スタートアップ経営者必見!直近のベンチャーM&A動向と今準備すべきこと

馬 俊飛

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馬俊飛

日本M&Aセンター東日本事業法人4部

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最近では、未上場企業のM&Aが経営手段の一つとして浸透しつつあるように感じています。
さらに、スタートアップ業界でのM&Aも増加しつつあり、スタートアップ企業のM&Aのタイミング、M&Aを実施する上でのメリット、相談すべき相手についてまとめようと思います。

直近のスタートアップM&A動向について

世界的なコンサルティングファームであるEY Japanが昨年発表したスタートアップM&A動向に関する調査レポート「EYスタートアップM&A動向調査 2021」によると、2016~2020年までの5年間、案件数は増加傾向にあったものの90件前後で推移していました。

しかし、2021年は前年比58%増の143件と大きく増加しました。

スタートアップのもう一つのEXIT手段であるIPOと比較しますと、国内IPOも前年比32%増の123件と増加したものの、M&AがIPOを上回る結果となりました。

買収金額で見ても、開示されている案件では、2020年は10億円以上の案件が4件で最高額は約13億円でしたが、2021年は10億円以上が18件と大きく増加しています。

次に業界で区切ると、M&A対象となったスタートアップの事業内容や業界は幅広いですが、BtoCとBtoBの件数比較においては、2020年はほぼ同数だったものが、2021年はBtoB(85件)がBtoC(45件)の約2倍となり、BtoBを対象としたM&Aが増加しています。

また設立からEXITまでの期間について、最も多かったのが会社設立2年以上4年未満の33件であり、全案件の平均値は7年10カ月、中央値は6年2カ月とのことです。

このように、スタートアップM&Aフェーズとしては、対象企業がアーリーステージからミドルステージの間であることが多いとわかります。

この理由は、シリーズAでは想定バリュエーションを10億円前後として各VCが出資を行いますが、シリーズB以降になると20億円以上になることが多く、その場合に現実的に出資できる買い手が現れづらいことが原因であると考えております。

最後に、買い手の属性とM&Aの目的についてです。

2020年と同様に、全案件の80%以上を2000年以降に上場した新興企業および非上場企業が占めていますが、1999年以前に上場した伝統的大企業が買い手となるM&Aが2020年の11件から2022年は22件と倍増する結果となりました。

2020年はM&Aの目的として新規事業創出が58%と最多で、続いて既存事業強化の24%となっていましたが、2021年はほぼ逆転し、既存事業強化が57%、新規事業創出が22%となり、スタートアップであることが付加価値というよりも、新たなビジネスモデルを展開できていることに価値を感じ、新興企業が既存事業強化の目的で多くのBtoBスタートアップを譲受けていることが予想できます。

出典:EY Japan(https://www.ey.com/ja_jp/news/2022/05/ey-japan-news-release-2022-05-30-02)

スタートアップM&Aを行う上でのメリット

スタートアップ経営者から見たM&Aを行う上でのメリットを2点ご説明します。

非連続的な成長を加速させることができる

スタートアップ経営は非連続的な成長が前提となっていますが、それを継続できる経営者は稀だと認識しています。

その成長スピードを維持・加速させる上で、M&Aは良い経営手段の一つではないかと思います。

具体的には、取引先の紹介でのアップセル・クロスセルを見込むトップラインの上昇や、また一方で内部統制等のガバナンスの援助も可能です。

早期の現金化が可能

未上場の株式は流動性がなく、現金化は非常に困難となります。

IPOで上場すれば流動性は担保されますが、それまでには時間とコスト(主に監査)がかかってきます。

一方で、M&AはIPOと比べ比較的早期・低コストで現金化が可能です。

また直近では、アーンアウト条項のように、条件を設けて取得するケースや、譲受け側が上場企業の場合、株式交換を行い、M&A後の株価上昇に伴い回収額を増加させるスキームも取られ始めています。

スタートアップのM&Aはいつから相談するべきか、だれに相談するべきか


スタートアップの経営者は起業時からM&Aも視野に入れて創業するべきだと考えます。

理由は、EXIT方法としてIPOとM&Aのいずれかを目指すのかによって、経営戦略が若干異なるためです。

私もあるVCのキャピタリストから、「初回面談時にEXIT時にIPO、M&Aのどちらをゴールに置いているのかヒアリングしている」と聞いたことがあります。

VCとしても、ゴールによって支援内容を若干変更しているということです。

そのため、M&Aを目標に入れているのであれば、創業時からVCにその旨を伝えておく必要があると考えています。

また、M&Aを相談していくにあたり、誰に相談した方が良いのか悩まれることも多いかと思います。

経営戦略の大上段として、相談できる相手も非常に限られてくることでしょう。

私個人の意見としましては、VCや資金調達支援等の会社への相談はもちろんのこと、日本M&AセンターのようなM&A仲介企業にご相談いただくことも有用だと考えています。

理由としては、以下の2点が挙げられます。

VCと異なり、出資先がない

一般的にVCはいくつかのLP(Limited Partner/有限責任組合委員)から出資を受け投資を実行しています。

LPはあくまでもファンドへの投資の成果としてキャピタルゲインを得ることを目的としてGP(General Partner/無限責任組合員、基本的にVCのことを指します)に資金の運用を委託する投資家という位置付けですが、GPと共に投資先のスタートアップ企業(ベンチャー企業)のビジネスの育成・支援に関与するケースもあります。

更にその延長線上で、M&Aに関する情報獲得を目的として出資している事業会社も少なくないと考えています。

その上で、運営元のGPはM&Aの情報があった場合、理論上は幅広くM&Aの候補先を洗い出す必要がありますが、実務上ではLP出資先に先行して情報提供を行うことが多々あります。

一方、日本M&AセンターをはじめとしたM&A仲介としては、どこかの企業から出資を受けていることはなく、真に幅広くお相手を探すことができるのです。

候補先を幅広く検討することが可能

M&A仲介企業はM&Aのプロフェッショナルであり、特にM&Aマッチングのプロフェッショナルです。

特にスタートアップ企業の場合、スタートアップ経営者やVCのキャピタリストとしてはLP投資先や該当サービスの大口取引先がM&Aの候補先に上がってくることが一般的ですが、M&A仲介会社はあらゆる業種、形態(上場/未上場)、所在地の企業と接点を持っており、各企業の社風や経営層との相性等ウェットな情報にも目線を向けた、最適なマッチング候補をお示しすることが可能なのです。

また相談する仲介会社を選ぶ際に重要な要素として、下記2点が重要です。

①コンサルタント社員数

②IT/スタートアップM&Aに精通している社員数

コンサルタント社員数はそのまま接触可能企業数と比例しており、コンサルタント社員数が多いほど選択肢になかったM&Aマッチングをご提示できると思います。

また、IT/スタートアップM&Aに精通している社員数ももちろん重要です。

この点に関しては、日本M&AセンターはIT業界のM&Aの支援実績を数多く有しており、また直近ではスタートアップの成約事例も出てきておりますので、知見は日本で最多クラスであると自負しております。

スタートアップ経営者の方々と一度EXITや今後の成長戦略についてディスカッションできればと考えています。

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馬 俊飛

俊飛しゅんひ

日本M&Aセンター東日本事業法人4部

北京出身。父は日系企業として初の中国人社長として、ソフトウェア開発会社を経営。慶應義塾大学環境情報学部卒業。在学中、米カリフォルニア大学バークレー校への留学を経て、新卒で日本M&Aセンターに入社。入社以来一貫してIT・ソフトウェア業界を専門にM&Aの支援に取り組んでいる。

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