オーナー企業とは?同族企業との違いやメリット・課題をわかりやすく解説

経営・ビジネス
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日本の中小企業の約7割を、オーナー企業が占めると言われてます。本記事ではオーナー企業の概要、メリットや課題、安定した経営を続けていくためのポイントなどについて解説します。

オーナー企業とは

オーナー企業とは、一人または少数の個人が大部分、あるいは全ての株式の所有者(オーナー)であり経営の実権を握っている企業を指します。

一般的に株式会社では、会社に対して資金を提供した出資者が株主(オーナー)となり、株主総会で株主から選任された人物が経営者となるケースが多く見られます。これが、「所有と経営の分離」です。

大企業や上場企業では、株主が株主総会によって経営陣を選任する「所有と経営が分離」された経営が多く見られます。一方、中小企業の場合は、「株主(オーナー)=経営者」であるオーナー企業のケースが多く見られます。オーナー企業が中小企業に占める割合は約72%、オーナー企業でない企業は約28%とされています。(※2018年版中小企業白書より)

この記事のポイント

  • 日本の中小企業の約7割はオーナー企業であり、オーナーが株式を保有し経営を行う。
  • オーナー企業のメリットは、迅速な意思決定、中長期的なビジョンに基づく経営、一貫した経営方針である。一方、後継者問題や経営者への依存度、資金調達の制約が課題となる。
  • 安定した経営にはリスク管理、後継者育成、ステークホルダーとの関係構築が重要であり、事業承継に向けた中長期的な計画と後継者選定が必要である。

⽬次

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オーナー企業の企業形態


中小企業におけるオーナー企業は、外部株主の有無で次のように企業形態が分かれます。

外部株主が不在のオーナー企業

経営者およびその親族がすべての株主を保有している、外部株主不在のケースです。外部に株式を公開していないため、非上場の中小企業には、このタイプの企業が多く見られます。

重要な経営判断を下す際に、外部株主の意見を伺う必要がないため、機動的かつ迅速な意思決定が可能であるという特徴を持ちます。
その反面、経営に対する適度な緊張感や、経営の透明性を維持するのが難しくなる側面もあります。

外部株主が存在するオーナー企業

次に挙げられるのが、経営者一族のほかに、株式を保有する外部株主が存在するケースは、上場・非上場問わず多くの企業で見受けられます。外部株主が増えれば、当然ながら経営者一族の持株比率が下がり、その分支配権が弱まるという特徴があります。

外部株主が不在の場合と比べて、迅速な経営判断が難しくなる可能性がある反面、外部の客観的な意見を取り入れ、適切な経営判断につなげられる点はメリットとも言えます。

オーナー企業と非オーナー企業の違い


非オーナー企業とは、上述のように所有と経営が分離している企業です。
こうした企業では、経営者と株主がそれぞれの役割を果たし、経営者はいわゆる「サラリーマン社長」と呼ばれることもあります。

経営陣と株主の関係が適度な緊張感を保つため、経営の透明性は向上しますが、重要な経営判断を下す際には株主総会の開催が必要となり、迅速な経営判断の実施には制約が生じる場合もあります。

オーナー企業と同族企業の違い

オーナー企業は前述の通り、一人または少数の個人(オーナー)が主要な株式を所有し、経営の実権を握っている企業を指すのに対し、同族企業は特定の家族のメンバーが経営や所有に関与している企業を指します。

つまり、オーナー企業は「個人」のオーナーシップと経営の関与が中心であり、同族企業は複数の「家族」の関与が中心となる経営形態を指します。

同族企業に明確な法的定義はありませんが、株式の保有・経営ともに経営者一族が行う形態もあれば、株式は保有しながら専門経営者に経営を委任する形態もあります。

なお、法人税法では「会社の株主の3人以下、並びにこれらと特殊な関係にある個人や法人が議決権の50%超を保有している会社」を同族会社と定義しています。

オーナー企業と個人事業主の違い

個人事業主は事業を個人で運営している者を指し、法人格を持たない事業形態です。事業の収益・損失はすべてその個人に帰属し、経営の責任もその個人が全て負います。オーナー企業は経営者が主要な株主でありながら、法人としての構造を持つ点において、大きく異なります。

オーナー企業のメリット


オーナー企業のメリットや、抱える課題について見ていきます。
まず主なメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

第三者からの干渉を受けず、迅速な意思決定ができる

オーナー企業では前述の通り、経営者および親族が株式の過半数を保有し、事実上の最終決定権者は経営者となります。したがって、他の株主から干渉されることなく、迅速に決断を下すことができる点が1つ目のメリットとして挙げられます。

中長期的なビジョンにもとづき、経営が行われる

非オーナー企業(所有と経営が分離している企業)では、経営者は「株主の利益の最大化」が常に求められ、株主の声と経営者としての信念、双方のバランスを取りながら、企業の舵取りを行う必要があります。

一方、オーナーが経営者として直接関わっていると、その企業の成功は自分自身の成功と直結しているため、高い動機付けを持って取り組むことができます。そのためオーナー経営者は、短期的な利益よりも中長期的なビジョンや成長を重視して経営が行われる傾向にあります。

経営方針の一貫性

オーナーが経営に直接関与しているため、非オーナー企業に比べて経営方針や会社の価値観が変わりづらく、浸透しやすい点が3つ目のメリットとして挙げられます。

全社で共通の価値観や目的意識を共有し、同じ方向性や目標に向かって一致団結しやすい傾向にあるとも言えます。こうした特徴が、企業文化を築き上げるための強力な土壌になります。

