多角化戦略とは?メリット・デメリット、成功のポイントを解説

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多角化戦略は、企業における成長戦略のひとつですが、様々なメリットや注意すべき点があります。
本記事では、多角化戦略の種類やメリット・デメリット、多角化戦略を成功させるためのポイントなどについて詳しく解説します。

日本M&Aセンターでは、M&Aをはじめ様々な経営課題の解決に向けて専任チームを組成し、ご支援を行っています。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

多角化戦略とは ?

多角化戦略とは、自社が保有している経営資源を活用・応用し、新たな分野に踏み出していく戦略を指します。多角化戦略は、経営学者であるイゴール・アンゾフの理論「アンゾフの成長マトリクス」の1つに位置づけられています。

昨今、多角化戦略が注目を集める背景には、不安定な世界情勢、経済状況で事業環境が不確実性を増していること、また、多様化する人々のニーズに対応していく必要性が高くなっていることなどが挙げられます。

企業が安定した収益や成長拡大を果たすために、新たな市場で新たな商品・サービスで勝負する必要性が高まり、多角化戦略が注目されています。

多角化戦略の4つの種類


多角化戦略には、以下の4つの種類があります。
それぞれの種類によって進め方などに違いがあるので、自社に適した戦略を選択・実行することが重要です。

①水平型多角化戦略

水平型多角化戦略とは、自社が保有する既存の技術を活かして、既存事業と関連性の高い分野で事業を広げる戦略です。


例)バイクを生産するメーカーが、自動車生産に参入したケース(本田技研工業など)

既に保有している技術やチャネルを活用できるため、新たな設備投資などの必要が無く、資金負担を軽減できるメリットがあります。 また既存事業と関連性の高い事業であるため、既存事業とのシナジー効果も期待できます。

②垂直型多角化戦略

垂直型多角化戦略とは、新たな技術を獲得して、既存事業の川上または川下の領域に進出し、成長拡大を狙う戦略です。

例)食品小売が飲食事業に参入したケース(成城石井など)

既存の事業と類似している市場が対象となるため、既存顧客や既存取引先にアプローチしやすいメリットがあります。ただし、新たな設備投資や技術取得が必要になる場合がある点には注意が必要です。

③集中型多角化戦略

集中型多角化戦略とは、自社が既に保有している技術・スキルを活用して、既存事業とはあまり関連の少ない新しい市場に進出する戦略を指します。

例)フィルムメーカーが既存の技術を応用して化粧品市場に参入したケース(富士フイルムなど)

これまで社内に蓄えてきた技術や経験を活用できる点が大きなメリットです。ただし、市場ニーズの読み違いや、要求される品質の差などによって、新規販路開拓などに想定以上の労力やコストが生じてしまうリスクもあります。

④集成型(コングロマリット型)多角化戦略

集成型(コングロマリット型)多角化戦略とは、既存事業とまったく異なる、新たな市場に参入する戦略を言います。

例)ECモールが金融、旅行、保険など様々な新規市場に参入したケース(楽天など)

事業の可能性を拡大できる点がメリットです。ただし、新規市場への参入には多くのコストが必要なことを考慮しておく必要があります。

多角化戦略を進めるメリット

複数の事業を運営する多角化戦略は、事業や収益の拡大が見込める点のほか、以下のようなメリットが挙げられます。

リスクを分散・軽減できる

メリットの1つとして、リスクの分散・軽減が挙げられます。
単一事業のみの場合、事業の失敗は会社全体の業績悪化を意味します。複数の事業に経営資源を分散していれば、特定の事業が上手くいかなくても他の事業がその不調をカバーできます。つまり複数事業運営により、収益が平準化し経営の安定化が図れるのです。

プロダクト・ライフサイクルに対応しやすくなる

プロダクト・ライフサイクルは市場に投入したプロダクト(製品)の開発、導入、成長、成熟、衰退と変化する製品の寿命(ライフサイクル)を指します。急激な技術革新が進んでいる現代では、プロダクト・ライフサイクルの短期化が顕著になっています。

単一事業の場合、主力製品が衰退期に入ってしまうと、企業全体の売上高に大きな影響を及ぼします。
多角化戦略を実行していれば、ある製品のライフサイクルが終わりを迎えようとしていても、他のプロダクトによって衰退したプロダクトの売上減少分をカバーすることができます。

多角化戦略のデメリット・注意点


多角化戦略を行うにあたって注意すべき点は、以下の通りです。

利益率の低下・財務リスク

多角化戦略を実施するには、新しい市場を開拓するためのマーケティング活動、新商品・新サービスの開発など様々なコストが発生します。そのため利益率や財務リスクにマイナスの影響を及ぼす可能性がある点に注意が必要です。

経営の非効率化

例えば単一事業のみを行っている場合は、管理体制を徹底し生産性を上げていたにも関わらず、複数事業になったことで管理が集約できず、経営効率が悪くなる可能性が考えられます。このように、複数の事業を行うことで、単一の事業を行う上でのメリットを失ってしまうケースもあります。

ブランドの希薄化

多角化によって、確立していたブランドがさまざまな事業の中に埋没して、価値が損なわれてしまう場合もあります。ブランドの取り扱いに十分に気を付けた上で、価値の希薄化・毀損を防ぐための対策を講じる必要があるでしょう。

多角化戦略を成功させるためのポイント

多角化戦略を成功させるためのポイントは、以下の通りです。

自社に見合った規模、段階的に始める

前述の通り、新規市場参入には、多額の費用・人材などの経営資源が必要になります。そのため最初から大規模な多角化戦略を展開してしまうと、投資分を十分に回収できない状態に陥る可能性があります。

