リストラクチャリングとは?概要、企業事例を解説

経営・ビジネス
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リストラクチャリングは組織が変化に適応し、持続的な成長を実現するための手段の一つです。
本記事では、リストラクチャリングの概要、具体的な方法、メリットや注意すべき点、企業事例についてご紹介します。

リストラクチャリングとは

リストラクチャリング(restructuring)とは、経営の効率化や生産性向上を目指して、企業の改革や事業構造の再構築に取り組むことを指します。

具体的には、不採算事業の撤退や縮小を行い、主力事業に経営資源を集中させるなど「選択と集中」を行います。

この記事のポイント

  • リストラクチャリングはリストラ(人員整理)やリエンジニアリングとは異なる。
  • 方法としては、財務リストラクチャリング、事業リストラクチャリングなどがあり、主に利益率やキャッシュフローの改善が期待される。
  • 企業事例として、日本航空は経営破綻後にリストラクチャリングを実施し再上場を果たし、ソニーは不採算事業の整理を行い収益性を向上させた。

⽬次

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リストラクチャリングとリストラ

リストラクチャリングの略称「リストラ」は、日本ではバブル崩壊後に「余剰人員の整理・解雇」を指す言葉として認識されるようになりました。

前述の通り、リストラクチャリングは「企業や事業の再構築」を意味し、そのプロセスの一環として「リストラ(人員整理)」が行われる場合もあります。しかし本質的には人事構造を再構築するために行われる人員整理であり、単なる人員削減とは大きく異なります。

リストラクチャリングとリエンジニアリング

リエンジニアリングとは、管理方法や業務プロセスを根本から設計し直して、経営効率を高めることです。具体的には、既存のビジネスルールや管理方法、業務プロセスなどを抜本的に見直し、職務や業務フロー、管理機構、情報システムなどの再設計を行います。

これに対して、業務プロセスでなく業務そのものを見直し、企業や事業を再構築していくのがリストラクチャリングです。
不採算部門があった際、業務プロセスを見直すのがリエンジニアリングで、不採算部門の廃止などを行うのがリストラクチャリングです。

リストラクチャリングの方法


リストラクチャリングを行う方法として、一般的に広く用いられているものが以下の4つです。

財務リストラクチャリング

資金繰りの悪化などにより財務状況が悪化した場合に、企業のキャッシュフローを改善する目的で行うリストラクチャリングです。

新たな資金調達の検討、不良資産の売却などを進めることにより、資産・負債・純資産の分野ごとにキャッシュを生み出し、資金繰りを改善させていきます。
財務リストラクチャリングで行われる方法は、主に以下の通りです。

財務リストラクチャリングの種類 概要
資産(アセット)リストラクチャリング ・長期保有している有価証券を売却する。
・不要な不動産を売却する。
純資産(エクイティ)リストラクチャリング ・ファンドや外部スポンサーなどから新たな出資を募る。
・債務の株式化(DES)により負債を資本金に振り替える。
負債(デット)リストラクチャリング ・融資の返済をリスケジュールして負債利子の条件緩和を行う。
・債務の株式化(DES)やDDSを行う。

事業リストラクチャリング

全社的に不採算事業の整理や見直しを行い、社内の人材や資源を成長が見込める分野へ集中投下するなど、選択と集中により企業構造を変革させる手法です。

複数の事業を多角的に展開している企業では、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)などのフレームワークを活用して事業を可視化し、企業が持つ経営資源の最適化を進めます。

業務リストラクチャリング

業務リストラクチャリングとは、売上の増加やコスト削減により営業利益の増加を図るリストラクチャリングです。前述のいわゆるリストラとして知られる人員削減も含まれます。

売上の増加に向けた施策としては、綿密なマーケティング、企画に基づいた製品・サービス開発・提供が挙げられます。一方コスト削減としては、前述のいわゆる人事リストラ(人員削減)から経費削減が挙げられます。

M&A によるリストラクチャリング

既存事業の拡大や新規事業への参入を果たすことができるM&Aは、事業再構築、リストラクチャリングの手法としても有効です。

例えば不採算事業の売却を行うことで、事業ポートフォリオの最適化を果たし、売却益によってキャッシュフローの改善が期待できます。

リストラクチャリングのメリット

リストラクチャリングの主なメリットは、以下の通りです。

利益率・キャッシュフローの改善 ができる

リストラクチャリングを通じて不採算部門や利益率の低い部門の整理・縮小、人員削減などによる経費削減を行った結果、企業全体の利益率の改善が見込めます。

また、金融機関との交渉次第ではDESによって債権を株式化できるため、負債を圧縮して自己資本比率を高めることが望めます。この結果、財務諸表が改善し、健全な経営ができるようになります。

