会社の休業とは?メリットや注意点、休業・再開の流れを詳しく解説

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会社を休業させるには、経営者が宣言するだけでは認められません。必要な手続きを経て、初めて休業とみなされます。本記事では、会社を休業させることのメリットや注意点、手続きの流れについて詳しく解説します。

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会社の休業とは

会社の休業とは、会社の事業・営業活動を一時的に休止することを指します。
具体的には、法人登記簿上に法人登記の記録を残したままで、運営しているすべての事業活動を休止させます。なお、「休眠」と呼ぶ場合もあります。

休業と廃業との違い

休業に似ている言葉に、「廃業」があります。休業は事業・営業活動を一時的に休止させることを指しますが、廃業は会社の事業を完全に止めてしまうことを指します。

この2つには、一時的に会社を休ませて存続させるのか、完全に消滅させるのかという、大きな違いがあります。

新型コロナウイルスの影響を受けて、やむなく休業・廃業の選択を迫られる経営者も少なくありません。
厚生労働省の『「休廃業・解散企業」件数の推移』によると、2013年以降、倒産件数は減少しているものの、2020年以降は休廃業・解散した企業が増加傾向にあります。

廃業とは。デメリットとメリット、最新データ、倒産・休業との違いや、M&Aについて

会社を休業させるメリット


廃業と比較した際、会社を休業させる場合には、以下のようなメリットがあります。

いつでも事業を再開できる

休業させた会社は、いつでも事業を再開することが可能です。登記簿上は、休業前と同様に会社が存在しているため、原則として、異動届出書に「事業を再開する旨」を記載して、行政機関で手続きを行うことで再開できます。

廃業よりも、事業再開する手続きが比較的簡単

事業を再開する前提の場合、廃業する場合に比べると、再開する際の手続きはシンプルです。会社を休業する場合には、原則、許認可はそのままにしておいて問題ありません。

一方、会社を廃業する場合には、いったん許認可を返上する必要があります。そのため、廃業を経て事業を再開する場合には、事業に必要な許認可を改めて再取得する必要があります。

休業と廃業のどちらかを選択する際には、事業を再開する可能性や、許認可再取得の要否なども踏まえて比較・検討する必要があります。

廃業よりも、費用負担が軽減される

廃業する場合に比べて、休業の方がコスト軽減できる可能性があります。
会社を廃業する場合は、会社の清算決算や解散登記に要する費用や手間がかかりますが、会社を休業する場合には、こうした費用は発生しません。

また会社を廃業する場合には、従業員に退職金、さらに未払いの残業代を支払う必要が発生する場合もあります。

一方で、会社の都合で休業する場合にも、従業員に対して休業手当を支払う必要があります。休業手当は平均賃金の60%と定められており、給料の一部とみなされるので課税対象になります。

ただし、「使用者の責に帰すべき事由」によらない休業(自然災害などを原因とする休業など)の場合は、休業手当を支給する必要はありません。

また会社を休業している場合は事業活動が行われていないため、法人税などが課税されない場合があります。

廃業と休業のどちらの方がよりコストが必要になるかは、就業規則などに記載されている退職金や休業手当などに関する規定を詳細に確認して、検討することが重要なポイントです。

会社を休業させる際の注意点

会社を休業させる場合には、以下のような注意点があります。

休業の手続きを専門家に依頼すれば費用が発生する

会社を休業する手続きを、行政書士・司法書士・税理士といった専門家に依頼する場合には、費用がかかります。これは廃業の場合も同様です。

費用が生じる場合には、それに見合うだけのサポートを専門家がしてくれそうかどうかを見極める必要があります。無料相談などを活用し、経験・実績や信頼度の高さなども考慮して、どの専門家に依頼するのかを見定めることをおすすめします。

納税・税務申告の義務はなくならない

会社を休業しても、原則として納税や税務申告の義務はなくなりません。
会社を休業させても会社そのものは存在しているので、納税義務は発生し、税務申告をする義務も残ります。

休業状態にあると、売上や利益は発生しないため、課税所得がマイナスになり基本的には法人税を課せられません。

しかし、公共料金などの費用や、土地や不動産などの固定資産税、そして自治体によっては法人地方税の均等割が生じるなど、納税・税務申告義務は発生します。

休業中も役員変更登記を行う必要がある

会社を休業していても、会社の役員の地位はそのまま継続しているので、役員の任期が満了して新たな役員を選任した場合には、役員変更登記を行う必要があります。

役員変更登記を実施しておかないと、会社の代表者が過料処分(100万円以下)に処せられてしまう場合があります。

休業状態が12年続くと「みなし解散」として扱われる

役員変更登記などの登記をしないまま12年が経過すると、「みなし解散」と扱われ、最終的には解散に至ります

みなし解散とは、長期間(株式会社の場合は12年)にわたって登記を行っていない法人に、国が確認のための通知書を発送し、必要な登記申請や事業廃止届をしない場合には、当該会社を解散しているとみなすことを言います。