オーナー企業が抱える課題

続いてオーナー企業が抱える主な課題としては、以下の3つが挙げられます。

後継者問題

オーナー企業の最も大きな課題の一つは、経営者の後継者をどう決めるかという問題です。オーナー経営者が引退や急逝した場合、適切な後継者が不在であれば企業の経営が大きく揺らぐ可能性があります。

経営者への依存度

オーナーと経営者を同一人物が兼ねると、一般企業に比べて経営者の権限が一非常に強くなります。これはメリットで挙げたように、迅速な意思決定を行う際には有効に働く一方、経営者への依存度が高い状況を生み出す可能性も否定できません。

また、経営者個人の状況が企業の業績に影響を及ぼすため、経営者の健康問題、あるいは経営者交代などの変革期に、企業全体に混乱が生じる可能性も考えられます。

資金調達の制約

多くのオーナー企業は、企業の規模や成長の段階に応じて外部からの資金調達が必要となる場面が出てくることがあります。しかし、経営権を保持したいというオーナーの意向から、資本市場や外部投資家からの資金調達が難しくなる可能性も考えられます。

オーナー企業を成功させるポイント


オーナー企業の経営を安定させるためには、いくつかの注意すべき点があります。その中でも特に重要なのが以下の3点です。

リスク管理

オーナー企業は経営リスクが集中する傾向があるため、常にリスクをモニタリングし、適切な対策を講じることが必要です。これには、金融リスク、業界固有のリスク、市場の変動など、多岐にわたるリスクを評価・管理する能力が求められます。

経営の各分野での専門知識や新しい視点を持った外部の専門家(例: 経営コンサルタント、税務会計士、弁護士など)と連携し、定期的なアドバイスやフィードバックを受けることで、企業の経営の安定性を高めることができます。

後継者育成と事業承継計画

オーナー経営者が急に引退や急逝した場合、企業の経営が大きく揺らぐ可能性があります。このリスクを低減するために、次世代の経営者やリーダーの育成、及びスムーズな事業承継のための計画を、早い段階から策定することが重要です。

また、予想外の親族が後継者候補となり、親族間でトラブルとなるケースも少なくありません。このように、オーナー企業が事業承継を考える際には、一般的な企業以上に、入念な準備が求められます。

ステークホルダーとの関係構築

オーナー経営者として、従業員やステークホルダーとのコミュニケーションを重視し、フィードバックや提案を受け入れる姿勢が必要です。
お客様、取引先、地域社会など、関わる全てのステークホルダーとの信頼関係を築くことが、長期的な成功に繋がります。

これら3つのポイントを意識し、継続的に取り組むことで、オーナー企業の経営はより安定したものとなります。

オーナー企業の事業承継対策


事業を承継するためには、譲渡や相続によって株式を取得する必要があります。しかし、急な相続によって株式が複数の相続人に分散してしまうと、その後の会社経営が難しくなることがあります。また、親族や従業員の中から適切な後継者候補が見つからない場合も考えられます。

オーナー企業の経営者が事業承継に向き合うにあたって、特に以下の3つは考慮しておく必要があると言えます。

中長期的な経営計画の策定

会社の現状の把握と将来のビジョンを明確に設定し、何がどのように不足しているのかを十分に理解した上で、今後どのように目標に対してアプローチしていくのかをしっかりと把握しておくことが大切です。
その上で、目標を実現させるために、どのタイミングで誰に事業を承継させるのか、育成を含めた計画を検討する必要があります。

後継者の選定

オーナー企業の場合は、親族・従業員などから次の承継者を探すのが一般的です。選定にあたっては、後継者としての資質だけでなく、他の親族も納得できるような人物かどうかも重要な要素となります。

ただし後継者としての資質があり、周囲も認める人物だったとしても、必ずしも後継者となってもらえるわけではありません。こうしたケースも考慮し、外部からの招聘、M&Aによる事業承継も同時に検討しておくと良いでしょう。

また後継者が選定された後の育成、引継ぎについてもあらかじめ計画立てておく必要があります。

事業承継時期の決定

後継者候補が決まったら、育成と並行して、ゴールとなる事業承継の時期を決めておくと良いでしょう。中小企業庁が作成した「事業承継ガイドライン」によると、事業承継の準備は、後継者の育成期間も含めれば、5年から10年程度の期間が必要だと言われているため、承継タイミングから逆算して、計画立てることをお勧めします。

なお、オーナー企業の事業承継は、相続・親族の個人資産の形成にも深く関わり、トラブルの原因になるケースも少なくありません。他の株主から理解を得られるように努めることを心がけましょう。

終わりに

以上、オーナー企業について概要をご紹介しました。オーナー企業の経営者は、迅速な意思決定や中長期的なビジョンで経営を行いやすい反面、経営者への依存が高まるリスクも考えられます。

このような特性を理解した上で、強みを生かし弱みを補強するためには、外部の意見を積極的に取り入れることをおすすめします。

外部の専門家であれば、経営陣では気が付かなかった問題を客観的な立場から指摘することができます。また、経営の透明性や効率性を向上させるアドバイスも期待できるでしょう。経営者の洞察力と外部の知見を組み合わせ、企業の成長戦略やリスク管理を総合的に考えることで、持続的な成功を実現させましょう。

日本M&Aセンターでは、企業の経営戦略や事業承継のご相談を承っています。ご相談は無料、秘密厳守で対応いたします。詳しくは専任のコンサルタントまでご相談ください。

著者

M&A マガジン編集部

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