M&A動向2023年の予測、そして2022年の振り返りをM&Aのプロが解説!

臼井 智

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日本M&Aセンター 成長戦略開発センター長/株式会社ネクストナビ 取締役

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M&A2023年の予測と2022年振り返り

2022年に行われたM&Aを振り返る

西川: 今回は2022年のM&Aの振り返りと予測ということで・・・年末企画みたいな感じですね(笑)
1番のポイントとなるのは、昨年、日本企業が関与したM&Aの公表件数ですね。どれぐらいあると思いますか 。

臼井: 多分、4,304社ぐらいじゃないですかね・・新聞に出てました(笑)。

西川: 臼井さんがおっしゃったようにレコフM&Aデータベースによると4,304件ありました。レコフデータさんによると調査開始以来、過去最多の件数、という結果で、2年連続の最多件数を更新したということです。

レコフM&Aデータベースによると、2019年も実は4,088件で、それまでずっと右肩上がりだったのですが、コロナの始まった2020年はさすがに落ち込みます。ただ落ち込んだその翌年、翌々年2期連続で更新をしていると。現在、このような状況です。
そういった意味ではコロナ禍前どころか、それを超える形でM&Aは引き続き昨年活発に行われたと言えます。

西川: 件数としては4,304件と非常に多い数字ですが、この内訳もいろいろな観点で分析できます。

例えばマーケットという観点ですね。つまり国内同士のM&A(IN-IN)なのか、海外進出型のM&A(IN-OUT)なのか。あるいは海外の企業が日本に進出する、それとも日本の企業を買収するようなタイプ(OUT-IN)なのか。
臼井さん、それぞれの割合がどれくらいか、イメージとしていかがでしょうか。

臼井: やはりIN-INが件数として多いんじゃないですか。

西川: そうですね。4,304件のうち、約8割近くがIN-INに該当します。そもそもこれ4,304件って言ってますけども、我々の体感的には1万件、あるいはそれを大きく超えてる、そんな肌感覚がありますよね。

臼井: この他にも公表されていない案件は沢山あるので、そう思いますね。

西川: そうした意味では、IN-OUTやOUT-INの案件も少しずつ増えてると言えます。

西川: ここまで件数でみてきましたが、今度は取引金額ベースで振り返りたいと思います。これは売買金額とも言いますが、2022年は総額どれぐらいだと思いますか。

臼井: 10兆円は超えてるとは思うんですけども。

西川: ほぼ正解ですね。レコフM&Aデータベースによると、11.4兆円です。ただこれは、昨年対比で大きく31.6%の減少になるそうです。

例えば昨年大型の案件でOUT-INの事例でいうと、以前このYouTubeでも取り上げましたが、アメリカのファンドKKRによる日立物流の買収や、IN-OUTだとソニーグループによるバンジーの買収などがありました。IN-INの事例だと、昨年は大型の事業承継型案件がありましたね。

臼井: オリックス・DHCの案件ですね。これも以前YouTubeで取り上げました。

西川: それ以外に現場で感じたテーマとして、昨年目立ったものはありますか。

臼井: 事業構造の転換、成熟産業の統合、ソニーもそうですが先行投資型のM&A、見方を変えるとVC型的な投資をしているのが多かったように感じます。

2023年のM&A予測は!?

臼井: 2022年を振り返ってきましたが、西川さん、今年行われるM&Aとして、どう予測されていますか?

西川: 大きな流れとして私自身感じるところでは、レコフデータによると、昨年は事業再編型、つまりポートフォリオの見直し型が、やや一昨年と比べると少し減ってる。ちょっと落ち着いた、というコメントがありましたけど、私の肌感覚としては、直近でも、 事業構造の見直し型、ポートフォリオ見直し型のM&Aの相談が非常に増えているように感じています。 ただこれまでと違うのは、大型だけでなく中小規模のご相談がたくさん来ています。

これは大型M&Aのプレスリリースを見て「うちもしっかり手を入れてこう」と各社が動かれてるということだと思うんですけども、これがおそらく、来年、再来年とたくさん顕在化していくんじゃないかなと思ってます。

臼井: 業界や業種で見るとどうでしょうか。

西川: 脱炭素、再生エネルギー関連がどんどん増えている います。我々がそうしたマッチング、ご提案をいかにできるか。ここが1つポイントになると考えています。臼井さんは、2023年のM&A、どう捉えてらっしゃいますか?

臼井: やはり、変化が相当ドラスティックに起こってきてるかなと思います。さっき「件数が増えてる」という話がありましたけれども、今年は脱コロナで回復していき、今まで残ってた大きな変化が急速に来るかなと、考えています。

例えば 成熟産業での再編統合 ですね。今まで溜まってたものが一気に出てくるかと。これをM&Aと捉えるかという議論もあるかと思いますが、最近よく目に入るニュースとしては 金融機関の再編 ですよね。これは今後、本格的に出てくるかなと思っています。再編を促進するために法律やルールが変わり、国が背中を押してる背景もありますが、各地での金融機関の再編、これはおそらくもう少し進んでいくと思われます。
そのほかの成熟産業におけるM&Aも、まだまだ出てくる。大きな流れで言うと、そうしたところでしょうか。

中国やASEAN諸国の成長が拡大している中、先手を打って国際化を進めていく、あるいは海外の投資を進めていく。国内の産業構造が変わってきて、1年後ぐらいに様々な案件がリリースされるのではないかと考えます。

西川: 我々もそうした流れに応じて、さまざま企業の支援を引き続き行っていければと考えます。

※本記事は動画をもとに編集を行っています。動画本編はこちらからご覧いただけます。


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プロフィール

臼井 智

臼井うすい さとし

日本M&Aセンター 成長戦略開発センター 統括

1991年に山一證券株式会社に入社、M&A部門に配属。同社自主廃業後、大手証券会社M&A部門を経て2009年に日本M&Aセンター入社。27年間にわたり一貫して国内外のM&A仲介アドバイザリー業務の第一線に従事。上場企業同士の経営統合から中小企業の事業承継案件まで、規模の大小を問わず幅広い業界にて200件超のM&A成約実績がある。最近は、S&P Global Market Intelligenceに2024年M&A展望についてコメントを寄稿。

西川 大介

西川にしかわ 大介だいすけ

日本M&Aセンター 成長戦略開発センター長/株式会社ネクストナビ 取締役

大手プラントエンジニアリング会社(海外プラント建設)、Big4系コンサルティングファーム(PMI等)、大手証券会社(M&Aアドバイザリー)を経て、2010年に当社に入社。通算20年近いM&A実務経験に強み。現在、上場会社グループに特化してM&Aサービスを提供する部門を率いる。事業ポートフォリオ再構築プランやM&A戦略の立案サポートから、クライアント毎のオーダーに基づく案件オリジネーション、交渉・実行サポートを行う。弊社において、大型案件、複雑案件、及びノンコア切離し案件をリードする。

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