主力事業をさらに強化できる

不採算事業の売却・切り離しにより、収益が見込める主力事業に資金や人材など経営資源を集中投下できれば、より効率の良い経営が期待できます。
主力事業が成長することで、新規事業への参入も検討することができ、企業の持続的な成長が見込めます。

リストラクチャリングのデメリット ・注意点


リストラクチャリングの主なデメリットは、以下の通りです。

従業員のモチベーション低下につながる場合もある

リストラクチャリングでは前述の通り、従業員を配置転換したり、人員整理を行ったりする場合があります。そのため、従業員にとっては不安定な状況を生み出し、モチベーションに影響を及ぼす懸念があります。

事業の慎重な見極めが求められる

事業が軌道に乗り、黒字化するには一定の期間を要するため、例えば現状の数字だけに目を向け、事業の整理・縮小をしてしまうと、将来性のある事業まで止めてしまうことにつながりかねません。
事業リストラクチャリングをする際は、現状だけでなく将来の成長可能性まで見越して対処事業を慎重に選ぶ必要があるということです。

リストラクチャリングを行った企業事例


最後に、リストラクチャリングを行った企業事例をご紹介します。

日本航空の事例

日本のフラッグ・キャリアとして世界中の主要都市に就航していた日本航空は、保有機の多くが大型機だったことが災いし、座席の供給過剰が常態化。また就航都市に展開していたホテルチェーンの赤字や不採算路線の就航、社内に抱えるさまざまな労使問題などにより、長年にわたり非常に厳しい経営状態を強いられていました。

こうした状況下で2008年にリーマンショックが起こり、世界規模で航空需要が低迷したことが決定打となり、2010年には経営破綻してしまいます。しかし、ここから企業再生支援機構による経営の立て直しが行われます。

会社更生法の適用により金融機関の債権は約9割放棄され、企業再生支援機構からは3,000億円を超える公的資金が投入されることが決定しました。また100%減資も行われ、既存株主の持分はゼロとなりました。こうした施策と並行して行われたのが、リストラクチャリングです。

国内外の不採算路線を運休するとともに、パイロットや客室乗務員の人員整理を行い、人件費の大幅な削減を行いました。その結果驚異的なV字回復を遂げ、上場廃止からわずか2年後の2012年には再上場を果たしました。

ソニーの事例

「ウォークマン」や「プレイステーション」などの発売により世界を代表する企業となったソニーは、2000年代に低迷期を迎えます。主力だったテレビ事業は赤字が続き、これまで好調だったPC事業の販売も伸び悩み、電機メーカーとしての陰りが見え始めます。

こうした不調の果てに起きたのが、「ソニーショック」でした。2003年の決算では大幅赤字を計上し、2004年度の見通しが大幅減益であることから投資家の売り注文が殺到し、株価が大暴落してしまいます。

しかし、ここからソニーは純利益が1兆円を超す大企業へと復活を果たします。低迷からの脱出をかけてリストラクチャリングによる再構築を繰り返し、ゲームやスマートフォン、音楽や映画、金融などのさまざまな分野へ進出。同時に不採算部門の整理を繰り返し、見事に再生を果たしたのでした。

ソニーは2000年代初頭に大規模なリストラクチャリングとして不採算事業の整理や人員削減、ゲームや音楽、金融など様々な分野へ進出するなど再構築を行いまいました。その結果、収益性の向上と事業の再編が図られ純利益1兆円を超す大企業へ復活を果たします。

終わりに

変化し続ける市場環境や顧客ニーズに対応するためには、企業もまた定期的に組織内を見直し、変革していかなければなりません。リストラクチャリングによって定期的に財務面の見直しを行い、不採算部門の整理や経費削減、成長分野への資源の集中投下、新商品の開発などを行えば、厳しい環境下であっても、持続的な成長が見込めるでしょう。

また、リストラクチャリングの選択肢のひとつとしてM&Aが活用できれば、不採算部門の整理や弱みの克服なども短期間で効果が得やすくなります。

ただし、リストラクチャリングにはメリットが多い反面、本記事で紹介したようにデメリットがあるのも事実です。リストラクチャリングを行う際には、客観的な視点と豊富な専門知識を有した専門家に相談しながら進めていくのが良いでしょう。

日本M&AセンターはM&Aの専門家チームがお客様の企業課題の解決へ向けてご支援します。詳しくはコンサルタントまでお尋ねください。

著者

M&A マガジン編集部

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