こうしたリスクを踏まえて、段階的に自社に見合った規模で多角化戦略を始めることをおすすめします。

既存事業と関連が高い事業から始める

多角化戦略に取り組む際には、既存事業と関連性が高い事業から始めることも重要なポイントです。関連が低い事業の場合は、前述のとおりハイリスク・ハイリターンであるため、失敗するリスクも高くなります。

そこで、最初は自社が展開している事業と関連性が高い事業に展開すれば、既に保有している技術やスキルを活用でき、多少なりとも既存の知識・ノウハウを活かせる市場ですので、失敗する可能性を軽減できます。

企業理念に沿って実行する

企業の方針を示す企業理念や沿って実行することも、多角化戦略には重要なポイントです。企業理念にそぐわない多角化を進めると方向性を見失い、事業の一貫性が保てなくなる可能性が生じます。判断に迷った際には企業理念に立ち戻り、多角化戦略を推進することが重要です。

M&Aを活用する

新たな分野に展開する多角化戦略を推進するには、M&Aを活用する方法もあります。
展開していく市場で、既に優位性を持つ企業を取り込むことで、効率的に多角化戦略を実行できる可能性があります。

多角化戦略としてのM&A


ある市場において、既に競争優位性があるポジションを得ている企業を買収して、連結上の売上や利益の規模を一気に拡大するのが多角化戦略としてのM&Aです。

日本においては総合商社などを中心に(三菱商事によるローソンの子会社化など)多角化戦略としてのM&Aの活用事例は多く見られます。

多角化戦略としてM&Aを選択するメリット・留意点

メリットは、多角化戦略の目標を短期間で達成しやすい点が挙げられます。

既に運営されている事業を買収するため、ゼロから新規事業を立ち上げる場合に比べ、短い期間で売上や利益の事業目標を達成しやすくなります。
また既存の市場や顧客を対象にした多角化戦略を推進することで、失敗するリスクを軽減できます。

留意点は、優位性を持つ企業を買収するために相応の買収資金が必要になること、統合後のPMI(経営の統合作業)に時間を要することが挙げられます。

多角化戦略としてM&Aを選択する場合には、こうしたメリットや留意点をしっかりと踏まえ、決断することが必要です。

日本M&Aセンターでは、M&Aをはじめ様々な経営課題の解決に向けて専任チームを組成し、ご支援を行っています。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

多角化戦略の方針

多角化戦略の方針は、主に以下のとおりです。

コングロマリット戦略

コングロマリット戦略は、先にも説明しましたが、業種が異なる複数の企業をグループ化する戦略を指します。M&Aを活用し、新たな事業を傘下に迎えることで、新規事業への進出を果たし事業の多角化を進めます。

コングロマリット化は、規模の経済やシナジー効果、経営資源の強化などさまざまなメリットが期待できます。

異業種の企業を複数取り込むため、企業間の協力体制の構築やコーポレートガバナンスの浸透がスムーズに進むための対応が求められます。

プラットフォーム機能の強化・拡充

自社のプラットフォームの機能・多様性を強化し、市場における優位性を高め、顧客の囲い込みや新規顧客の獲得や既存顧客の囲い込みを促します。

GAFA(Google、Apple、Facebook ※2021年10月よりMETAに社名変更、Amazon)も、プラットフォームを持つ企業の買収を繰り返すM&Aによって、現在のような巨大企業に成長したと言えます。

マルチアライアンス戦略

マルチアライアンスとは、相互利益のために複数の企業が広範囲に提携を行う戦略を指します。
具体的には複数の企業と経営権の移動を伴わない資本・業務提携や合弁会社の設立などを通じて、市場の優位性を確保します。

複数企業との提携により、多様な顧客ニーズに対応できるほか、経営権も移動する株式譲渡や合併に比べ契約が迅速に成立する傾向にあります。またそれぞれの企業が独立性を維持できるため、ハードルが低い点がメリットです。

一方で、自社の技術やノウハウが相手企業に流出するリスクがある点に注意が必要です。

アンゾフの成長マトリクス

最後に、冒頭でご紹介した「アンゾフの成長マトリクス」にある4つの戦略について、簡単に触れておきましょう。

アンゾフの成長マトリクス

①市場浸透戦略(既存市場×既存製品)

既存の市場において、既存の製品やサービスを、既存の顧客にそのまま販売を継続して売上を伸ばす戦略を指します。

例えば、商品・サービスの値下げ、営業人材の増員、広告の大量投下などこれまでの戦略を見直して、さらに市場への浸透を狙います。

②新商品開発戦略(既存市場×新規製品)

既存の市場に、新たな商品やサービスを投入して売上を伸ばす戦略を指します。

既存市場で、まだ取り込めていなかった顧客のニーズを上手く汲み上げ、顧客満足度の向上に寄与できる新商品や新サービスの開発・投入を進めていきます。

③新市場開拓戦略(新規市場×既存製品)

既存の製品・サービスを、新たな市場に投入して売上を伸ばす戦略を指します。

例えば、関東だけで販売していた商品を、関西に広げるというような戦略が新市場開拓戦略です。

④多角化戦略(新規市場×新規製品)

本記事で主に説明をしてきた、新たな市場に、新たな製品・サービスを展開する戦略を指します。

終わりに

多角化戦略は既存のビジネスに加え、新しいビジネス分野に進出する戦略です。事業環境が短期間に大きく変動する現代では、多くの経営者に注目されています。

多角化戦略のメリットとデメリットを十分に理解して、成功させるポイントを踏まえ実行することが極めて重要です。さらに、多角化戦略を成功させるためにはM&Aを活用することも検討しましょう。

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著者

M&A マガジン編集部

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