建設業界M&A事例から読み解く土木工事業界の最新傾向と課題

岩間 貴弘

日本M&Aセンター東日本ダイレクト1部

業界別M&A
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日本M&Aセンター土木工事チームの岩間です。
土木工事・建設業の経営者向けのセミナーを定期開催しておりテーマは「M&A事例から読み解く土木工事業界の最新傾向と課題」となっております。
本日はその中でも特に関心をいただいた内容をご紹介させていただきます。

建設業界におけるM&Aの動向

建設業界のM&Aのこれまでのトレンドや流れをまとめると大まかに以下の5つの時代区分において、M&Aブームが起きています。

高度成長期

高度成長期は建設業が活況となり、建設業者急増に対して登録制度が開始されました。神武景気、岩戸景気を経てさらに好調。この時はM&Aというよりは、IPOが印象的な時代。

バブル景気時代

国内景気拡大に伴い民間の建設需要が拡大し、建設投資額が1992年には8兆円に到達しました。このとき不動産事業に進出した建設会社が多数存在しています。
事業承継やM&Aに影響した事柄としまして、「バブル期の就職活動」があります。超売り手市場の中、企業側が就活生の内定囲い込みのために接待することも発生しました。
このあたりから「娘や息子が会社を継がない」という後継者不在問題が表面化し中小企業のM&Aが徐々に増えだすこととなります。都心部の大企業に就職するので、地方には戻りませんというようなお声があったといまだにお声をいただきます。

バブル崩壊~不良債権処理時代

このあたりは中長期な景気低迷期にはいり、建設業界も同様に受け、民間の投資額も縮小となっていました。また、バブル期に不動産事業に進出した建設会社の中にも、保有不動産にも含み損が発生したり、倒産や再生に進む企業もでています。
これに伴い、不良債権の整理や再生目的のM&Aが主流となっていた。国が「建設業の再生に向けた基本方針」が策定されたことも印象的です。
2000年代に入り、一気に建設会社の業界再編が進む第一次M&Aブームが起きました。

談合決別・リーマンショック後

談合からの決別、公共工事品質確保の促進に関する法律施行によって、談合が困難になっていきます。そうした中、各社入札にあたり発注者や設計者、元請け業者などの情報入手に注力するいわゆる情報戦の時代に突入していきます。談合の形骸化に伴いまして、各社情報戦
の世界へ進出していく中、こうした情報戦に強くない会社は受注が減り、売上が下がっていくことがありました。この中で、受注を増やした会社等同業同士でのM&Aが活発になってきたのもこのころです。
またこのころ政権交代も発生した時期で、公共工事投資額が大幅に減少したことで競争が激化しより一層M&Aが進みました。このタイミングで起きたことはコストダウンを図るためのM&Aというニーズが非常にありました。

東日本大震災~東京オリンピック

東日本大震災、五輪開催に伴い建設需要過多の時代に突入します。民間を含む受注者は工事を選定、入札の不調や不落が増加することになりました。
インバウンド需要の増加に伴うホテルやオフィスビルの建設、地方都市の再開発、マンションやリノベーション需要も増加してきています。
そういった中、人口減少に対する危惧がさらに表面化し、働き方改革が進み、生産性向上させるための施策を企業が一般的になりました。あえて大手企業の働き方や採用力やシステムを利用するために、あえて傘下に入るという成長のためのM&A手法を用いる企業が増加する「第2次M&Aブーム」が起きています。

土木工事業界を取り巻く経営課題

新設工事から維持修繕工事への転換

高度成長期以降の1960年代~1970年代は急ピッチでインフラを整備してきました。その後2020年代に入り、築50年超となり老朽化してきています。維持修繕には、近接目視による点検や診断の必要性が高まる一方で、人材不足も相まって、将来的にますます維持修繕に取り組むことが難しくなるという経営課題が発生しています。

人材不足・高齢化で持続可能な体制が取れない

建設業界の就業者数の減少
建設業界の総就業者数はピーク時(1997年)に比べて約29%減少しています。
具体的にどのくらいの人数化といいますと約200万人で、おおよそ長野県の人口くらいの人数がピーク時に比べて減っています。
求人倍率の上昇止まらず、採用難
求人倍率は全産業が約1.6倍に対して、建設業界はさらに高い約3.5倍となり、いくら求人を出しても人が集まりづらいという状態に陥っています。
高齢化による技術承継も表面化
業界全体の就業者の3割が55歳以上、29歳以下は1割程度という状態となり、若年層への技術承継の問題も表面化してきています。

【2024年問題】2024年に迫る土木業界の働き方改革

2024年に「時間外労働の上限規制」が設けられます。(それまで5年間は猶予期間)
経済産業省「建設工事における適正な工期設定などのためのガイドライン」には下記の通り設定されています。
こちらへの対応が急務となっており、非常に建設工事業の経営者の方々のなかでも重要課題という認識が強い項目です。

・適切な工期設定
・施行時期の平準化
・必要経費へのしわ寄せ防止の徹底
・生産性向上
・下請け契約における取組み
・適正な工期設定に向け発注者支援の活用
※内容を一部抜粋

建設業許可業者数に対して1社あたりの売上高減少

この数年の建設業許可業者数は増加傾向にあります。
バブル後の1999年度は60万980社ありました建設業許可業者数ですが、
2017年度には46万4889社まで減りましたが、そこから2021年度には47万5293社と約1万社増加しました。
一方で、建設投資額は、バブル期以降下降気味の傾向にあるものの、上記の建設業許可業者数の減少幅よりも大きくなっているため、併せて売上や利益率の低下の傾向となっています。更に、建設資材の高騰による原価増加、利益圧迫もあわせて重要な要素といえるでしょう。

先行き不安の市場環境で後継者不在と事業拡大ニーズがマッチしている

「経営者の高齢化や後継者不在」「相続税負担への対応」など事業承継の課題に悩む経営者の方の相談は非常に増えています。
営業への課題や、原価高、人材採用難による業界の先行き不安なども合わせて考えられている中で、下請け構造脱却による利益率の改善や仕入れルート及び資材共有に伴う商流改善など経営力強化の動きもされています。

建設業に伴う譲受け企業側を見てみると、旺盛な事業強化や拡大ニーズが非常に顕著にでています。現在の事業の閉塞感の打破や、建設業界以外の譲受け企業の多様化も直近の傾向として当社内のヒアリングでもよくきこえてきます。
金融緩和継続に伴う資金調達環境もそういう需要の後押しとなっていることも影響がありそうです。

譲渡企業様と譲受け企業様の双方の課題解決とシナジー効果により成長を目指しております。
無料面談や簡易評価のご相談、どういった買い手の候補先があるのかなど工事業界の成約事例もございますのでぜひお問い合わせください。

著者

岩間 貴弘

岩間いわま  貴弘たかひろ

日本M&Aセンター東日本ダイレクト1部

総合商社では金属事業部門の決算管理・IR業務に従事。日本M&Aセンターに入社後はこれまでの経験、専門性を活かし、多くの中小企業の存続と発展を目指す。

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