また一般社団法人などの場合には、最後の登記から5年経過しても変更登記を行っていないと国から通知書が発送されます。この場合も、みなし解散になると強制的に解散登記が実行されてしまいます。

みなし解散になってしまった場合には、株主総会における会社継続の特別決議を経た上で、会社継続の登記を実行すれば会社を解散していない状態に戻すことが可能です。

なお特別決議とは、株主総会において議決権を行使可能な株主の議決権の過半数を保有している株主が出席した上で、出席した株主の議決権株式数の2/3以上の賛成で成立する決議を言います。

ただし会社継続の決議は、解散したとみなされた日から3年以内に限って行うことができます。また会社法第915条の規定から、会社継続の登記は効力の発生日から2週間以内に実施することが必要です。

会社を休業させる手続きの流れ


会社を休業させる場合には、以下の手続きを確実に実施することが重要です。

①事業を停止する

会社を休業させるには、まずすべての事業を停止させる必要があります。
具体的には、工場にあるすべての機械設備の稼働を中止する、営業・販売活動を完全に止めることが挙げられます。つまり、会社に収支が一切発生しないような状態にするのです。

また、電話契約の休止・解約や郵便物の転送届・不在届の手続きも、忘れずに行うようにしましょう。

②各種書類を作成・提出する

事業を停止したら、次に会社の休業に必要な下表の書類を作成・提出します。

提出書類 提出先
(1)異動届出書 税務署
(2)給与支払事務所の開設・移転・廃止届出書 税務署
(3)異動届出書 都道府県税事務所
(4)異動届出書 市区町村役場
(5)労働保険確定保険料申告書 労働基準監督署
(6)雇用保険適用事業所廃止届、資格喪失届 ハローワーク
(7)健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届、資格喪失届 年金事務所

(1)異動届出書

異動届出書に休業する旨を記載して、会社を管轄している税務署に提出します。異動届出書を提出しても、会社の登記はそのまま維持されるので、会社は存在していても事業を行っていない状態になります。

(2)給与支払事務所の開設・移転・廃止届出書

会社を休業する場合には、給与支払事務所の開設・移転・廃止届出書を、廃止欄の「休業」にチェックを入れて、会社を管轄している税務署に提出します。休業してから1ヶ月以内に提出することが必要です。

(3)異動届出書

異動届出書は、都道府県税事務所にも提出する必要があります。

(4)異動届出書

また異動届出書は、市町村役場にも提出する必要があります。会社を休業しているので、法人税の納付義務は原則としてありません。しかし、法人事業税は均等割で納税しなければならない場合があります。


均等割
前年の所得金額の多少に関係なく、一定の所得があるすべての人が均等に負担する税を指します。都道府県民税では法人の資本金などの額、市町村民税では法人の資本金などの額と従業者数から、それぞれ納付する税額が分けられています。
ただし、会社が休業状態であれば、自治体によっては均等割の納税が免除になるケースもあります。したがって、都道府県税事務所や市町村役場といった地方自治体にも、異動届出書の提出が必要なのです。

(5)労働保険確定保険料申告書

会社を休業させる場合には、労働保険確定保険料申告書を、管轄内の労働基準監督署に提出する必要があります。労働保険確定保険料申告書とは、労働保険の保険料を申告するための書類です。

(6)雇用保険適用事業所廃止届、資格喪失届

会社を休業させる場合には、雇用保険適用事業所廃止届や資格喪失届を、管轄内のハローワークに提出する必要があります。

(7)健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届、資格喪失届

会社を休業させる場合には、健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届や資格喪失届を、管轄内の年金事務所に提出する必要があります。健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届や資格喪失届とは、以下のいずれかの場合に該当するときに提出する書類です。

・健康保険や厚生年金の適用事業所が廃止・休止などによって適用事業所にあたらなくなった場合
・事業の廃止・休業・合併などで適用事業所に該当しなくなった場合

③書類が受理され次第、休眠状態となる

上記の書類が各提出先に受理されれば、登記簿上は会社が存在している状態ですが、事業活動を行っていない「休眠」状態になります。ただし12年以上休眠状態のまま登記を行っていないと、前述の通り、みなし解散となるため注意が必要です。

