返済に苦慮するケースが考えられます。

さらに親が連帯保証人になっている契約は、自分自身が連帯保証人として責任を負うことになります。

税金の負担

親の会社を継いだ後には、会社の利益に対する法人税や、所得税、消費税などの税金を納める必要があります。また、承継方法によっては贈与税や相続税が発生するケースがあります。

中小企業においては、適切な手続きと条件を満たすことで、相続税や贈与税を軽減することが可能な場合があります。

このように、会社を引き継ぐ場合の税金問題は複雑で、具体的な計算や手続きは専門的な知識を必要とします。会社の承継を考えている場合は、税理士や弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。また、具体的な手順や必要な書類などは税務署に問い合わせることも可能です。

日本M&Aセンターでは事業承継に精通した公認会計士・税理士・弁護士など専門家を含めた盤石の体制で安全・安心の事業承継をサポート致します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

相続トラブルに発展する可能性がある

会社を継ぐ場合には、親族間でトラブルが発生する可能性や、遺産分割協議が円滑に進まないことから法的な争いに発展するリスクがあります。特に相続税に関連してトラブルが発生する場合が多く、遺留分減殺請求制度から複雑化するケースも考えられます。

遺留分減殺請求制度とは、相続人が財産を相続する際に法定相続分を超える遺贈や贈与を受けた相続人に対して、その分だけ相続分を減殺する制度です。法的に認められている権利であるため、親が「会社を含む全財産を長男のみに相続させる」といった遺言書を作成していた場合でも、兄弟などの親族が行う遺留分請求を妨げることはできません。

以上の理由から、相続トラブルを避けるためには事前に相続関係者間でコミュニケーションを図り、円満な解決策を模索しておくことが必要です。

親の会社を継ぐために必要となる能力・スキル

親の会社を継ぐために必要となる能力・スキルについて触れていきます。

優れた経営感覚

親から継いだ会社の経営を安定させるには、経営の知識だけでなく経営感覚も必要です。
経営感覚とは、経営者として会社のビジョンや目標を設定し、実現するための戦略を考える力を指します。経営感覚を身につけるには、ビジネスのトレンドや市場動向を把握して、適切な意思決定を行う経験を積むことが必要です。

また、他の経営者の成功あるいは失敗体験を学ぶ方法も有効です。類似した業種の企業からノウハウを学べば、経営において大きな糧となるでしょう。

高度なビジネス運営スキル

会社の運営する業界についての深い知識と理解、そして企業を運営するビジネススキルも不可欠です。
具体的にはマーケティング、財務、オペレーション、人事管理、戦略立案など企業を運営するためのビジネススキルが挙げられます。

リーダーシップ、コミュニケーションスキル

経営者には、従業員を先導し会社のビジョンと戦略を明確的に伝え、チームを効果的に統括するスキルが必要です。

また、ビジネスは人と人との関係で成り立っているため、従業員や取引先、顧客などステークホルダーと適切なコミュニケーションで良好な関係を構築できる能力も重要です。

親の会社を継ぐ流れ

親の会社を継ぐまでの主な流れを、売買によって承継する方法で紹介します。

①現状を把握する

親の会社を継ぐには、まず現状把握を行う必要があります。直接親から会社の状況についてヒアリングを行うだけでなく、経営状況や財務状況、取引先との関係など客観的事実、データを詳細に把握しましょう。

過大な債務など親自身からでは言いにくいこともある可能性も考えられるため、自分で情報収集して現状を分析することが重要です。簿外債務などの可能性もあるため、外部の専門家に相談することも有効な方法です。

②会社を継ぐタイミングを決める

会社を継ぐタイミングを決めるには、親の引退時期や健康状態、本人の意思をもとに関係者間で検討する必要があります。事業の動きに影響する経済情勢や、業界の動向などへの考慮も必要です。

③実務経験を積む

会社を安定的に運営するには、実務経験が欠かせません。そのため、状況によって可能であれば、承継前に現経営者から引継ぎを受けながら業務経験を重ねることが理想的です。

また経営者としての業務だけでなく、現場の社員の業務も把握しておくことが求められます。会社の全体像を把握して、できる限り理解を深めておきましょう。

④経営権を引き継ぐ(承継の実行)

現経営者と株式譲渡契約を締結し、経営者が保有する株式を、金銭などの対価と引き換えに譲受けます。

⑤従業員や取引先に通知する

会社を継ぐ前後には、従業員や取引先、顧客、金融機関などステークホルダーへ通知することも必要です。具体的には、新しい経営者がどのようなビジョンを持っているか、どのような改革を予定しているのかなど具体的な計画を示すことが重要です。

取引先は引き続き信頼できる会社かどうかチェックするため、承継に伴う影響や変更点も詳細に説明しましょう。取引先の要望やニーズを把握して、適切に対応することが求められます。

親の会社を円滑に引き継ぐためのポイント


親の会社を円滑に引き継ぐためのポイントを紹介します。

会社を継ぐタイミングをあらかじめ決めておく

会社を継ぐタイミングは慎重に考える必要があります。

早すぎると準備や経験不足で適切な経営が行えない可能性がある一方、遅すぎると急きょ引き継ぐ事になった際、相続など様々なトラブルに発展するリスクがあります。
事業承継をスムーズに進めるためには、会社を継ぐタイミングをあらかじめ決めておくことが重要です。

タイミングは後継者の経験やスキルなどを考慮して、慎重に検討するとともに、経営計画を周囲に共有することも重要です。親や取引先、従業員などに継ぐタイミングを伝えておけば、円滑に事業承継が進められるでしょう。

また会社を継ぐタイミングは、親や家族だけでなく、顧問弁護士や会計士など専門家の意見も取り入れて慎重に決定しましょう。

親族や関係者への事前説明を丁寧に行う

親の会社を継ぐ場合には、まず親族に承継への理解を得ることが必要です。親族とコミュニケーションを図って承継について協議しておけば、トラブルを回避しやすくなります。

また取引先などの関係者への事前説明も欠かせません。「説明もなく、急に経営者が変わった」となれば、関係者との信頼関係を損ねる事態になりかねません。良好な関係を維持するために事前説明は必ず行っておきましょう。

事業承継の支援制度を活用する

親の会社をスムーズに承継するには、事業承継の支援制度を活用する方法もあります。例えば、金融支援制度を利用すれば必要資金の融資を受けられます。また事業承継税制を使えば、負担軽減につながります。

ただし、厳格な条件や手続きがあるため、必ず事前に確認しておきましょう。

専門家からのサポートを受ける

親の会社を円滑に承継するには、専門家からのサポートを受けることをおすすめします。例えば、税理士は事業承継にかかる税金面でアドバイスしてくれます。また弁護士は、法的なアドバイスや契約書の作成などを任せることも可能です。

事業承継における手続きや問題点を解決するための知識と経験を持っている専門家からのサポートは、円滑な引継ぎに不可欠です。

終わりに

親の会社を継ぐべきかどうかは、最終的には後継者自身が検討すべき問題です。自由度の高い働き方、経営経験を積むことができる面がある一方で、経営者としての重い責任を担う覚悟、高い経営スキルが求められます。

また会社を継ぐと決めてから、すぐ引き継げるわけでもありません。事業承継には長期の時間を要します。承継にあたっては、会社の全体像を把握して、実務経験を積みながら取引先との関係を保つことが必要です。

このように親の会社を継ぐには、経営者として得られるメリットだけでなく、義務も伴う重大事項であるため、親族や専門家と時間的余裕をもって検討を進めておきましょう。

日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様のM&A成約まで伴走します。 詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

M&A マガジン編集部

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