【連載「会計事務所のための補助金解説」①】補助金をおすすめする3つの理由

藤井 孝介

株式会社湘南フロンティア 取締役

事業承継
更新日:

会計事務所のための補助金解説
※本記事は、中小企業の経営者から経営、事業承継についてご相談を受ける機会の多い、会計事務所のご担当者に向けた連載記事です。

皆さんこんにちは。株式会社湘南フロンティアで補助金サポーターをしております、藤井と申します。

会計事務所のご担当者に向けて、補助金を分かりやすく解説する活動を行っております。
今回は、会計事務所に補助金をおすすめする理由を解説します。

この記事のポイント

  • 補助金は経営者の資金負担を軽減し、事業展開を促進するため、会計事務所が顧問先に提案しやすいサービスである。
  • 会計事務所は補助金申請に必要な決算書や確定申告書を既に保有しているため、顧問先へのサポートがスムーズに行える。
  • 補助金サポートを提供することで顧客満足度が向上し、紹介につながる好循環が生まれる。まずは1つの補助金から取り扱うことを目指すべきである。

⽬次

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会計事務所に補助金をおすすめする理由

補助金をおすすめする理由は、大きく分けて3つあります。

1.見込み客が既にいる

会計事務所の事業の柱として、税務顧問業務がありますよね。
税務顧問業務では、月に1回もしくは2~3か月に1回打ち合わせをする際に、経営上の悩みを聞く機会があります。
このとき、経営者から出てくる「よくある悩み」がこちらです。

- 「資金繰りに困っている」
- 「売上を上げるための方策を知りたい」
- 「業務をもっと効率化していきたい」

実はこういった悩みは、補助金の活用で解決できるケースが多くあります。

補助金を活用することで、経営者が半年~1年後にやりたいと思っているプロジェクト費用のコストカットを実現できる場合もあります。

例えば、1000万円の事業費がかかるプロジェクトを1年後に計画しているとします。

補助金が採択された場合、総事業費の1/2から2/3が補助金として戻ってくるので、1000万円であれば、500万円から750万円を補助金で補填することが可能です。

つまり、 本来プロジェクトにかかる費用を大幅に抑えて事業展開ができる ので、経営者にとってはメリットばかり。

顧問先に事業拡大を考える経営者が多い会計事務所であれば、補助金の提案を受け入れてもらいやすいでしょう。

実は会計事務所のように濃い信頼関係を持って、経営者に提案できる企業は希少です。
一方、顧問先に提案しやすいので、補助金事業は会計事務所と相乗効果が高いと言えます。

2.申請に必要な書類を既に持っている

あまり知られていないことなのですが、中小企業を支援する補助金は年間で数百種類出ています。

私は2022年11月時点までに、12種類以上の補助金の申請のお手伝いをしてきましたが、そのほとんどで、申請時に共通して求められる書類がありました。

それが 会社の決算書と確定申告書 です。

顧問先ではない企業の補助金申請をお手伝いする時は、必ず決算書と確定申告書の共有を依頼しなければなりません。

しかし、会計事務所が忙しく書類が届かない、事業者の方がどの書類を揃えれば良いか分からない等の理由から、申請に時間を要することもありました。

このような場合、会計事務所が顧問先に対して補助金サポートを行うことで、この手間がなくなります。
さらに、書類整理ミスも予防できます。

以上のことから、会計事務所が補助金サポート事業を行うことは、非常に強い利点となります。

3.顧客満足度が上がり、紹介に繋がる

実は補助金サポート事業を行うことで、 顧客満足度が上がり、顧客からの紹介 に繋がります。

なぜなら、経営者は補助金情報などの支援情報を常に求めているからです。

補助金サポートをした際に、私はよく「腕の良い税理士はいませんか?」と相談を受けます。

「なぜ税理士を入れ替えたいのですか?」と質問すると、「税理士先生が税務業務しかしてくれない」という言葉が返ってきます。

会計事務所からすれば、業務範囲内の仕事をしっかりやっているのに、顧客満足度が上がらない、という状態になるわけです。
一方で、補助金の情報を定期的に提供してくれる会計事務所に対してはどうかというと、顧問先の満足度が大きく上がります。すると、顧問先が経営者仲間を紹介してくれるといった好循環が生まれます。

もし、補助金事業を行わなかったとしても、情報提供だけでも喜ばれます。
ただ、会計事務所によっては、手が足りず既存業務で手一杯という意見もあるかと思います。

そこでまずは、「1つの補助金から取り扱えるようにする」ことを最初の目標に*することをおすすめします。
補助金にはそれぞれ申請要件がありますので、今回は申請しやすい補助金を3つ紹介します。


※最新の情報は中小企業庁のホームページをご確認ください。

これらの補助金を1つでも取り扱えるようにすると、顧問先に喜ばれるでしょう。

最後に

今回の記事で、会計事務所に補助金をおすすめする理由を説明しました。
会計事務所が補助金サポート事業に力を入れていくことは、私個人としても本当におすすめです。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

日本M&A協会について

日本M&A協会は、 中小企業の友好的M&Aの普及を目指し、日本M&Aセンターと税理士・公認会計士事務所が協働するための組織 として、2012年10月1日に発足しました。現在1,039の事務所が加盟しております。(2023年1月現在)

会員の皆様が、M&A業務の専門家として業務を行うために必要なノウハウやツールを提供しています。
様々なイベントや、地域ごとの「支部会」や「M&A研究会」、所内向け勉強会など開催し、最新のM&A情報の提供や事例展開をしております。

また、株式会社きんざい様と共同で、『M&Aシニアエキスパート』認定制度を創設し、会計事務所や金融機関などに所属する多くの方に受験をいただいております。

活動内容の詳細や加盟申込については、日本M&A協会サイトをご覧ください。

著者

藤井 孝介

藤井ふじい 孝介こうすけ

株式会社湘南フロンティア 取締役

岩手大学農学部卒業後、農林水産省入省。 公共事業の入札や施工管理、補助金の制度設計、広報を担当。 官僚時代は補助金説明会の担当をしていたが、補助金を創る側から使う側へ活動の軸足を移したいと思い、独立。 東京商工会議所や銀行の社内勉強会で補助金セミナーを開催。初見の補助金に強く、過去に採択された補助金は12種類を超える。

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