会社の休業にかかる費用

会社を休業させる場合に必要な書類の作成・提出は、行政書士に依頼できます。
また会社を休業させても、変更登記や税務申告があるため、司法書士や税理士との相談が必要になる場合があります。

これらの専門家に相談・依頼する場合には、当然ながら費用がかかります。
金額は専門家によって異なるため、無料相談会などの機会を活用して、あらかじめ必要な費用について確認しておくと良いでしょう。

休眠状態から事業を再開する手続き


会社を休業している状態からあらためて事業を再開したい場合には、以下の確認と手続きが必要です。

①事前確認

主に次の3つの点について確認が必要です。

会社が登記上存続しているか

会社が登記上存続していることを確認しておく必要があります。万が一、みなし解散の状態になっていたり、会社が消滅していた場合には、新たに会社を設立し直さなければいけません。

会社を新規に設立して事業を再開する場合には、時間も費用もかかるため、休業させた会社の状況を確認してから事業再開の手続きに着手するようにしましょう。

税金の滞納がないか

休業中に税金の滞納がないことも、確認しておく必要があります。
税金の滞納があると、事業を再開して銀行から融資を受ける場合に、審査を通過しない可能性が高まります。会社を休業させていても、納税に注意が必要です。

事業の再開によって収益を得られるか

必要書類の作成・提出などを専門家に依頼する場合には、費用がかかります。
他にも工場を再稼働させる際に、メンテナンスや保守のコストが必要になるかもしれません。

そのため、事業の再開に伴って発生する費用と、事業の再開で得られる収益をしっかりと見積り比較・検討することも大切です。

②異動届出書を作成・提出する

上記の確認が終了したら、事業再開への手続きを開始します。休眠状態から事業を再開する場合には、休業する時と同様に、税務署や自治体に異動届出書を作成・提出する必要があります。

異動届出書には、「〇年〇月〇日から開業します」という会社の休業を解除する旨を記載します。

また、事業の再開に伴い従業員を再び雇用する場合には、従業員に対する源泉徴収義務が復活するため、「給与支払事務所等の開設届出書」も税務署に提出します。

こうした手続きは時間や手間がかかるため、行政書士など専門家に依頼することも可能です。

③休業中の会計処理・確定申告を行う

事業を再開する際には、異動届出書の作成・提出に続いて、休業中の会計処理・確定申告を行う必要があります。具体的には、会社の休業中に預貯金の移動、売掛金の回収、買掛金の支払いなどの有無を確認します。

その上で確定申告を実施します。確定申告を実施することで、再稼働した期首残高(会計上の期首簿価)も明確になります。

休業中の会計処理・確定申告を行うことで、会社を再稼働するスタート時点における会社の会計データが確定されます。

④青色申告を再申請する

事業を再開する際には、青色申告を再申請する必要があります。
会社を休業している期間にもよりますが、青色申告をしていた場合、会社の休業中は確定申告書の申告期限内に提出が実施されていないことになります。

会社を休業している間に、税務署から青色申告の取消の通知が届く機会は多くあります。青色申告が取り消されてしまうと、取消後の2期については青色申告を利用できなくなってしまうため注意が必要です。


青色申告
日々の取引を記録する目的で、一定の帳簿を備えて記帳し、その記録に基づいて確定申告を行う制度です。
青色申告を利用するためには、事前に「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出することが必要になります。また、青色申告では最高65万円の青色申告特別控除を受けられます。青色申告が取り消された日付は、日単位で必ず確認しておく必要があります。
通知がきていたかどうか、いつが青色申告の取消日なのかなどが明確にわからない場合は、会社を管轄している税務署に確認してみましょう。

会社の休業を決断する前に、M&A活用も検討を


後継者不在などを背景に、会社の休業や廃業の検討を迫られている中小企業の経営者は少なくありません。

しかし休業や廃業を行うと、従業員や取引先、顧客への影響は少なくありません。
また登記などの手続きに費用が必要となり、借金も残ってしまう可能性も考えられます。

休業する場合でも、取引先が離れてしまうことや、従業員の解雇など、様々なデメリットが想定されます。

そこでM&Aを活用して、後継者不在の悩みを解決するとともに事業を残していくことを検討してはいかがでしょうか。
M&Aを活用すれば、会社・事業を譲渡して経営者には手元に資金が残る可能性があり、その上従業員にはそのまま働いてもらうことも可能です。

会社を休業させるかどうかでお悩みの経営者の方は、M&Aの選択肢も視野に入れ、専門家にぜひ相談してみてください。

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著者

M&A マガジン編集部

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日本M&Aセンター

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