【2023最新】惣菜業界のM&A生き残り戦略

岡田 享久

日本M&Aセンター業種特化2部/食品業界専門グループ

業界別M&A
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こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界専門グループの岡田享久です。
当コラムは日本М&Aセンターの食品専門チームのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は新型コロナウイルスの影響で中食需要が増加したことにより、市場規模を拡大させた惣菜業界の現状とこれからについてM&Aの事例を踏まえて解説します。

惣菜業界の今

惣菜業界とは、「一般社団法人日本惣菜協会2022年惣菜白書」によると、市販の弁当や惣菜など、家庭外で調理・加工され、家庭や職場・学校・屋外などに持ち帰ってすぐに(調理加熱することなく)食べられる、日持ちのしない調理済食品を扱う業界のことを示しています。(ただし、比較的保存性が高い袋物惣菜は対象とし、調理冷凍食品やレトルト食品などは対象外。)

総菜業界の市場規模は2011年比で2020年には117.5%の伸びを記録しました。
コロナ前でも内食・外食業と比べ高い市場規模の増加割合となっています。
さらに2021年には20年比3.0%増の10兆1149億円となり、10兆円台の大台に突入しました。特に食料品スーパーや百貨店分野での伸びが顕著になっています。
出典:2022年版惣菜白書(日本惣菜協会より)より日本M&Aセンターが作成

惣菜業界は女性の社会進出や共働き・単身世帯の増加などを背景に大きな市場に成長してきた産業です。過去10年の食市場において、外食や内食市場と比べても進捗が大きく、食市場全体の成長をけん引し、今後も更なる拡大が期待されています。
出典:2022年版惣菜白書(日本惣菜協会より)

注目市場動向~機械化と大手の参入強化~

日本惣菜協会は22年3月、ロボット開発企業や食品会社、小売りなど15社が協力し、総菜を盛り付けるロボットの実用化に成功したと発表しました。
食材の前処理や加工の分野では機械化が進んでいるものの、まだ多くの人手が必要な盛り付け作業を機械化し、惣菜業界の課題である人材面の工面を機械で補う形は今後大きなトレンドとなっていくと想定されます。

また食品メーカーの間でも惣菜業界への参入・強化が相次いでいます。
キューピーはフレッシュストック事業で24年度に150億円の売り上げ目標を掲げました。冷蔵庫で長期保存でき、一手間加えたお惣菜を簡単にお家で作れ、家庭の取り込みを強化するものです。SNSでのレシピ提供を通してアレンジの効いた料理を作るイメージができる楽しさも魅力の一つです。
日清製粉グループ本社でも中食・総菜事業の中間持ち株会社、日清製粉デリカフロンティアを設立し、惣菜事業を統括しています。小麦粉の知見、酵母バイオ事業制菌技術等のノウハウを生かし、品質管理・商品開発を進め、米飯類から調理パン、調理麺、一般惣菜、冷凍惣菜まで、すべての惣菜カテゴリーを供給できる体制作りを加速させています。フルラインナップの惣菜をコンビニ・スーパー・百貨店への総合サプライヤーとしてグループ力を生かした展開をしています。

惣菜業界のM&A事例

コロナ渦においても強さを発揮した惣菜産業。2021年~22年において惣菜業界では異業種・周辺業種でのM&Aも見られました。
M&Aの買い手になるのは同業だけでなく、総菜売り場の内製化をしたいスーパーや、自社製品の製造機能の拡充や販路の拡大を見込む外食チェーンなど周辺・異業種からの参入も相次いでいます。さらに中食・総菜向け部門を強化する目的で卸売り業界からM&Aが起こったケースや、ファンドによる出資、食品向けITメーカー内でも総菜部門の強化を図る動きが出てきています。その中で一部事例をご紹介します。

ブロンコビリーが松屋栄食品本舗を譲受(外食チェーン×惣菜製造)

郊外型のステーキレストランを運営するブロンコビリーは、たれやドレッシングなどの調味料・惣菜製造を行うM&A時の売上8億ほどの松屋食品本舗を買収。ブロンコビリーは業容拡大に伴う工場の拡充と、自社新業態のソースや惣菜類の外部販売による自社ブランドの認知度の強化を図ったもの。

福原が道東ライスの譲受(食品スーパー×惣菜製造)

アークスの全額出資子会社の食品スーパー運営の福原が、食品(惣菜)製造業を行うM&A時の売上約10億の道東ライスから事業を譲り受けた。アークスグループの惣菜事業と連携し、惣菜売場での商品提供を行い、炊飯加工、製造ノウハウを生かすもの。

浜田屋がハッピー商会を譲受(弁当屋×精肉店)

食に特化した事業承継プラットフォーム事業を営むまん福HD傘下の「ちがさき濱田屋」運営の浜田屋は、精肉店で食肉加工品の製造・販売を行う「肉のハッピー」のハッピー商会を買収した。肉のハッピーでは精肉のほか惣菜事業を営み、浜田屋の商品ラインナップを拡充すると共に、地域に根差した経営活動を目指すもの。

東芝テックがマギーに対して資本出資(IT×惣菜)

東芝テックは、マギーの持つ生鮮3品、惣菜カテゴリーの商品および加工食品を独自の体系で一元化管理するための統一マスター技術(i-code化技術 ※2015年5月特許取得済)を積極的に活用することにより、POSデータに基づくパネルデータ提供をはじめとしたデータサービス事業の展開において、流通小売店や消費材メーカーに対する価値提供を目指すもの。

株式会社トーカンの三給株式会社(食品卸売り×給食向け卸売り)

セントラルフォレストグループ株式会社は子会社の食品卸売を営む株式会社トーカンを通じて、給食向け食品卸売業を営むM&A時の売上約50億円の三給株式会社のすべての株式を取得した。給食市場への参入、及び中食・惣菜向けの売上拡大を図ることで企業価値の向上に繋げるとのこと。

出典:各社公開資料より

今後の動向

惣菜業界のM&Aのキーワードは“共存”。
惣菜業界の経営者から機械の設備投資の余裕がない中、手作りにこだわる会社だけに人手不足の悩みを聞くことも多々あります。

一方、購入時の選択基準においしさと並んで、約60%が価格と答える総菜業界において、原料費の高騰・人件費の高騰を価格転嫁することは容易ではありません。
価格競争力・供給力のある企業の総菜分野への参入強化と、アフターコロナで人の流れが一定程度外食へと戻ることを想定すると中小企業にとっては厳しい舵取りは続くと思われます。

総菜領域の参入や強化を通じて、自社リソースの強化を図る大手企業とM&Aで提携を結ぶことは経営戦略の一つとして有効な手段です。自社のこだわりが詰まった“おいしい”を消費者に届けるため、雇用を維持するため、企業の判断がより一層鍵になりそうです。

いかがでしたでしょうか?
今後も食品業界専門チームから最新の業界情報をお届けさせて頂きます。

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

著者

岡田 享久

岡田たかだ 享久たかひさ

日本M&Aセンター業種特化2部/食品業界専門グループ

神奈川県出身。早稲田大学法学部卒業後、大手保険会社にて営業企画・債券投資業務に従事し、日本M&Aセンターに入社。食品業界専門チームにて、企業の存続と発展に向けたM&Aの提案に従事している。外食、食品EC、食品製造業など食分野における知見と支援実績を持つ。

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